特集「キャッチ」若者中心に浸食する大麻を取り締まる“マトリ”に密着 大量摘発の瞬間
麻薬取締官に密着 大量摘発の瞬間
特集「キャッチ」です。日本大学アメリカンフットボール部の大麻事件など、若者を中心に大麻による検挙者が増加傾向にあります。普段カメラが入ることができない“マトリ”と呼ばれる薬物犯罪を取り締まる麻薬取締官の捜査に密着、薬物犯罪の現状に迫ります。
■麻薬取締官
「大麻のにおいが部屋の外に漏れている状況なので、相当な規模で栽培しているものと思われます。」
九州厚生局・麻薬取締部、通称“マトリ”は、警察とほぼ同じ捜査権限が与えられている、薬物犯罪を取り締まる厚生労働省の専門組織です。
今回、取締官の顔や捜査場所などを明かさないことを条件に、取材が許可されました。
この日、「男がマンションを借りて大麻を栽培している」という情報を元に、以前から内偵捜査を続けてきた事件に着手することになりました。
■麻薬取締官
「今回の事案は、福岡市内に住む40代の男が自宅とは別の場所でマンションを借りて、そのマンションの一部屋で、大麻を栽培しているという事案になります。」
打合せが終わると、すぐさま10人あまりの麻薬取締官が現場に向かいます。
張り込みを始めて約12時間が経つと、閑静な住宅街が、突然ものものしい雰囲気になりました。“マトリ”が、男のいるマンションに家宅捜索に入ったのです。
数分後、出てきた捜査員の手には大量の大麻がありました。
■麻薬取締官・佐藤奈美さん(仮名)
「これ系があと6つくらいある。」
普通の家族なども暮らすマンションの一室、2LDKの部屋から車2台分の大麻が押収されました。
■佐藤さん(仮名)
「(Q. 量としては多い?)そうですね、多いのは多い。」
“マトリ”は、40代の男1人を販売目的で大麻を栽培していた疑いで逮捕しました。
捜査を取り仕切る“マトリ”一筋28年の佐藤奈美さん(仮名・51)は、ここ数年、現場で感じていることがあります。
■佐藤さん(仮名)
「私この仕事に入った頃は、8割・9割覚醒剤の事件ばっかりやっていた感じだったんですが、最近は半分かそれ以上、大麻の事件をやっているような感じ。」
実はマンションの一室で大麻を栽培するなど、大麻に関する事件が相次いでいるといいます。
■麻薬取締官
「いつ頃から(栽培しているのか)?」
■逮捕された男
「昨年から。」
■麻薬取締官
「誰かに売っているのか?」
■逮捕された男
「売ってはいないです。」
■麻薬取締官
「(話の内容を)考えているね。」
過去に“マトリ”が摘発した事件でも、栽培用に厳重に管理された部屋には、いくつもの大麻が並べられていました。
この日、“マトリ”を訪れると、先日押収した証拠品の整理が行われていました。
部屋に入ったとたん、取材していた記者が感じたのは、大麻独特のにおいです。
■吉原美樹記者
「鼻につくようなにおいが充満していて、ちょっと入った瞬間、クラッとする。」
そんななか、ベテラン麻薬取締官の佐藤さんたちは、黙々と作業を続けます。
■佐藤さん(仮名)
「(今回捜索した部屋は)栽培だけのためにある部屋って感じですね。(逮捕された男は)まめですよね。結構手間がかかると思うので。」
先日逮捕した男の部屋では、栽培された大麻が、販売するためなのか、大麻の部位ごとに細かく仕分けされた状態だったといいます。
大麻は、幻覚症状や依存など、心身にさまざまな影響を及ぼす危険性があります。
■佐藤さん(仮名)
「大麻の植物片についている粉みたいなのを集めたものです。」
見せてもらったのは、幻覚作用の強い『バッズ』と呼ばれる大麻の花の部分から粉を抽出し、ふるいにかけたものです。
■佐藤さん(仮名)
「現物は私今回初めて見たので、珍しいものかなと。」
