手話にも変化 「無理に『男』か『女』かを決めて表現されるのは大変苦痛」ジェンダー平等な表現へ
手話ニュースの準備をしている中で浮かんだ、ある疑問。「手話も時代に合わせたアップデートが必要なのでは?」ということ。
取材をすると、ジェンダー平等の観点から、看護師やキャビンアテンダントなど様々な名称のアップデートが進む中、手話には、手話ゆえの難しさがあることが分かりました。性的マイノリティーにも対応した新しい取り組みについて話を聞きました。
(取材:社会部 和田弘江)
日曜日の朝。日本テレビでは、手話ニュースを放送しています。放送前の準備をしている時に、私は手話通訳者からこんな質問を受けました。
「原稿にある【鈴木さん】は男性ですか? 女性ですか?」
その理由を聞くと、手話では「男/女」で「~さん」にあたる敬称が変わるというのです。
通訳の方によると、フルネームで記載されているときは下の名前で、映像があるときはその見た目で、「男/女」を判断していて、どうしても分からない場合は、男性という意味もありますが「人」という意味で「man」にあたる男性の敬称を使用しているといいます。
しかし、その手話通訳者は「性の多様性が認められる中、名前や見た目だけで、性別を判断していいのだろうか」という葛藤もあると話しました。
「手話も時代に合わせて変化するかも知れません」手話通訳者のこの言葉から、実際に手話もアップデートされていくのか、私は取材をすることにしました。
■男女表現は世界でもまれ 「大きな課題を突きつけられている」
手話では、職業を表す表現で「男/女」について悩ましい場面があるといいます。
例えば、「医師」は《脈をとる+男》、「先生」は《教べんに見立てた人さし指を振り下ろす+男》。女性の医師や教師が増えるにつれ、《脈をとる+女》、《教える+女》という表現が使用されるようになったといいますが、その人が、男性なのか、女性なのか確認する必要が出てきているといいます。
また、手話通訳者も悩んでいた名前の後ろに付ける敬称「~さん」。男性を指す「親指」や女性をあらわす「小指」で表現します。
ジェンダーにかかわらず使える「さん」に比べて、英語の「Mr.」や「Ms.」に近い表現ですが、性の多様性が広がる中、「男性と女性、どちらを使ったらいいか悩む場面がある」という声もあがり始めているそうです。
新しい手話表現を検討し確定させる機関である、日本手話研究所 事務局長 大杉豊さんは「日本の手話の語いと文法は、性別を表す“手形”を基本として構成されることが多く、これは、日本以外では韓国や台湾のみで使われている特徴」と話しています。
手話は、音声で伝える言葉と同じように、国や地域によって違います。日本で使われている手話は「男/女」の手話から派生する表現が多く、世界的にみても珍しいということです。
そして、大杉さんは「今やジェンダーの問題は国際的なものであり、日本の手話言語とその使用者コミュニティーが大きな課題を突きつけられている」と指摘しました。