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手話にも変化 「無理に『男』か『女』かを決めて表現されるのは大変苦痛」ジェンダー平等な表現へ

2022年4月10日 3:00
手話にも変化 「無理に『男』か『女』かを決めて表現されるのは大変苦痛」ジェンダー平等な表現へ
「男性」を表す手話/提供:日本手話研究所

手話ニュースの準備をしている中で浮かんだ、ある疑問。「手話も時代に合わせたアップデートが必要なのでは?」ということ。

取材をすると、ジェンダー平等の観点から、看護師やキャビンアテンダントなど様々な名称のアップデートが進む中、手話には、手話ゆえの難しさがあることが分かりました。性的マイノリティーにも対応した新しい取り組みについて話を聞きました。

(取材:社会部 和田弘江)

日曜日の朝。日本テレビでは、手話ニュースを放送しています。放送前の準備をしている時に、私は手話通訳者からこんな質問を受けました。

「原稿にある【鈴木さん】は男性ですか? 女性ですか?」

その理由を聞くと、手話では「男/女」で「~さん」にあたる敬称が変わるというのです。

通訳の方によると、フルネームで記載されているときは下の名前で、映像があるときはその見た目で、「男/女」を判断していて、どうしても分からない場合は、男性という意味もありますが「人」という意味で「man」にあたる男性の敬称を使用しているといいます。

しかし、その手話通訳者は「性の多様性が認められる中、名前や見た目だけで、性別を判断していいのだろうか」という葛藤もあると話しました。

「手話も時代に合わせて変化するかも知れません」手話通訳者のこの言葉から、実際に手話もアップデートされていくのか、私は取材をすることにしました。

■男女表現は世界でもまれ 「大きな課題を突きつけられている」

手話では、職業を表す表現で「男/女」について悩ましい場面があるといいます。

例えば、「医師」は《脈をとる+男》、「先生」は《教べんに見立てた人さし指を振り下ろす+男》。女性の医師や教師が増えるにつれ、《脈をとる+女》、《教える+女》という表現が使用されるようになったといいますが、その人が、男性なのか、女性なのか確認する必要が出てきているといいます。

また、手話通訳者も悩んでいた名前の後ろに付ける敬称「~さん」。男性を指す「親指」や女性をあらわす「小指」で表現します。

ジェンダーにかかわらず使える「さん」に比べて、英語の「Mr.」や「Ms.」に近い表現ですが、性の多様性が広がる中、「男性と女性、どちらを使ったらいいか悩む場面がある」という声もあがり始めているそうです。

新しい手話表現を検討し確定させる機関である、日本手話研究所 事務局長 大杉豊さんは「日本の手話の語いと文法は、性別を表す“手形”を基本として構成されることが多く、これは、日本以外では韓国や台湾のみで使われている特徴」と話しています。

手話は、音声で伝える言葉と同じように、国や地域によって違います。日本で使われている手話は「男/女」の手話から派生する表現が多く、世界的にみても珍しいということです。

そして、大杉さんは「今やジェンダーの問題は国際的なものであり、日本の手話言語とその使用者コミュニティーが大きな課題を突きつけられている」と指摘しました。

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■ジェンダーに敏感な場面では敬称省略も 新しい表現とは
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