通称“キーフ”と呼ばれ、大麻の成分が濃縮されたもので、乾燥大麻を吸う際にかけることで、さらに作用が強まるといいます。
このように栽培された大麻は、一体どこへ流れているのか、麻薬取締部の谷口部長に聞きました。
■九州厚生局 麻薬取締部・谷口 和久部長
「最近特に、青少年を中心とした大麻事案が増加しております。」
大麻犯罪における検挙数は年々上昇傾向にあり、去年は5546人です。そのうち約7割が30歳未満と、若者の大麻使用が目立っています。
大麻をめぐっては8月5日、日本大学アメリカンフットボール部の寮から覚醒剤と大麻が見つかり部員が逮捕されたほか、乾燥大麻を所持した罪に問われている俳優の永山絢斗被告(34)の初公判では、検察側が懲役6か月を求刑し「中学2年生の時に初めて大麻を使用し常習性、依存性が認められる」などと指摘しました。
福岡の街でも、大麻の影が見られました。
■20歳
「例えば大麻的なものをやっている人とか売っている人の知り合いとかいるんですけど、警固公園ではしない(吸わない)。でもそういうやつらは集まる。」
また、大麻はクッキーやチョコレートなど、一見、大麻と分からない形で社会に出回ることも増えてきているといいます。
大麻は一度手を出してしまうと、さらに強い刺激のある覚醒剤やほかの薬物へとつながる『ゲートウェイドラッグ』とも言われ、使用するのは大変危険です。
■谷口部長
「入手の多くがインターネットを介したものになっています。(売人と)連絡を取るときに履歴が残らないように、自動消去されるようなアプリを使ったり、代金の支払いを仮想通貨を使ったりと、年々複雑化・巧妙化してきています。」
ベテラン取締官の佐藤さんも「大麻は安全だ」「害がない」など、インターネットやSNSなどにあふれる誤った情報に惑わされないことが重要だと指摘します。
■佐藤さん(仮名)
「少しでも薬物に関わる人を減らすことが、我々の使命だと思っていますので。地道にやっていくしかないのかなと。」
大麻は若い世代を侵食しています。手口が巧妙化するなか、摘発の難しさを感じながらも、事件の端緒をつかもうと、“マトリ”は日々向き合っています。
■麻薬取締官
「大麻のにおいが部屋の外に漏れている状況なので、相当な規模で栽培しているものと思われます。」
九州厚生局・麻薬取締部、通称“マトリ”は、警察とほぼ同じ捜査権限が与えられている、薬物犯罪を取り締まる厚生労働省の専門組織です。
今回、取締官の顔や捜査場所などを明かさないことを条件に、取材が許可されました。
この日、「男がマンションを借りて大麻を栽培している」という情報を元に、以前から内偵捜査を続けてきた事件に着手することになりました。
■麻薬取締官
「今回の事案は、福岡市内に住む40代の男が自宅とは別の場所でマンションを借りて、そのマンションの一部屋で、大麻を栽培しているという事案になります。」
打合せが終わると、すぐさま10人あまりの麻薬取締官が現場に向かいます。
張り込みを始めて約12時間が経つと、閑静な住宅街が、突然ものものしい雰囲気になりました。“マトリ”が、男のいるマンションに家宅捜索に入ったのです。
数分後、出てきた捜査員の手には大量の大麻がありました。
■麻薬取締官・佐藤奈美さん(仮名)
「これ系があと6つくらいある。」
普通の家族なども暮らすマンションの一室、2LDKの部屋から車2台分の大麻が押収されました。
■佐藤さん(仮名)
「(Q. 量としては多い?)そうですね、多いのは多い。」
“マトリ”は、40代の男1人を販売目的で大麻を栽培していた疑いで逮捕しました。
捜査を取り仕切る“マトリ”一筋28年の佐藤奈美さん(仮名・51)は、ここ数年、現場で感じていることがあります。
■佐藤さん(仮名)
「私この仕事に入った頃は、8割・9割覚醒剤の事件ばっかりやっていた感じだったんですが、最近は半分かそれ以上、大麻の事件をやっているような感じ。」
