【警戒】市販薬の成分によっては『インフルエンザ脳症』になる恐れも…体調不良時の薬の服用に注意 A型・B型・コロナの三つ巴にノロウイルスも大流行「“ダブル感染”“ドミノ感染”という形で我々を苦しめる」感染症から身を守るには?
全国で猛威を振るうインフルエンザ。新型コロナとの“ダブル感染”や“ドミノ感染”にも警戒が必要です。さらに、厄介なノロウイルスも流行期に突入。感染症から身を守る方法とは?『いとう王子神谷内科外科クリニック』院長・伊藤博道氏の解説です。
■インフルエンザ患者数が急増中「我々の体が免疫力をかなり弱めている」
2025年1月14日の厚労省の発表によると、2024年12月30日~2025年1月5日のインフルエンザ患者数は、14万1998人でした。また、一医療機関当たりの感染者数が最も多いのが岐阜県(70.67人)、次に茨城県(60.18人)、そして愛知県(55.97人)となっています。
全国のインフルエンザ患者数は、グラフを見ると下がっているように見えますが、年末年始に医療機関の多くが休業し、受診者が減ったことなどが影響したと考えられます。
『いとう王子神谷内科外科クリニック』では、1月11日~13日の3連休に問い合わせが殺到したため、12日(日)の午後に臨時診療を行いました。3割以上がインフルエンザの患者で、院長・伊藤博道氏は「2016年に開業して以来、最も多い。2024年の約1.5倍、平年の2倍」だと話しています。
Q.コロナ禍ではインフルエンザが少なかったですが、その反動はあるのでしょうか?
(『いとう王子神谷内科外科クリニック』院長・伊藤博道氏)
「大いにあると思います。コロナ禍では驚くぐらいインフルエンザの患者がいなかったので、我々の体がインフルエンザに対する免疫力をかなり弱めてしまっているのだと思います」
■「A型の後にB型にかかることも珍しくない」“ダブル感染”“ドミノ感染”に要警戒
インフルエンザA型・B型は、症状に違いがあります。A型(pdm09香港型)は、『急激な発熱』『激しい症状』が特徴的で、毎年流行期があります。一方、B型(ビクトリア系統 山形系統)は、『吐き気や嘔吐』『下痢や腹痛』などの消化器症状が特徴で、脱水症状が起きやすく長引いたり重くなることもあり、2~3年に一度流行します。潜伏期間は、A型・B型ともに通常1~3日だということです。
Q.A型にかかったら、B型にはかからないんですか?
(伊藤氏)
「A型とB型は表面構造が違うので、A型の後にB型にかかることもそんなに珍しくなく、結構あります」
Q.インフルエンザとコロナに、同時にかかることもあるんですか?
(伊藤氏)
「今年は年始早々、インフルエンザとコロナの同時感染、A型とコロナ・B型とコロナといった患者も珍しくなくいます。A型・B型・コロナが三つ巴で、“ダブル感染”あるいは入れ替わり立ち代わり“ドミノ感染”という形で、まだまだ我々を苦しめるのではないかと思います」
また、特に子どもに注意が必要なのが、急性脳症『インフルエンザ脳症』です。5歳以下の子どもに多く見られ、主な症状は『けいれん』『意識障害』『異常行動(幻覚含む)』など。重篤の場合は発症1日以内で呼吸障害などがみられ、死亡率は約10%・後遺症は約25%ということです。
伊藤氏によると、早期発見のポイントは『視線が合わない』『異常に怖がる』『モノの区別があやふや』『幻覚が見えている』などがあります。ワクチンの接種がインフルエンザ脳症の予防になるということです。
Q.『インフルエンザ脳症』になる確率は?
(伊藤氏)
「確率は低いので、極端に心配しなくてもいいです。一方で、もしなった場合には、早い対応が非常に重要です」
■抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に投与で効果あり 「それ以上増えないようにブロックする」
抗インフルエンザ薬は、内服の『タミフル』『ゾフルーザ』、吸入の『イナビル』『リレンザ』、点滴の『ラピアクタ』などがあります。
Q.早めに薬を飲んだほうが早く治るのか、熱が上がり切ったほうが良いのか、どちらでしょうか?
(伊藤氏)
「これらはウイルスが増殖するのを抑える薬なので、診断さえ出ていれば、早めに薬を飲んだほうが効果はしっかり出ます。増殖したものを攻撃するのではなく、それ以上増えないようにブロックするような効き方をしますから、ウイルスが増えた後に投与しても、あまり効果が出ません」
Q.ウイルスが増殖してしまったら、自分の自然治癒力で治すしかないということですか?
(伊藤氏)
「そういうことになります。『発症から48時間以内に投与すると効果がある』というデータが承認されているので、それが一つの目安です」
Q.体調がおかしいときに病院に行くことは、大切なんですね?
