「食べる本屋さん」専属"コンシェルジュ"が案内 コミュニティサロンを目指した書店オープン 本には作家からの手書きメッセージも 三重・津市『津松菱』
2015年、津松菱では6階にあった書店が閉店。全国的にも書店の閉店は相次いでいますが、地方の文化を支えるのは百貨店の役割のひとつと考える津松菱では、なんとか書店を復活させたいと長らく構想をめぐらせてきました。
そうした中で、今年9月に20年ぶりに古本市を開催。県内外の古書店などからさまざまなジャンルの書籍約3万冊を集めて実施したといいます。訪れた多くの利用客が廃版になった本などを探して店内が賑わいを見せたことに担当者はニーズを見いだしました。そこで、以前から取引のあった専門紙「デパート新聞」(横浜市)と共同企画を発案し、開店に至ったのです。
本を通じた利用客どうしのコミュニケーションを目指した書店は、新たな「発見」が生まれる場に。本をきっかけにして会話することで、インターネット上にはない「発見」を得てほしいと関係者は考えています。
書店には、全国各地の出版社約50社が厳選した本が並びます。地域色あふれるさまざまなジャンルの書籍が置いてありますが、雑誌類はありません。総数は500冊ほどに絞られ、それぞれの本には出版社や作家の"手書きメッセージ"が添えられています。
店内にはコンシェルジュの役割を担う専属スタッフがおり、本の特徴や面白い部分について来客に案内。注文があれば、コーヒーなどの飲み物の提供も行います。
店は館内4階の紳士服売り場を改装し、約20平方メートルのスペースを用意。店内の本棚には厳選された本がずらりとが並び、中央には10人ほどが座れるテーブルが置かれています。
訪れた利用客からは「人から教えてもらうことで、自分だけでは探せないものが発見できそう」、「来店する人と話したりして、これまでの書店とは違った楽しみがある」といった声が寄せられているといいます。
担当者は「書店に本を求める多くの人を百貨店に呼び込み、地域の文化を盛り上げていきたい」と話していました。