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「頑張っても報われない」“隠れた貧困”にあえぐ子育て世帯 今必要な支援とは

2024年12月29日 10:00
「頑張っても報われない」“隠れた貧困”にあえぐ子育て世帯 今必要な支援とは

物価高が続く中、ある程度の収入があり、支援の対象ではないものの、日々の生活で苦しい思いをしている“隠れた貧困”に陥る子育て家庭が増えているといいます。

必要な支援を受けにくい、その実態を取材しました。
(社会部・厚生労働省担当 馬野恵里花)

■「子どもの食べ物が買えない」物価高が追い打ち

イベントが続く年末年始。クリスマスや新年の行事のほか、冬休みで給食がなくなるなど、子育て世帯にとっては特に出費のかさむ季節です。また、年が明けると、子どもの進学・進級のための準備や受験などでも、お金が必要になってきます。

こうした状況に追い打ちをかけるのが、長引く物価高です。子どもの貧困対策などの支援を行うNPO法人キッズドアが2024年10月~11月に行ったアンケートでは、苦しい子育て家庭のリアルな状況が浮き彫りになりました。

「物価高騰で、とにかく毎日が苦しい。食費もクレジットカードで分割にしないと支払えない」
「物価高で食料品が購入できず、子どもの健康に支障が出てきている」
「年末年始の世の中が、にぎやかになる時期は、つらい。大体のことは、お金があれば解決できることだが、現状望めない」
「制服代が高すぎて払えない」

こうした切実な声が上がる中、所得制限などで支援の対象から外れているものの、十分な生活を送るのが難しい“隠れた貧困”に陥っている家庭が増えているといいます。

■「頑張っても報われない」“隠れた貧困”家庭の声

キッズドアのアンケートでは“隠れた貧困”に苦しむ家庭の声も多く寄せられました。

「いつも所得がありすぎだとして、支援がない。母子手当(注:児童扶養手当)、(別れた夫からの)養育費も受け取れない中、それなりに生活できるように頑張っているのに、その分、損していることがある」
「収入を増やそうと頑張ると、児童扶養手当はなくなり、いろいろな支援も審査で落ちる。収入を上げると見捨てられるということなので、頑張るのが怖い」
「総所得を上げても、増税と社会保険料の増額で手取り額が増えない。児童扶養手当も減額され、一生懸命働いても報われない。ギリギリ中間層のひとり親も、生活困窮していることをわかってほしい」

頑張って働き、食事など最低限の生活はできるものの、ほかの家庭の“当たり前”を実現するのが難しい“隠れた貧困”家庭。キッズドアの渡辺由美子理事長は「頑張っているひとり親が、埋もれて苦しい思いをしている。必要な人が支援を受けられるようにしてほしい」と話しています。

■ほかの家庭と同じようにしてあげたい

東京都内で暮らすシングルマザーの佐藤さん(仮名)は高校生の長男と小学生の長女と3人で暮らしています。ひとり親になって10年。以前は派遣社員として働いていましたが、子育てにお金がかかることから、一念発起し、5年前に正社員になりました。しかし…。

「正社員になったことで、収入が少し増えたので、いろいろな行政の支援が受けられなくなりました。頑張って少しでも自分で稼ごうと正社員になったのに、派遣社員のときと生活のしんどさが変わらない。むしろ時間的な制約や責任が増えた分、大変なことが増えました」

いま一番心配なのは、子どもの進学のこと。行政の支援が受けにくい中、周りの子と同じように受験の対策をすることも難しいといいます。

「周りの子は全教科塾に通っている中、うちだけ1教科しか通えないことも。特に都心部では進学のために塾に行くのは当たり前になっている中、同じような環境を用意してあげにくいことが申し訳ない。受けられる支援も限られていて、受験をさせるのも大変です」

このほかにも、子どもが部活で使う道具を新しくすることをためらってしまったり、クリスマスなどの行事も家で完結するようにしたり、子どもに我慢をさせることが多く、心苦しいといいます。

「子どもたちも大きくなり、いろいろ家庭の事情がわかってきて、気を使ってか、わがままを言わなくなりました。悲しい思いをさせていると思う。せめて周りの子と同じようにしてあげたいと思って日々、頑張っています」「最近は、ひとり親家庭も増えていて、決して少数の問題ではないと思う。また、地方と都市部では困り方に違いがあると思う。それぞれの層にあった支援があるといいなと思います」

■時代にあわせた支援を

現在、児童扶養手当の支給には所得制限があります。一部支給の場合は上限385万円、全部支給の場合は上限190万円で、ひとり親家庭であることなど条件があります。2024年の11月に基準の引き上げがあったものの、物価の伸びを考えると十分な引き上げではないと支援団体は訴えます。

キッズドアによりますと、これからの季節は子どもの進学や受験のために必要なお金が増え、普段の生活はなんとかできている家庭でも、困窮するケースが増えるということです。中には受験や入学の費用、制服代のためにカードキャッシングに手を出してしまい、より苦しい思いをする人もいるということです。キッズドアは、こうした家庭を中心に食料などの支援を行っていますが、希望者は年々、増えているということです。

少子化が進む中、誰もが子どもを産み育てることに不安を抱かなくてもすむような環境作りが急がれます。特に“隠れた貧困”に悩む家庭は、なかなか気づかれにくく、孤立してしまうケースもあります。時代や社会の動きにあわせ、困っている家庭を取り残さない支援が求められています。

最終更新日:2024年12月29日 10:00