自動車修理はブラックボックスか? 対策は? ビッグモーター問題
中古車販売大手の「ビッグモーター」が客から修理で預かった車の傷を大きくしたり、新たな傷をつけたりしていた問題。なぜ、修理を担う従業員の4分の1が不正に及んだのでしょうか? その原因と、我々ユーザーができる対策について考えました。
――不正が起きた原因は?
この問題を調査した第三者委員会によると、要因の一つは組織風土です。「経営」というのは人事を握っているわけですが、調査委員会の報告書によると、この会社では「降格処分」というのが頻繁に行われ、それが全社中に示されていました。降格によって大きく給与がさがり、また転勤になるケースもありました。
従業員は自分の生活を会社に握られている状態ですから、「上からの指示」に従い、わざと車を傷つけたり、傷を広げたりして、保険金の水増し請求につながる行為に走っていたとみられています。
会社のルールである「就業規則」には、降格の際には社員に弁明の機会を与えた上で、正式な委員会で決定する、となっていましたが、そのような手続きは踏まれず、また説明もほとんどなかったということです。
そのほか、9年間で工場が倍増し、相当の数が未経験者で占められ、工場長という重要なポストまで正確な見積もりを行う知識や経験のない人があてられていたこと、取締役会も開かれておらず、法令を順守する体制にも意識にもなっていなかったことも問題を引き起こした要因だと、調査委員会は分析しています。
――我々への直接の影響は?
まず、お金を払いすぎたのは損害保険会社ではありますが、ユーザーも被害を受けています。
一つ目は車へのダメージです。もともとなかった傷をつけられたり、拡大されたりして、たとえそれを直したにしても、ダメージを与えられたということになります。
二つ目は保険料の引き上げです。わざと傷をつけられ、保険を使って不必要な修理が発生したことで、ユーザーの保険料が値上がりしたケースがあります。また、調査委員会による報告書は、「保険ユーザー全体の不利益につながるという意味で一番罪深い」と結論づけています。
ある損保会社によりますと、「今回のビッグモーターの問題だけで、自動車の保険料が上がることはないと思うが、保険料というのは保険会社が支払った保険金をもとに算出するので、こうしたことが横行すれば、保険料全体が上がってしまうことになる」と説明しています。
損害保険会社は一件一件調査して、水増し請求で等級(保険料)が変わってしまった契約者に対しては、説明して等級を訂正する手続きを進めているということです。
――では我々が防衛できることは?
車を修理に出す際、少なくとも
・修理に出す前に自分でも写真を撮ったり、車の状態を把握しておく。修理工場に持ち込む際は、一緒に指さし確認する。それで不正の余地を減らす。
・車の修理の場合、自分で車を持って行かなくてはいけないなど手間がかかるので、複数社に見積もりを頼むケースは少ないが、ほかの修理工場と組み合わせて、見積もりをしてもらう。
という手もあるのではないか、と車の修理に詳しい保険関係者は提案しています。