ENEOS杉森元会長の辞任 「一身上の都合」実は“性加害” 新入社員には「高い倫理観」求めていたが…
先月12日に“一身上の都合”で辞任していたENEOSホールディングスの杉森務元会長。辞任の理由は「女性に対する性加害」だったことが明らかになりました。杉森氏は、当時社長だった2018年度入社式では、新入社員に「高い倫理観を持つこと」などのメッセージを送っていました。
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今年1月、ENEOSホールディングスの杉森務元会長は、「2022年 ことしの景気は」とのボードに「冷静に前進」と書いていました。
――「冷静に」というのは、どういう思いが?
ENEOSホールディングス 杉森務元会長(66)
「やっぱりウィズコロナにおいて大事なことは、冷静に経済を回していくということではないかと」
今年の景気を聞かれ、“冷静に”を強調していました。
ENEOSホールディングス 杉森務元会長(66)
「冷静に感染症対策をとる」
この意気込みから一転、先月12日に突然、辞任しました。会社側は詳しい理由は伏せ、「一身上の都合」とだけ説明していましたが、21日、その“一身上の都合”が明らかになりました。
ENEOS関係者によると、66歳の杉森氏の辞任理由は、飲食店の女性従業員に対する“性加害”で、ドレスの中に手を入れて胸を触ったり、キスを強要したりしたということです。
性加害を行った同じ月の7月27日、杉森氏の姿は首相官邸にありました。脱炭素化の推進に向け、政府が立ち上げた新たな会議「GX実行会議」に出席しました。
杉森氏は1979年に一橋大学を卒業し、当時の日本石油に入社しました。2018年以降、経団連の副会長や石油連盟の会長、ENEOSの会長など要職を歴任してきました。
ENEOSの有価証券報告書によると、杉森氏の昨年度の役員報酬は1億7900万円でした。そのような“経済界の重鎮”が起こした不祥事。
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2020年、当時の小泉環境相と会合した際には――
小泉環境相(当時)
「副会長から」
経団連前副会長 杉森務氏
「いや、大臣」
小泉環境相(当時)
「いやもう、きょうは、ここがホストですから」
経団連前副会長 杉森務氏
「ああ、そうですか。小泉大臣はじめ環境省の皆様と経団連ともに手を携えて、しっかり地球温暖化問題について取り組んで参る所存です」
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また、杉森氏は、当時社長だった2018年度入社式で新入社員に「誠実・公正であり続けるための高い倫理観を持つこと」、「お客さま本位で物事を考えること」とのメッセージを送っていました。
さらに、2018年の社長就任あいさつでは「私が一番重要であると考える『変革』は、一人ひとりの『意識改革』である。私が先頭に立って変革推進するので、変革する意識を持ってついてきてほしい」としていました。
杉森氏は新入社員には“高い倫理観”を求めながら、自らは飲食店の女性従業員に対する性加害を理由に辞任しました。ENEOS関係者によると、ドレスの中に手を入れ胸を触ったり、キスを強要したりしたことについては、本人も認めているといいます。
“一身上の都合”との公表から1か月以上たって、“性加害による辞任”が発覚しました。
日本テレビ 経済部・安藤佐和子デスク
「杉森氏は、自身が幹部を務める業界団体に対して、辞任の理由を『健康上の理由もあって』と伝えていました。しかし、ENEOSの会長を辞めただけでなく『顧問』としても残らなかったことから、周囲からは不可解に思われていました。21日、ここにきて辞任の理由が“性加害”だったとわかり、今、企業は『新しい資本主義』で高い倫理観が求められている中で、経済界からは『けしからん』と非難する声があがっています」
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東京・新橋で21日夜、街の人の声を聞きました。
会社員(26)
「結局、そういうこと(性加害)を発表するんだったら、最初からしっかり伝えるべきことは伝える」
会社員(20代)
「説明したとしても、それで済む話じゃない」
21日夜、「news zero」は杉森氏の自宅を訪ねましたが、呼び鈴を鳴らしても反応はなく、姿を確認することはできませんでした。
辞任した理由の公表が遅れたことについて、会社側は“被害者のプライバシー保護を最優先としていたため”としたうえで、「『人権尊重』、『コンプライアンス徹底』を経営の最優先事項と位置付けているにもかかわらず、会長自らがこれに背く行為を行ったことは極めて遺憾です」としています。
会社側は、杉森氏はすでに辞任しているため、今後、会見を開く予定はないとしています。