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シリーズ『こどものミライ』双子や三つ子の育児 必要な支援とは

2023年7月6日 17:51
シリーズ『こどものミライ』双子や三つ子の育児 必要な支援とは
シリーズ『こどものミライ』です。子育てを取り巻く現状や、子ども自身の成長にスポットを当てます。7月6日は、双子三つ子などの多胎育児についてです。

福岡市の公園に双子の赤ちゃんをベビーカーにのせた母親が次々に集まってきました。総勢20組の双子の乳幼児とその親、多胎育児の経験者などが集まった『福岡多胎交流会』です。

■参加者
「別々のところに行くから、対処法とかグッズとか知りたい。」
■財津ひろみアナウンサー(1歳10か月の双子育児中)
「いま、まさに私それで。」
■先輩双子ママ
「あれ(ハーネス)は動きが激しい子は危険。1人引っ張ったら1人こける。キャンプのワゴンに(2人)乗せていました。」

厚生労働省の調べによりますと、双子や三つ子など『多胎児』を分娩する女性の割合は、全体の1%程度です。(2021年厚生労働省調べ)

決してレアケースではありませんが、同じ境遇の“ママ友”に出会う機会は少ないため、悩みを相談したり、情報を交換したりできる交流会は貴重なひとときです。

福岡市で4ヶ月の双子を育てている峯岸裕美さん(41)を訪ねました。

■財津アナウンサー
「2人抱っこひもですが。」
■4ヶ月の双子を育てる峯岸裕美さん
「いま2人とも6キロずつ、2人で12キロですね。けっこう(肩・腰に)来ます。」

夫の転勤で福岡に住んでいる峯岸さんは、近くに親族はおらず、昼間は蒼來(そら)くんと伶來(れいら)ちゃんを1人で育てています。

■峯岸さん
「2人同時(泣き)だと、もう1人はどうしても泣きっぱなしになるから、1人はごめんねごめんねってなる。片方をあやしてる間、罪悪感がはんぱない。」

夜間の育児を、定点カメラで撮影させてもらいました。蒼來くんにミルクをあげ、寝かしつけても、その後伶來ちゃんが泣き出し、抱っこします。その後、再び蒼來くんが泣いておむつ替えです。すると、伶來ちゃんが大泣きし、今度は2人で同時に泣きます。

■峯岸さん
「すべての作業が2倍になる。自分が自分じゃなくなるような。白目むいた私が幽霊みたいに動いている。感情がなくなっちゃう。」

衣類やベビーベッドなどは2人分同時に揃える必要があるうえ、毎月のミルク代とおむつ代は、あわせて約3万5000円にのぼります。しかし、峯岸さんは、友人や保健師に双子育児特有の悩みを打ち明けることはないといいます。

■峯岸さん
「2人同時になにか起きて困っている相談は、相手もわからないじゃないですか。吐き出すことができないまま自分の中でたまったまま、毎日が流れているのが孤独だなって感じますね。」

2018年には愛知県豊田市で3つ子の母親が、泣き止まない次男を床にたたきつけ、死なせる事件が起きました。多胎児の虐待死は1人の子どもを育てる場合に比べ、2.5倍から4倍以上になるという調査結果があります。(日本多胎支援協会より)

多胎育児の孤独感を抱き、時に親たちは追い詰められます。その受け皿を作ろうと、『福岡多胎交流会』を始めたのが、牛島智絵さんです。

自らも1歳11ヶ月の双子を育てる中で、多胎育児に関する情報や行政サービスの見つけづらさを感じ、SNSで情報を発信したり交流会を開いたりしてきました。

■牛島智絵さん
「孤独の子育てになっている人のサポートをどうするのか。行政にしか変えられないことっていっぱいある。多胎児の先輩ママが保健師さんと一緒にサポートしている地域があったりするので、そうゆうサービスが福岡で広がっていくといいんじゃないかな。」

多胎妊産婦』の支援事業は、2020年に国がスタートさせています。多胎育児の経験者による訪問型の相談支援や日常生活のサポートなど、孤立しがちな多胎児の母親を支えようというものです。

この事業を実施するかどうかは自治体が判断しますが、おととしの時点で実施しているのは、全国でわずか4%です。

福岡市では多胎妊婦検診の費用助成などは実施していますが、より多胎家庭の実情に合ったサポートや制度を整えて欲しいとの声もあります。

これについて、福岡市は次のように述べました。

■福岡市こども未来局・首藤実千代 課長
「多胎児についてのことは考えているけど、子育て支援ってたくさんある中で、いまは広く子育て世帯を対象にした支援の拡充に取り組んでいるところ。」

交流会を主催してきた牛島さんは、多胎児を育てる親のリアルな声をより広く集め、届けるため、7月に一般社団法人『tatamama(タタママ)』の設立を予定しています。

■牛島さん
「福岡県で年間生まれる双子の数が400組から600組。そこのみんなと声をあげていく。そこを吸い上げて伝えていく活動をしたい。」

当事者以外には理解されにくいのが、多胎育児の実情です。不安の中で孤立する母親を取り残さないため、きめ細やかな支援が求められています。
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