命の危険性も…首都直下地震で起こる可能性のある帰宅困難者による“群集事故”とは
12年前の東日本大震災で明らかになった東京など大都市の問題点。それは公共交通機関が止まり、帰宅困難者が続出したことでした。その数約515万人。今後、大地震が起きた際、大きな問題の一つに、こうした帰宅困難者たちによる“群集事故が”あげられています。そもそも群集事故とは、どういった事故なのか? 発生のメカニズムとその対策を杉原凜アナウンサーが取材しました。
東京都によると、今後首都直下地震が起きた場合、都内では約450万人の帰宅困難者が発生するとみています。そして帰宅困難者が増えるとどんなリスクがあるのでしょうか?首都防災を研究する東京大学大学院の廣井悠教授に聞いてみました。
東京大学大学院廣井悠教授
「ほとんどの人が帰ってしまうと歩道が大混雑をしてしまうんですよね。歩道が大混雑してしまうと。去年、韓国の梨泰院であったような、群集事故が起きるリスクがあるのではないかと」
廣井教授は、去年、韓国の梨泰院で死者158人を出したような“群集事故”が起きる危険性を指摘しました。
群集事故とは、多くの人が密集することによって起こる事故です。そして、一人が転倒すると全方位の人が巻き込まれ、重なり合うように転倒してしまう群集雪崩などが発生する可能性もあります。身動きのとれない中で体が圧迫され窒息するなど、命を落とすこともある危険な現象です。
また巨大地震が発生した時は、群集事故の危険性がさらに高まるといいます。
東京大学大学院廣井悠教授
「帰宅困難者の人たちが危険になる可能性は、震度5強とかと震度6強・震度7では全然違うんですよね。やっぱり帰宅困難者イコール東日本大震災の時の状況だって思ってる方が結構いらっしゃって。全く別物っていう風に考えた方がいいんだと思います」
廣井教授によると巨大地震が起きたときは
・建物の倒壊や道路のひび割れなどで転びやすい
・警備をする人がいない
・焦りやいらだちを感じやすい
などの理由から群集事故が起こりやすくなってしまうといいます。
廣井教授が行った『首都直下地震で帰宅困難者が一斉に歩いて帰宅した場合のシミュレーション』によると、都内では30箇所以上の場所で1㎡あたり6人以上の混雑が発生するとの想定に。これは満員電車並みの密集度に相当します。
東京駅に近く多くオフィス街もある丸の内や、若者が多く訪れる渋谷などが想定されています。街中にある歩道橋などは逃げ場がなく危険なため、なるべく近づかないことが大切だといいます。大地震がきた場合、群集事故を防ぐ方法はあるのでしょうか?
東京大学大学院廣井悠教授
「まず一斉帰宅をしないってことだと思います。帰らないための対策をきちんとしておく必要があります」
そのためには…
①職場などの備蓄品を確保すること。水や食料は3日分を用意
②自治体のホームページなどで一時的に避難できる施設を確認しておくこと
③災害時の学校などの対応や、安否確認の方法を家族間で共有しておくこと
などの準備が必要です。皆さんも、日頃からの備えを再確認してみて下さい。