「一番マグロ」に4年ぶり1億円超――舞台ウラでは“予想外のトラブル”も すし店の総料理長「悲しいニュース続き…元気づけられたら」
新年恒例のマグロの初競りが5日、東京・豊洲市場で行われました。最高値の青森・大間産の一番マグロは、去年の3倍以上の1億1424万円でした。1億円超えは4年ぶりです。ただその裏では、仲卸業者が参加の機会を逃しかねないトラブルがありました。
■2貫セットで1080円…舌鼓打つ客
5日午前11時すぎ、貫禄ある「一番マグロ」を大勢で囲んでいました。運び出すのも大人10人がかりです。重さは238キロ。ついた値段は、4年ぶりの1億円超えでした。
すし店では本来、青森・大間産の本マグロなら中トロ 1 貫だけで数千円するといいますが、初競りのあった5日は赤身とトロの2貫セット1080円で特別に振る舞われました。来店客は「とろけるような…」と舌鼓を打ちました。
■コロナが5類に移行し、初のお正月
この「一番マグロ」を競り落としたのは、すし店「銀座おのでら」を運営する会社と、仲卸業者「やま幸」の連合チームです。新年早々、想像もしていなかったトラブルを乗り越えて特別なマグロを手にしました。
東京・豊洲市場で5日朝行われた、新年恒例のマグロの初競り。開始前には、元日に発生した石川県能登地方を震源とする地震で亡くなった方々への黙祷が捧げられました。
一方で、新型コロナウイルスが5類に移行して初めてのお正月です。最高値の大間産についた金額は、去年の3倍以上となる1億1424万円でした。2020年以来、4年ぶりに1億円の大台を突破しました。
■釣ったベテラン漁師は「びっくり」
この一番マグロを釣り上げたのは、漁師歴約30年の菊池正義さん(57)。大間町で5日、取材に「いやあ、びっくりだなあ。びっくりしたとしか言いようがねえなあ」と話しました。去年と一昨年の初競りでは2番目止まりでしたが、今年ようやく1番になりました。
菊池さんは、金額も1億円を超えたことに驚きを隠せません。「家族はどんなふうにおっしゃっていますか?」との質問に「まだ寝てら…」と笑いを誘いました。
大間のマグロは、これで13年連続で1番となりました。
■不安…マグロのプロと連絡がつかず
競り落とした連合チームの1人、「鮨 銀座おのでら」統括総料理長の坂上暁史さんは「年明け悲しいニュースが続きましたけれども、我々飲食(業界)でできる限り元気づけられればなと」と思いを語りました。
その“悲しいニュース”で、あわや一番マグロを逃す不安を抱えていました。
この日午前4時ごろ、自転車で初競りに向かう坂上さんの姿がありました。坂上さんは、2日前に送っているのに既読がつかないLINEの画面を見せてくれました。そのやり取りをしていた相手は、マグロを知り尽くしたプロフェッショナルでした。
その確かな目利きに、坂上さんらが全幅の信頼を置く、マグロ専門の仲卸「やま幸」の山口幸隆代表です。
■羽田の事故で…ほとんど寝ずに初競りへ
今年も坂上さんと山口代表は協力して、4年連続となる一番マグロの競り落としを目指していましたが、坂上さんは「羽田空港の事故もありましたから」。ハワイ旅行に行った山口代表が羽田の飛行機事故の影響で帰国が遅れ、5日朝まで連絡が取れない状況でした。
坂上さんは「(山口代表がいないと)競りが成立しない。前代未聞だよね」と苦笑いを浮かべていました。
山口代表は間に合ったのでしょうか。番組スタッフが携帯に連絡すると、山口代表は「一応買えましたけど。一番マグロですね」と言いました。山口代表は予定より少し遅れ、4日夕方に帰国。ほとんど寝ずに初競りに参加し、しっかりと競り落としていました。
■売り上げの一部を被災者に寄付へ
舞台裏では前代未聞の事態が起きていた、今年の初競り。店頭に立った坂上さんは「無事(一番マグロを)取れてほっとしています。縁起物を召し上がっていただいて、1年間無事に過ごしていただければありがたいです」と話しました。
おのでらグループは、初競りマグロの売り上げの一部を、能登半島地震の被災者に寄付する予定だということです。
(1月5日『news every.』より)