「また来てね」亡き妻が好きだったアサギマダラに会いたい 残された夫の想い
2000キロ以上を旅するチョウとして知られるアサギマダラは、福岡には春と秋の年2回飛来するといわれます。亡き妻が好きだったアサギマダラと、残された夫の想いを取材しました。
10月17日に福岡県糸島市で、ある女性を偲ぶ会が親戚や地域の人が集まって開かれました。
■長岡秀世さん(73)
「私にとっては戦友であり同志であり、頼りになる伴侶だったですね。」
糸島市に住む長岡秀世さんは、20年ほど前から妻・順子さんとともに、この地で手芸品などを展示するギャラリーを営んできました。
順子さんは自然の花やチョウが好きでした。
おととしの10月、庭で作業していた順子さんのもとに、旅するチョウ・アサギマダラ1匹が舞い込んできました。
順子さんはすぐにアサギマダラを写真に収めると、「また来てね!」と見送りました。
しかし、その1か月後、順子さんは、突然の病で帰らぬ人となりました。
■長岡さん
「50年間家内と心を通わせてきたので、優しい人で後押しをずっとしてくれて、僕が提案したことを一回でも逆らったことないね。命令ではなくて一心同体でやってきた。ギャラリーを開くときにも。だから。」
長岡さん夫婦は大学時代に出会いました。きっかけは、長岡さんの一目ぼれでした。結婚し、つらい時も楽しい時も支え合い、50年間ともに歩んできました。
そんな、妻が愛したアサギマダラです。
■長岡さん
「これが白のフジバカマ。」
ことし4月、「また来てね」と妻が残した思いを胸に、長岡さんはアサギマダラが好むとされるフジバカマの苗を庭に植えていました。また会える日を願って。
10月17日、赤と白のフジバカマが立派に咲きほこっていました。
■長岡さん
「しっかり植え込むのに、体重13キロ落ちたんです。」
そして、ついにその時が来ました。
■中村圭一 カメラマン
「きた、きた、きた!」
■長岡さん
「そこに来ている。」
ことしも、アサギマダラが長岡さんのもとにやってきました。
■長岡さん
「なんとも飛ぶ姿がふんわり、ヒラヒラなのよね。」
■中村カメラマン
「奥さんが戻ってこられた感じですね。」
■長岡さん
「ほんとそうですよ。家内の化身と思っているから。」
長岡さんは、自宅の庭をチョウを愛する人が集う場所という意味の『オーレリアン樹庵』と名付けました。
■長岡さん
「また順子と会えるし、私の余生を全部それ(庭)にね、汗を流したいなと思います。」
そんな想いに応えるように、アサギマダラは長岡さんの周りを舞っていました。