【お金】ガソリンの補助金が縮小し価格高騰 銀行の振込手数料も引き上げの中、大手企業の初任給は『30万円』超に!「今、日本型の雇用システムが変わっていく過渡期」 さらなる物価高と各企業の工夫で暮らしのお金はどう変わる?
ガソリンの補助金がさらに縮小で今後、ガソリン価格はどうなるのか?また銀行の振り込み手数料も、約1000円にまで引き上げられるとのこと。その一方で、大手企業は初任給の引き上げを次々と発表しています。2025年、暮らしのお金はどう変革していくのか?経済評論家・加谷珪一氏の解説です。
■ガソリンの補助金が縮小へ 「円高に振れないかぎり、補助金がなくなると、かなり上がる」 自民・公名・国民『暫定税率廃止』で合意も時期は未定
2025年1月16日、全国平均のレギュラーガソリンの価格は、約190円前後で推移していますが、これまでは政府の補助金によって175円ほどに抑えられてきました。しかし、2024年12月に補助金が縮小され、そこから今回、さらに補助金が縮小されたということで、2025年1月20日以降は185円程度に上昇すると見られています。
ガソリンの本体価格には石油石炭税とガソリン税があり、このガソリン税には『暫定税率』(25.1円/1L)というものがあります。本来、道路整備を目的として制定されたものですが、一般財源化して、今も続いています。2024年12月に、自民・公明・国民民主は、『暫定税率廃止』で合意しましたが、廃止時期は決まっていないとのことです。
ではガソリン価格はどうなるのでしょうか。経済評論家・加谷珪一氏によると、「ガソリン価格は基本的に原油価格と為替レートで決まる。為替がこのままの水準で推移すれば、さらなる価格上昇も…」と話しています。
Q.今、円安傾向で進んでいて、さらに原油価格も上がっているので、今のところ下がる要素が見つからないですよね?
(経済評論家・加谷珪一氏)
「原油価格は、しばらく70ドル台で推移していましたが、このところ非常に上がってきていて、直近では80ドルを突破している。なので、円高に振れないかぎり、補助金がなくなると、かなり上がるのではないかと予想されます」
Q.『暫定税率』は、いつごろ廃止になりそうですか?
(加谷氏)
「『暫定税率廃止』は与党にとって、政局を左右するカードの一つ。カードを切る時期を見極めたいというのが本音だろう」
Q.『暫定税率』は本来、道路整備を目的として制定されていますが、まだこれが続いているというのは、一般財源化して、使い勝手がいいから、そのまま置いているように見えますが?
(加谷氏)
「一連の道路改革というのが昔あって、このときに一般財源化して、『特定の目的に使うのはやめる』と決めたんですが、『暫定税率』は最終的に無くすということが含まれていたはずです。ただ、一旦得た財源は、中々手放したくないというのがあるため、ここまで続いてしまったのではないか」
Q.仮に『暫定税率』をなくすと、『消費税』も安くなるので、国に入る税収が減るということですか?
(加谷氏)
「そういうことになります。『暫定税率』を無くすのであれば、恐らく何らかの形で財源の捻出は可能だと思われるので、与党側は視野には入っていると思います。少数与党での非常に厳しい政権運営ですから、いつ出してくるのかというところで、かなり悩んでいるのでは」
■銀行の振込手数料引き上げの真の目的は、人件費削減と顧客を引き込むため? 「意外とお金がかかる」ATMと大型店舗はできるだけ減らしたい
銀行の振り込み手数料が、1000円近くになるといいます。すでに『三菱UFJ銀行』『三井住友銀行』では、窓口でほかの銀行に振り込む場合、990円となっています。さらにATMでほかの銀行に振り込む場合も、現金だと880円がかかります。
『みずほ銀行』も2025年1月14日に改定され、窓口で3万円以上を他の銀行に振り込む場合は、990円となり、改定前から100円ほど上がりました。さらにATMでほかの銀行に振り込む場合は、改定前は550円でしたが、現金だと880円となりました。さらに2025年4月には、『りそな銀行』も990円になるとのことです。
Q. ATMなどは電気代がかかるとは思いますが、この価格設定は妥当なんですか?
(加谷氏)
「最近、減ってきているとはいえ、銀行全体でATMは年間数兆円、一時期は10兆円近くのお金を使っていたんです。通信料や、すべてのATMに常に現金を補充するために、現金の輸送体制が必要になるので、意外とお金がかかる。なので銀行の本音としては、ATMはできるだけ減らしたいというのがあり、こういう価格設定になっているのでは」
Q.最近、ある日突然、銀行がなくなったり、統合したりなどが多いですよね?
