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【23人に1人】数字や音に色が見える“共感覚”をアートで発信!「どんな人でも生きやすい社会をつくりたい」

2024年2月22日 15:00
【23人に1人】数字や音に色が見える“共感覚”をアートで発信!「どんな人でも生きやすい社会をつくりたい」

音楽が流れるステージ上、キャンバスに勢いよく色を塗る女性。彼女の名前は、三重県在住でアート活動を行う山口葵さん。数字や音、感情などが「色」として見える「共感覚」の持ち主だ。音楽終了と同時にアートとして現れた、山口さんが“見ている世界”。共感覚の表現者として、彼女が目指す先とは。

文字や数字、感情が色に見える「共感覚」

「共感覚」とは、通常の感覚に加え、別の感覚が無意識に引き起こされる現象のこと。共感覚を研究する「京都大学大学院」の文学研究科・濱田大佐特定研究員によると、最も多いのは文字や数字に色が見えるタイプだという。また、音に色が見える、人の声に味を感じるなど、引き起こされる現象は人によって様々だ。決して病気ではないものの、文字に見える色に混乱するなど日常生活に支障が出るケースもある。濱田特定研究員曰く、何らかの共感覚を持つ人は「23人に1人」存在するという。“自分の周りにも存在するのでは?”と思えるほどの割合だが、「共感覚」に対する理解は未だに進んでいないのが現状だ。

数字の羅列は“人混み”に見える

幼い頃から数字や文字、音楽、自分の感情や人の印象に“色”が見えていた山口さん。「色がいろいろ入ってくるので、文章を読むのが大変でした」と当時を振り返る。また山口さんの場合は、数字にも“性別”や“人格”を感じるという。「数字の羅列は人に見えるので、理解できなかったり人混みを見ているようで気持ち悪くなったりしました」と、学校の授業や日常生活で経験してきた苦労を明かした。あらゆる刺激が色に見えるため、“色に襲われる感覚”に陥り、疲れて丸一日寝込んでしまうこともあるという。そんな共感覚ならではの体験を周囲に話すと、「不思議ちゃん」「能力者だと威張っている」などと思われてしまい、山口さんが共感覚の話をすることは次第になくなっていった。

友人の言葉を機に“共感覚アーティスト”へ

そんな山口さんの転機は3年ほど前。友人から「何色が見えているのか描いてみて」と言われたことを機に、自らの感覚を生かして絵を描き始めたのだ。
“共感覚アーティスト”として活動を始めた山口さん。アートをきっかけに共感覚への興味を持ってもらうことが目的だった。活動の狙いについて、山口さんは「特別なことではなく“個性”として、共感覚を持つ人がその感覚を伸ばしていける社会になっていったらいいな」と語る。
目指すのは、共感覚が“左利き”と同じくらい認知された社会。その思いから、「あなたに見える色描きます」というテーマで注文を受けて絵を制作。ほかにも、音楽を聴きながら絵を描くことで共感覚を体感する親子向けイベントを開催するなど、共感覚を知ってもらうべく様々な活動を精力的に行っていった。

活動の結果、山口さんに初めて“共感覚アーティスト”として仕事の依頼がきた。依頼内容は、企業と共同でイルミネーションのデザインを制作し、コンペに応募するというもの。「喜び」「期待」などのテーマに沿って、山口さんはその感情を表す絵を描いた。

しかし、「共感覚がわかりにくい」という理由からコンペは落選。落選の理由を知った山口さんは、自身が目標とする「誰もが共感覚を理解している社会」への実現にはまだまだ壁が立ち塞がっていることを痛感したという。

圧巻のパフォーマンスで観客を魅了

去年12月、山口さんは大阪のイベントに招かれた。900人ほどの客が入る会場に、ステージ上には真っ白な一枚のキャンバス。ステージに立つ山口さんがスポットライトに照らされた瞬間、中華風の音楽が流れた。
山口さんが最初に塗りつけたのは、ピンクと青の絵の具。両手に刷毛を持ち、勢いよく塗りつけていく。左下に塗りつけた黄色は「緊張の色」だという。仕上げに、白い絵の具をつけたブラシでしぶきを飛ばす。5分間のステージで音楽と緊張の色を描ききった山口さん。鮮やかな色彩とダイナミックなタッチで描かれた絵を前に、観客に「共感覚とは何か」を伝えた。

ステージを見た観客たちからは、「圧巻だった」「大変そうでもあるけれど、素敵な世界なのかなと思った」など山口さんのパフォーマンスを称賛。観客の反応に確かな手応えを感じた山口さんは、「ステージで共感覚の話をしているとき、聴いてもらえている感じはあったので興味を持ってくれていたのかな。今後もっとこうした活動をやりたい」と、晴れやかな笑顔で語った。
数字や音、感情などが「色」として見える「共感覚」。共感覚の人が見えている世界を、“見えていない人々”も体感できる機会の積み重ねが、どんな特性の人も生きやすい社会を築いていくのだろう。

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