“厳しいノルマ”未達なら会議でガンガンに… ビッグモーター保険金不正請求 修理費“水増し”の情報交換も
中古車販売大手「ビッグモーター」が保険金を不正に請求していた問題。不正行為の背景には“厳しいノルマ”の存在がありました。工場長の間では修理費用を水増しする情報交換が行われ、達成できなかった場合は、会議などで厳しく追及されていたといいます。
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ビッグモーター元幹部 中野優作さん
「今起きているような利益至上主義になる傾向はあったので、ちゃんと調査して、全部、情報開示して謝ってほしいです」
会社の内情をこう話すのは「ビッグモーター」の元幹部で、現在は中古車販売の会社を経営する男性です。
ビッグモーター元幹部 中野優作さん
「成果主義を地で行く会社。おもいきり成果主義ですよ」
中古車販売大手「ビッグモーター」は全国に店舗を構え、車の販売から整備、修理まで行っています。その裏で行われていたというのが「保険金の不正請求」です。
調査報告書によると、ビッグモーターは客から傷ついた車の修理を依頼されると、その車にわざと傷をつけて修理範囲を広げたり、不要な部品交換をしたりするなどして修理費用を水増しし、損害保険会社に不正に保険金を請求し、過剰な支払いを受け取っていたのです。こうした行為で少なくとも1275件、約4995万円を水増しして請求していたといいます。
外部の調査委員会が作成した40ページ以上の報告書には、“衝撃的な手口”が書かれていました。工具を使って車体をひっかいたり、紙やすりでこすったような傷痕をつけたり、さらにゴルフボールを靴下に入れ振り回して車体をたたき、空から降ったひょうで傷ついたように見せかけることもあったといいます。
報告書ではこれらの行為について、「器物損壊罪にも当たり得る非常に悪質な行為」と記載され、“犯罪に近い”とまで指摘しました。
さらに、不正行為をしていたのは限られた人物だけではなく、調査委員会が修理部門の経験者382人を調べたところ、約3割の104人が“不正な作業に関与した”と回答しました。
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なぜ不正が行われたのか。「不正に関わった」と答えた社員の内、約6割がその理由にあげたのが「上司からの指示」でした。
調査報告書によると「ビッグモーター」では、車1台あたりの修理費用を「@(アット)」と呼んでいたといいます。
そもそも、修理費は「傷の程度」によって決まるものですが、それにもかかわらず1台あたりのノルマが設定され、その金額は約14万円だといいます。
工場長の間では「アット(=修理費用)」を水増しするための方法が情報交換されていたといいます。
不正が続いた理由について、社員が調査に明かしたのは“厳しいノルマの存在”でした。
社員
「会社が売上向上を最優先としていた。『どうやって数字を達成するんだ』と詰められ、未達だとぼろくそに文句を言われていた」
元幹部の男性も「厳しい追及は日常だった」と言います。
ビッグモーター元幹部 中野優作さん
「平均の粗利が低い人に関しては名指しで詰められるので、『これどうするの?』って本部の部長がガンガン、テレビ会議で詰めていく。目の前でガンガン詰められるだけではなく、やっぱり下位にいると更迭になる。明らかな左遷っぽい人事って起きるので…震えますよね」
不正行為は「厳しいノルマと指示」を背景に広がりました。ただ去年1月、社員から社長などに対して内部告発があったといいます。
しかし、実態調査は行われず、ビッグモーターは日本テレビの取材に対し、「誇張されたものにすぎないだろうという先入観を持っていたため、十分な対応ができておりませんでした」と回答しました。
19日、news zeroは都内の自動車修理工場へ向かいました。「ビッグモーター」が掲げた修理費用「1台14万円」というノルマについて聞くと、車の修理ではノルマの設定自体があり得ないと話しました。
自動車修理会社の社員 ※事件とは無関係の工場です
「(1台14万円は)比較的高い方だと思います。基本的に(車の)板金塗装でノルマという概念はなくて、修理費用はある程度決まっている。その中で修理する。もしノルマを作るなら、新たに(自分たちで)傷をつけ修理費用を増やすしかない」
「同業者として悪い印象を受けてしまうので、残念だなと」
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ビッグモーターの兼重宏行社長は、報酬全額を1年間返上すると発表したものの、これまで会見を開いていません。
19日、日本テレビの取材に応じ「創業者として責任を果たすため、自身に対する処分を決定いたしました。組織風土改革をはじめとする再発防止に全力で取り組んでまいります」とコメントしました。
(7月19日放送『news zero』より)