(伊藤氏)
「そういうことです。我々からすると、適切な時期に正しい診断をして、そこからどういう薬を選ぶかを考えますから、診断がつかない限り、良い治療選択も何もないかなと思います」
ただ、治療薬の供給状況が厳しく、『タミフル』のジェネリック医薬品『オセルタミビル(沢井製薬)』が一時供給停止、『ゾフルーザ(塩野義製薬)』『タミフル(中外製薬)』は限定出荷となっています。
Q.薬は輸入できないんですか?
(伊藤氏)
「製薬関係者の話によると、原材料そのものは既に輸入して作っているそうです。また、輸入した場合には様々な検定などすぐには使えない事情があり、そう簡単ではないようです」
■成分によっては『インフルエンザ脳症』の恐れも…市販薬使用時の注意「可能な限りアセトアミノフェンを選択して」
一方で、市販薬には注意が必要です。伊藤氏によると、病名がわからない時点では、「咳や痰の薬は飲み慣れたもの、解熱剤は『カロナール』などアセトアミノフェンを主体としたものが良い」ということです。
厚生労働省によると、インフルエンザだった場合、薬の成分によってはインフルエンザ脳症になる恐れもあるため、『ロキソプロフェン』『イブプロフェン』『アスピリン』などの使用は避けたほうが良いといいます。
Q.突然発熱して、どうしても熱を下げたいときに『ロキソニン』などを飲んでしまう人は多いと思いますが、避けたほうが良いんですね?
(伊藤氏)
「今は特にインフルエンザが大流行していますから、できればアセトアミノフェンに寄せてほしいと思います。でも、コロナ禍では解熱剤が一切なくなって、ロキソニンでも何でもいいという時期もありました。だから、『絶対にロキソニンを飲んではいけない』『飲んだらインフルエンザ脳症になる』と過度に心配する必要はないと思いますし、大人がインフルエンザ脳症になる頻度はかなり低いですが、ゼロではないので、可能な限りアセトアミノフェンを選択していただくといいかなと思います」
■インフルエンザ予防に有効な対策は?こまめな水分補給も大切「胃酸に殺菌効果があって不活化されていく」
インフル予防には基本的な感染症対策(手洗い・うがい・マスク)が有効ですが、『帰宅後すぐにシャワー・入浴』『歯磨き』も推奨されています。伊藤氏によると、「外出時に顔や首など皮膚に付いたウイルスを、できるだけ早く洗い流すことが大事」「口腔内の菌が繁殖すると、ウイルスへの防御機能が弱まる」ということです。
また、普段から免疫力を上げておくことも大事で、根菜類・発酵食品・乳製品を取り、バランスの良い食事で腸内環境を整えると良いといいます。
Q.インフルエンザを予防する上で、部屋の湿度も大切ですか?
(伊藤氏)
「理想は、50~60%の間ぐらいです。放っておくて30%ぐらいの日が最近多いですから、加湿器を使うなど、加湿に努めることは大切だと思います」
Q.他に注意することはありますか?
(伊藤氏)
「これは手洗いと関わってくるんですが、手を洗い過ぎて皮膚が乾燥し荒れてしまうと、そこにウイルスが付着して、うまく洗えなくなります。手を洗う一方で、保湿もきちんとするのが良いと思います」
Q.素朴な疑問ですが、例えば外出時に水分補給をすると、口の中にいるウイルスをそのまま飲み込んでしまうのではないかと不安になるのですが、実際どうなんでしょうか?
(伊藤氏)
「良い質問です。私も医者になるまでは心配でした。でも実は、胃酸に殺菌効果があるので、胃の中に入ったものは、よほどでなければ不活化されていくと考えてもらって大丈夫です。喉を潤すことに重きを置いて、こまめに水分を取ってください。ただ、インフルエンザやコロナに関してはその考え方でいいんですが、ノロウイルスは別です」
■流行期突入『ノロウイルス』には加熱・煮沸・次亜塩素酸ナトリウム
流行期に突入し、各地で相次ぐノロウイルス。手指や食品などを介して口に入り、腸管で増殖して嘔吐・下痢・腹痛などを引き起こします。12月頃がピークで3月まで多発しますが、特別な治療はなく、対症療法となります。対策は手洗い(排便後や調理・食事前には都度行う)や、ウイルスの疑いがある二枚貝などの調理は、中心部まで十分に加熱(85~90℃で90秒以上)すること。注意が必要なのは、アルコール消毒の効果は乏しいということです。
Q.ノロウイルスは対症療法もなく、厄介ですね?
(伊藤氏)
「そうなんです。ちょっとやそっとの加熱では死なないので、高熱で長時間、中心部まで加熱することが大切です。ノロウイルスはアルコールでは不活化しませんが、ドアノブや家具など口に入らないものは『次亜塩素酸ナトリウム』での消毒が有効です。口に入るものは、それだと安全ではないので、煮沸が良いです。食器洗浄器の蒸気には、煮沸効果があるといわれています」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年1月14日放送)