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【解説】緊急支援…国内の水産加工体制“強化” 経産省幹部「中国に中抜きされなくなる」 人手不足などの不安も

2023年9月1日 5:44
【解説】緊急支援…国内の水産加工体制“強化” 経産省幹部「中国に中抜きされなくなる」 人手不足などの不安も

首相は中国の輸入禁止措置への対抗策として、輸出先の転換や国内の水産物の加工体制を強化する緊急支援事業を行うと発表しました。ある経産省幹部は「中国に中抜きされなくなる」と歓迎した一方、国内の水産会社からは人手不足などを心配する声が聞かれました。

■中国側に利用されかねない“言い間違え” 農林水産相が「汚染水」発言

有働由美子キャスター
「水産業のみなさんが大変な状況の中、このタイミングで農林水産相が『汚染水』と言うのは…」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「言い間違いでしょうけれど、その表現が間違っていることを指摘しなければいけない担当の大臣自らがそう言ってしまうというのは、緊張感が欠けていると言わざるを得ません。中国側に利用されかねない発言ですから、撤回は当然です」
「政府関係者からは、『これはひどい』『みんなに迷惑かけておバカですね』。野党議員からは『農水相が風評被害を広げている』といった批判が相次いでいます」

■新たな輸出先・販路を開拓か…中国が拳をおろすきっかけに?

有働キャスター
「そうした中、首相はこれまでの風評被害対策などへの800億円の基金設置に加えて、新たに中国の輸入禁止措置への対抗策として、『輸出先を転換』『国内で水産物を加工する体制を強化する』とした緊急支援事業を行うと発表しました」

小栗解説委員
「ホタテの殻むきなどの『加工』を国内ですることで、一石二鳥をねらおうというものです」

有働キャスター
「一石二鳥?」

小栗解説委員
「どういうことかと言うと、これまで中国は、日本から水産物を輸入して、殻むきなどの加工をして、アメリカなどに輸出していました。これを日本で加工して直接、アメリカなどに輸出出来るようにすれば、日本としては輸出先・販路の開拓ということになりますし、中国は自ら、これまで輸出で得ていたお金を失うことになり、『日本から輸入禁止だ』と振り上げていた拳をおろすきっかけになるのでは、ということです」

■メリットが大きいと話すも…「すぐには難しい」との声

有働キャスター
「これ、うまくいくとピンチをチャンスに変えられますよね?」

小栗解説委員
「そうなんです。実際にある経済産業省幹部は『これにより中国に中抜きされなくなって、むしろメリットが大きいのでは』と話していました。ただ、『加工』と一口で言いましても、国内の水産会社からは『殻むきの人手不足の解消など、国が支援すると言ってもすぐには難しい』『自動の殻むき機械は高額だしスペースもとる。すぐに工場に導入はできない』という声も聞かれます」

有働キャスター
「廣瀬さんはどう思いますか?」

廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「確かに人材の確保とか、施設導入するにしても継続するための仕組みをどうするのか気になりました。一方で、加工品にすることで付加価値が出るので、例えばホタテを塩麴漬けにすると違った楽しみも提供できて、売り上げも増えるかもしれないと思いました。工夫してチャンスに変えていきたいですね」

有働キャスター
「今回、新たな輸出につながるようにいち早く動くのはいいと思います。私も少しでも応援になればと、ふるさと納税で福島の海産物を取り寄せました。そうした支援が現場の漁師さんにまできちんと届くようにしてほしいです」

(8月31日放送『news zero』より)