住宅街でも目撃「北限のサル」生息範囲が拡大 農作物被害も… 青森・下北半島
青森県の下北半島に生息する「北限のサル」は近年、生息数が増え、生息域も拡大しています。住宅街での目撃情報や農作物の被害も増えています。下北半島のむつ市を取材しました。
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4日、雪が降りしきる青森・むつ市で野生のニホンザルに遭遇しました。細い枝の上に乗り、木から木へ飛び移るサルや、食事をするサルがいました。
青森県北東部・本州最北端の下北半島で生息するサルは、野生のサルの中で世界で最も北で暮らすことから「北限のサル」と呼ばれています。
2019年には、列をなして電線を綱渡りする姿も撮影されました。集団で雪を避け、器用に移動する様子は一時、話題になりました。
そんな「北限のサル」に近年、変化が起きているといいます。調査を行う団体によると、生息域が拡大しているというのです。
ニホンザル・フィールドステーション 松岡史朗事務局長
「(このエリアで)私が見たのは、5年くらい前から。それ以前は、ここにサルはいなかったです」
1970年に「北限のサル」は国の天然記念物に指定され、保護の対象となりました。青森県によると、当時の生息数は187頭でしたが、50年あまりが経った2020年度には、確認されただけでも2796頭以上に増加しました。
これに伴い、今まで見かけることのなかった地域にまで出没し、「北限」がさらに広がっているというのです。
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取材を進めていた4日、住宅街の近くでも、雪の上に複数頭のサルの足跡がありました。近年、住宅街での目撃も増えているといいます。
ニホンザル・フィールドステーション 松岡史朗事務局長
「民家の(屋根)平気で登りますから、電話線を伝って、登って下りたりするから、電話線が切れることもありますよね。生活被害が(今後)増えるかもしれない。この地区では」
さらに特産品のイチゴを育てている農園では、昨年6月に手塩にかけて育てたイチゴが収穫直前に食べられる被害に遭っていました。
あべファーム 阿部伸義代表
「(ビニールハウスの)奥の方を破って、侵入した感じで。ハウスをあけると真っ赤な実が見えるが、真っ赤な実が1つもない」
ビニールハウスの入り口に音を出す装置を設置するなど対策をして、8年間イチゴを守ってきたといいますが…
――今まで被害は?
あべファーム 阿部伸義代表
「ないです。サルも知恵をつけてきているので、農家としては脅威になっている」
こうした被害に、むつ市は犬とパトロールを行ったり、電気柵を設置したりするなど対策を強化しました。
被害の拡大が食い止められているなど効果が出ている地域もある一方で、被害が続いている地域もあるということです。
ニホンザル・フィールドステーション 松岡事務局長
「なかなか人が思うようにいかないんですよね。(対策を)地道にやっていくということが(被害)軽減につながっていく」
青森県は地元住民とサルの共存に向けて、引き続き生息数や被害状況などの調査を進めるということです。