【解説】黄砂で「脳梗塞」や「心筋梗塞」増える? 花粉症との“ダブルパンチ”も
ちょうど12日午後4時ごろの時間帯、日本列島の広い範囲に黄砂が飛来しています。黄砂による生活や健康への影響が心配されています。
◇中国から大量飛来
◇心筋梗塞も“増加”
◇マスクは有効?
以上の3点について詳しくお伝えします。
まずは12日、福岡では午前9時40分に黄砂を観測し、視界がかなり悪くなっていました。また、広島や鹿児島などでも黄砂を観測しました。12日に気象サイトに投稿された写真を見ると、車のボンネットがまだら模様に汚れてしまったり、窓ガラスにべったりと砂のような跡が残ったりしていました。
今回の大規模な黄砂、すでに中国では市民生活に大きな影響を及ぼしています。気象庁の黄砂予想では、12日午前0時から時間の経過とともに大陸から日本列島に大きく迫ってきて、午後3時の時点では、北海道ほぼ全域から日本海側を広く覆っています。
さらにこの後、黄砂は関東地方もほぼ完全に覆ってしまい、この影響が13日いっぱいまで続く可能性があります。
もし東京で観測されれば2021年以来、2年ぶりですが、実は2012年から2020年まで9年間観測されていないということで、やはり関東では、黄砂というのは珍しい現象だと言えます。
やはり注意しなければならないのが、生活や健康への影響です。そもそも、黄砂が発生するのは中国やモンゴルの「砂漠」です。発生しやすいのは、まさに今の季節の「春」で冬の間、凍っていた地面が解けて乾燥して、強い風も吹く季節なので巻き上げられやすいのです。
今回の黄砂、中国の内モンゴル自治区で11日に自動車から撮影された映像では、視界が黄砂に遮られて前の車もよく見えない、非常に危険な状況になっているのがわかりました。
首都・北京では6段階ある大気汚染指数が一時、最悪レベルになりました。黄砂には慣れているはずの北京市民ですら、「今年は黄砂が多すぎる」という声が上がっています。
実は、大陸の砂漠で巻き上げられた時は砂粒ほどの大きさも混ざっているというのが黄砂ですが、これが風に乗って遠くに運ばれて、海を越えて日本に届くまで生き残るのは、非常に細かい目に見えないほどの小さい粒です。
その大きさがどれぐらいかというと、1ミリの250分の1にあたる、4マイクロメートルほどになります。
4マイクロメートルと言われてもよくわからないと思いますが、まだシーズンで黄砂と同じく飛び交っているスギ花粉と大きさ比べをすると、実は花粉は黄砂の約10倍、30から40マイクロメートルとなります。
花粉よりは「かなり小さいこと」がわかりましたが、黄砂と新型コロナウイルスを比べるとどうなのかというと、新型コロナウイルスは約0.1マイクロメートル。ウイルスと比べると黄砂はだいたい40倍と、「かなり大きい」ということになります。
このようにウイルスより大きくて、花粉よりは小さいこの黄砂が日本にやってくると、私たちの健康にいろいろな悪さをすることが指摘されています。
環境省によると影響は大きく分けて3つあり、一つが「呼吸器疾患」です。黄砂が飛来すると、ぜんそくや肺炎などで子供では「病院などへの受診が増加」、大人では「救急搬送の増加」がみられて、肺炎による死亡との関連も報告されています。
また、「循環器疾患」というのもあります。黄砂が来ると「脳梗塞」や「心筋梗塞」で入院したり、発症したりする人も増えるという報告もあります。
「なんで、黄砂で脳梗塞や心筋梗塞が?」と思いますが、環境省の資料でも、なぜ増えるのか、どのように関与しているかということは、今のところわかっていないということです。いずれにしろ、基礎疾患のある人などは注意が必要です。
そして、最も多くの人に影響しそうなのがアレルギー症状です。黄砂が飛来すると「目のかゆみ」や「鼻水」、「くしゃみ」、「皮膚などのアレルギー症状」を引き起こす人がいます。
さらにこの季節に心配なのが、「花粉症と黄砂のダブルパンチ」です。神奈川県立循環器呼吸器病センター・呼吸器内科の小松茂医師によると、黄砂は大陸から飛んでくる間に大気汚染やカビの一部、そして細菌などをくっつけてくるといいます。
そのため、すでに花粉症で炎症が起きているような人が黄砂を吸い込んでしまうと、より症状が強くなってしまう可能性があるそうです。
小松医師によると花粉と同じように、黄砂も「マスクは有効」ということです。布やウレタンよりも、やはり不織布の方が効果が高いということです。
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黄砂のシーズンはまだしばらく続きますので、最新の情報に注意してお過ごしください。
(2023年4月12日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)