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改正子ども・子育て支援法が成立 子育て世帯にとって何が変わるのか?

2024年6月18日 8:09
改正子ども・子育て支援法が成立 子育て世帯にとって何が変わるのか?
写真:イメージマート

少子化に歯止めがかからない中、来年度から、総額3.6兆円に及ぶ「こども・子育て支援加速化プラン」を政府が実行するための「改正子ども・子育て支援法」が5日に成立した。その中には、公的医療保険料に上乗せして集められる「子ども・子育て支援金制度」の創設も盛り込まれた。法改正で何が変わるのか?

■子ども・子育て支援金制度とは

支援金制度は社会全体でこどもや子育て世帯を支えるという理念のもと、個人と企業などから公的医療保険料に上乗せして、約1兆円を集める制度。

2026年度から段階的に徴収し、満額となる2028年度の負担額は、入っている保険ごとに違い、自営業者は1世帯あたりの平均で月に600円程度、中小企業勤務の会社員ではその本人1人あたり月平均700円程度が見込まれている。(会社員は給与額に応じ金額が異なる)

支援金の使い道は法律で定められていて、主なものは、児童手当の所得制限撤廃、高校生年代までの延長(今年12月支給の10月分から)や親の就業にかかわらず保育園に一定時間通える制度などだ。

政府は支援金制度の創設で、こども1人が0歳から18歳までに受ける給付額は平均約146万円増えるとし、今の平均的な児童手当額約206万円とあわせると、合計352万円になると説明している。また、支援金以外の約2.6兆円は歳出改革などで確保するとしている。

■何が変わるのか?

子育て世帯からみるとどんなサービスが受けられるのかみていく。

まず妊娠期からスタートするのが「伴走型相談支援」。孤立や不安をやわらげるため、妊婦やパートナーが市区町村の担当者に、身の回りの様々な相談をできるほか、経済的な支援もある。

妊娠届け出時、出産間近、出生届け出時の3回面談を行うが、このうち1回目、3回目の面談を受けると、それぞれ5万円相当の出産応援ギフト(クーポン券など)を受け取ることができる。

その後も継続的な相談が可能で、地域の相談機関が子育てイベントを知らせるなど支援が受けられるというが、真の「伴走型」としてきめ細かく必要なサポートができるのかが問われる。

出産後は、退院直後の母子に心身のケアや育児のサポートなどをする「産後ケア」や50万円の「出産育児一時金」が受け取れる。さらに児童手当、住宅支援、男女ともに育児休業を一定期間以上取得した場合に手取り10割となる育休給付やこども誰でも通園制度など、ライフステージに応じた仕組みが用意されているという。

政府は「すべての妊婦や子育て家庭が安心して出産、子育てができる環境を整えたい」としている。

■「こども誰でも通園制度」の課題を指摘する声も…

この法律で創設される「こども誰でも通園制度」は0歳6か月から3歳未満で保育所や認定こども園、幼稚園などに通っていないこどもや保護者の孤立を和らげるほか、同年代や保護者以外の大人とふれ合う機会を提供するなど、育ちを応援することが狙いだ。親の就労有無にかかわらず時間単位で利用可能になる。

2023年度にこども誰でも通園制度のモデル事業を行った認定NPO法人フローレンスの赤坂緑代表理事は、制度実現について「長い間変わらなかった保育制度が変わり、全てのこどもに開かれたことは大きな一歩」と評価した一方で、「モデル事業を行って様々な課題も分かった」と話した。

まずは利用できる時間の上限について。今回は全国一律の給付を想定しているため「月10時間まで」とかなり短時間だが、赤坂氏は「週2回など定期的に同じ園に通える時間を確保することが、より良い制度につながる」と話す。定期的に同じ場所に通えることでこどもや保護者、そして実際に現場でこどもと向き合う保育士にも良いことがあるという。

こどもにとっては場に慣れて新しい友達ができたり、「周りの子が食べているから自分も食べてみよう、やってみよう」という気持ちから成長が促されたり、新しい興味を持つことにつながる。

保護者からは8時間ずつ週2日を約半年間利用したことで「保育士が一緒に育ててくれる、一緒に成長を喜んでくれるのがうれしい」といった声や「保育士と定期的に話すことで安心感があり、孤独感が和らいだ」「心に余裕ができてこどもへの愛情が増した」といった声が聞かれたという。

現場でこどもと向き合う保育士からは「こどもの性格や特性に合わせて、より良い発達に向けた対応ができる」「孤独な子育てをしていた人がこれほど喜んでくれるならやって良かった」といった声があがったという。

一方で週2日、定期的に利用できるようにするには大きな課題があると赤坂氏は言う。そもそも業界全体が人材不足で、この制度実現にはさらなる保育士の確保が必要であること、こどもを受け入れるための事務手続きで現場の作業が増えることが予想され、パートを雇う必要がある可能性などだ。

■さらなる子育て政策の推進へ

改正子ども・子育て支援法が成立した直後、子ども・子育てに関する活動を行う民間団体らが会見を開いた。政策の内容や多額の財源を確保したことは評価する一方、「3年分の加速化プランの先のビジョンを描く、抜本改革プランの検討にすぐ着手すべき」とし、具体的な施策を提案した。例えば、

・妊娠がわかった時から多額の出費が必要な現状を変えるため、妊娠の確定診断や妊婦健診、そして出産までの無償化を実現・男女がともに子育てを担えるよう、労働時間を短縮するため、残業に対する割増賃金の割合を引き上げるなどのペナルティーを設ける施策の実施・財源確保、そして給付や控除を含め、世代をまたいだ公正なあり方を実現するため、税制も含めて検討する「こども版・社会保障と税の一体改革」の検討開始 など。

2023年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むこどもの数)は1.20で過去最低を更新し、減少は8年連続となった。東京都は0.99で、厚生労働省の統計上初めて1を下回った。岸田首相は「2030年までが少子化傾向を反転するラストチャンス」としているが、加速化プランの先を見据えたさらなる子育て政策が必要とされている。

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