小中学生を中心に広がる“オーバードーズ” 経験のある少女「かまってもらいたかった」
市販薬などを過剰に摂取することを指す「オーバードーズ」。名古屋市でも小中学生が搬送される事例が確認されている。中京テレビ「キャッチ!」では、過去に「オーバードーズ」の経験のある高校生の少女に話を聞いた。
「頭が痛くなって、そのまま寝た。朝になってもなんもなかった」、「ふわふわもしないし、朝に吐いた」
そう話すのは、過去に「オーバードーズ」をしたと話す高校生の少女。「オーバードーズ」とは、市販薬などを過剰に摂取すること。近年、一部の若者の間で広がり、社会問題になっている。
名古屋市消防局によると、今年4月から11月までの8か月間で、市内の小中学生17人が「オーバードーズ」とみられる状況で病院に搬送。17人のなかには、小学生2人も含まれ、ほとんどが少女だったという。
全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査によると、薬物依存症の治療を受けた10代の若者が使用していた薬物として、ここ数年で「市販薬」が一気に拡大。2016年時点で全体の25.0%だった「市販薬」は、2022年には65.2%に増加している。
過去にオーバードーズを経験した少女が使用した薬は“風邪薬”。一般の薬局で購入していたという。
軽はずみな行為でも、リスクが大きいオーバードーズ。市販薬を大量に飲むと、幻覚や意識障害に加え臓器障害も起こる可能性があり、最悪の場合、死に至る危険もある。
なぜ、薬の大量摂取を行う若者が増えているのか。「愛知県精神医療センター」の吉岡眞吾医師は、若者たちを取り巻く環境に着目。「親自身が精神的な問題であったり、経済的な問題、さまざまな問題を抱えている。子供が育つ環境として非常に過酷な環境になっているなかで、学校にも行けなかったり、同じ境遇の子どもたちの中で、ある種のグループができて、オーバードーズが起きる。“グループでやっている”っていうことが、お互いの垣根を低くしてしまい、大きな問題だという認識ができなくなっているのでは」と述べた。
取材した少女にオーバードーズのキッカケを尋ねてみた。すると、「心配してほしくてやってたかも。かまってもらいたかった、多分」という答えが返ってきた。
消防庁と厚生労働省によると、オーバードーズが原因と疑われる救急搬送は年々増加。最も多いのが20代で、10代も急増しており、全体の割合では、女性がおよそ75%を占めているという。
どうやったらオーバードーズを防ぐことが出来るのか。名古屋市中村区にある「フタムラ薬局」では、“ある対応”を心がけていた。
「フタムラ薬局」では、販売時に購入者に利用する人物と症状を確認。乱用する可能性を感じた場合、販売する個数を“1つまで”と決めている。しかし、薬は他の薬局やドラッグストアなどでも購入できるため、1つの薬局が取り組める対策には限界がある。
「フタムラ薬局」の薬剤師・岩田大輝さんは、「お酒やタバコが20歳以上しか買えないというのと同じように、未成年者の購入は禁止するような法令があると、現状よりも乱用者は減るんではないかなと感じております」と国全体での取り組みを提案した。
今月18日、オーバードーズで使用される可能性が高い、せき止めや風邪薬などの市販薬の販売を規制しようと、厚生労働省にて検討会が行われた。
検討会では、20歳未満への販売について、大容量の製品は販売禁止を検討。また、小容量の製品でも1人1箱までの販売。また、店側に名前や年齢などの確認・記録を義務づける、何度も購入していないか購入履歴を確認するなど様々な規制が挙げられた。
厚労省は検討会で提案された案を審議し、2025年の法改正を目指している。
小中学生たちに広がる「オーバードーズ」。法改正ももちろん重要だが、子供たちの悩みや困りごとに耳をかたむけ、心をサポートする“大人たちの力”が必要だ。