実はマンションの一室で大麻を栽培するなど、大麻に関する事件が相次いでいるといいます。
■麻薬取締官
「いつ頃から(栽培しているのか)?」
■逮捕された男
「昨年から。」
■麻薬取締官
「誰かに売っているのか?」
■逮捕された男
「売ってはいないです。」
■麻薬取締官
「(話の内容を)考えているね。」
過去に“マトリ”が摘発した事件でも、栽培用に厳重に管理された部屋には、いくつもの大麻が並べられていました。
この日、“マトリ”を訪れると、先日押収した証拠品の整理が行われていました。
部屋に入ったとたん、取材していた記者が感じたのは、大麻独特のにおいです。
■吉原美樹記者
「鼻につくようなにおいが充満していて、ちょっと入った瞬間、クラッとする。」
そんななか、ベテラン麻薬取締官の佐藤さんたちは、黙々と作業を続けます。
■佐藤さん(仮名)
「(今回捜索した部屋は)栽培だけのためにある部屋って感じですね。(逮捕された男は)まめですよね。結構手間がかかると思うので。」
先日逮捕した男の部屋では、栽培された大麻が、販売するためなのか、大麻の部位ごとに細かく仕分けされた状態だったといいます。
大麻は、幻覚症状や依存など、心身にさまざまな影響を及ぼす危険性があります。
■佐藤さん(仮名)
「大麻の植物片についている粉みたいなのを集めたものです。」
見せてもらったのは、幻覚作用の強い『バッズ』と呼ばれる大麻の花の部分から粉を抽出し、ふるいにかけたものです。
■佐藤さん(仮名)
「現物は私今回初めて見たので、珍しいものかなと。」
通称“キーフ”と呼ばれ、大麻の成分が濃縮されたもので、乾燥大麻を吸う際にかけることで、さらに作用が強まるといいます。
このように栽培された大麻は、一体どこへ流れているのか、麻薬取締部の谷口部長に聞きました。
■九州厚生局 麻薬取締部・谷口 和久部長
「最近特に、青少年を中心とした大麻事案が増加しております。」
大麻犯罪における検挙数は年々上昇傾向にあり、去年は5546人です。そのうち約7割が30歳未満と、若者の大麻使用が目立っています。
大麻をめぐっては8月5日、日本大学アメリカンフットボール部の寮から覚醒剤と大麻が見つかり部員が逮捕されたほか、乾燥大麻を所持した罪に問われている俳優の永山絢斗被告(34)の初公判では、検察側が懲役6か月を求刑し「中学2年生の時に初めて大麻を使用し常習性、依存性が認められる」などと指摘しました。
福岡の街でも、大麻の影が見られました。
■20歳
「例えば大麻的なものをやっている人とか売っている人の知り合いとかいるんですけど、警固公園ではしない(吸わない)。でもそういうやつらは集まる。」
また、大麻はクッキーやチョコレートなど、一見、大麻と分からない形で社会に出回ることも増えてきているといいます。
大麻は一度手を出してしまうと、さらに強い刺激のある覚醒剤やほかの薬物へとつながる『ゲートウェイドラッグ』とも言われ、使用するのは大変危険です。
■谷口部長
「入手の多くがインターネットを介したものになっています。(売人と)連絡を取るときに履歴が残らないように、自動消去されるようなアプリを使ったり、代金の支払いを仮想通貨を使ったりと、年々複雑化・巧妙化してきています。」
ベテラン取締官の佐藤さんも「大麻は安全だ」「害がない」など、インターネットやSNSなどにあふれる誤った情報に惑わされないことが重要だと指摘します。
■佐藤さん(仮名)
「少しでも薬物に関わる人を減らすことが、我々の使命だと思っていますので。地道にやっていくしかないのかなと。」
大麻は若い世代を侵食しています。手口が巧妙化するなか、摘発の難しさを感じながらも、事件の端緒をつかもうと、“マトリ”は日々向き合っています。