(加谷氏)
「昔は銀行って、大きな看板を目立つところに掲げて店舗を運営していましたが、この看板が、めっきり減っているんです。大きな店舗はなくして、ビルの一角にちょっと入るだけにするとか、店舗のコスト削減を急ピッチで進めていますので、ATMと同様、店舗も相当お金がかかるので、これも可能な限り縮小したいというのが、銀行の本音ではないか」
『みずほ銀行』の振込手数料引き上げの理由は、現金からキャッシュレスへの進展や、詐欺・マネーロンダリング対応に費用を充てるとのことです。そして加谷氏によると「詐欺防止などの面もあるだろうが、真の目的は、人件費の削減と自行(自分の銀行)への顧客引き込み」のためだといいます。
(加谷氏)
「自分の銀行のみで、お金の移動を完結させて、そこで収益を最大化したいというのが銀行側の本音になるので、それに向かって着々と動いているという感じです」
しかしインターネットバンキングの振込手数料は大手銀行・同行当て・自分の銀行宛てだと無料になります。ほかの銀行宛てだと110円から220円となります。インターネットバンキングが安い理由は、加谷氏によると「銀行は人件費・ATMの維持などに莫大なコストがかかる。インターネットバンキングでは、これらを一気に削減することができる」とのことです。
■空前の人手不足で初任給30万円超! 「今の物価を考えると、そういう時代かな」 各企業が個性に合わせた賃金体系にシフトする過渡期か―
今、経済界では初任給引き上げの動きが相次いでいます。損害保険会社の『東京海上日動』は、2026年4月入社の初任給について、引っ越しを必要とするエリアに赴任となった人には、最大41万円に引き上げる方針で、現行の28万円から約13万円アップになるといいます。
また、『明治安田生命』でも2025年春から、転勤の可能性がある採用枠の初任給は、固定残業代を含め最大33万2000円に引き上げられます。さらに『ユニクロ』などを展開する『ファーストリテイリング』も、同年春に入社する社員の初任給について、1割増額し33万円としています。新卒採用を巡り、優秀な人材確保のため、大手企業が続々と初任給30万円以上に。
(加谷氏)
「空前の人手不足で、企業からすると賃金を上げないと、良い人材が来てくれないというのが背景にあります。ただ、どういうところが初任給を上げているかというと、金融機関・不動産・商社などが多いのですが、インフレで不動産価格や株価、金利も上がっているということで、好業績の会社が中心なんです。なので、これができる企業と、できない企業の差が生まれ始めているのかもしれません」
2024年のマイナビの調査で、就活生に聞いた『初任給の額が応募に影響するか?』という質問では、87.1%が『影響する』と答えていて、前年より3.2%増えました。また『最低限欲しいと思う初任給の額は?』とういう質問には、『22万円以上』と答えた人が63.0%で、前年より13.8%も増えました。物価高など、経済不安の影響で、求める金額が上がっているのではという分析です。
初任給引き上げに対し、現役世代の人からは「自分の感覚からすると高いけど、今の物価を考えると、そういう時代かなと思う」という意見もある一方で、「いいことだと思うけど、就職氷河期世代からすると、うらやましい」との声も…。
(加谷氏)
「今、日本型の雇用システムが変わっていく過渡期なんだと思います。一部、初任給を上げたという企業の中に、『転勤が全国どこでもOKという条件をクリアすると40万になります』とか、どういう働き方をするかで、給与体系が変わるというシステムを採用しているところも出てきているので、個性に合わせた賃金体系にシフトする過渡期ではないでしょうか」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年1月16日放送)