【解説】“不適切な保育”の背景…保育士1人で“子ども6人” 現場は「心も体もヘトヘト」
厚生労働省の調査研究事業によると、「子どもに罰を与える」「脅迫的な言葉かけをする」など、“不適切な保育”と確認されたケースが、2019年度に全国で345件あったということです。なぜ、“不適切な保育”はなくならないのか。専門家は、「保育士が置かれている環境に問題がある」と指摘しました。
■保育士1人が見る人数…イギリス・ドイツの“約2倍”
有働由美子キャスター
「保育の現場で子どもが虐待を受けるケースがあとをたたないわけですが、実は『子どもに罰を与える』『脅迫的な言葉かけをする』など、“不適切な保育”と確認されたケースは全国で345件あったということです(※2019年度 厚生労働省の調査研究事業より)。小栗さん、何か保育の現場特有の問題があるのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「その点をですね、保育事業や子育て支援を行う認定NPO法人『フローレンス』の駒崎弘樹会長は、『静岡の事件は許せないし、本当にひどいケースだ』としていますが、ただ、『虐待はどこの現場でも起こりうる』とも指摘しています」
「というのも、『保育士が置かれている環境に問題がある』といいます。具体的には、1人の保育士が見る子どもの人数が多いということなんです。日本では1歳児の場合、1人の保育士につき6人までとなっています」
有働キャスター
「1人で6人は本当に大変ですよね…」
小栗委員
「そうなんです。海外を見ますと、(保育士1人あたりの子どもの数が)イギリスが3人、ドイツのベルリンが3.75人ということで、これと比べると、日本の保育士は約2倍の子どもを見ているということになります」
「実際、保育士の方々にお話を聞いたんですが、『6人見ていて、そのうち4人が一気に泣き始めたりするとストレスはある。寄り添った保育は厳しい』。それから、『子どもは予想外の行動をするのでケガしないよう目が離せない。心も体もヘトヘトになる』と話していました」
■専門家「人数配置などの制度を変える必要」
有働キャスター
「ギリギリの状況だということだと思いますけれど、もうちょっと環境をよくする、あるいは保育士の方々が働きやすくする…どうすればいいんでしょうか?」
小栗委員
「駒崎さんは、『本来はイギリスなどと同じ水準が望ましいけれども、まずは(保育士1人が見る子どもの数を)5人までにするなど、人数配置などの制度を変えていく必要がある』ということです。『例えば、カメラを設置して自分たちが適切な保育ができているかどうか、振り返るような仕組みというのも大事だ』と指摘していました」
有働キャスター
「辻さんはこのことについてはどう思われましたか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「未来を担う子どもたちを見てくれている保育士さんって、“未来の可能性を育てている”というのと、“ニアリーリコール”だと思うんです。しかも、今だと共働きが多い現役世代の親たちのキャリアにとっても支えになっているわけで、保育士さんの仕事ってつまり、“今”と“未来”の両方を支えている、本当にとても大事な役割だと思います」
「こういった“不適切保育”の防止ももちろんですし、事業者任せではない国の策として手厚くサポートしてほしいと思います」
有働キャスター
「現場の目線に立った改善というのを急いでほしいですけれども、今まさにみなさんのお子さんの保育施設で『もしかしたら』と心配な場合には、自治体によっては通報窓口があって対応してくれますので、ためらわずに子どもを守るための対応をお願いします」
(12月7日放送『news zero』より)