立ち入り禁止!1500℃の高炉にカメラ潜入 鉄づくりの一翼担う命がけの現場とは
1500℃の世界です。普段は立ち入れない現場にFBSのカメラが入りました。そこは、想像を超える過酷な現場でした。
激しく火花を散らせながら窯から流れ出る真っ赤なものは、鉄の材料です。
巨大なつり橋の柱やケーブルから、自動車の車体や部品、そして電化製品まで、鉄はあらゆるものに使われ、豊かな暮らしを支えています。
その鉄づくりの一翼を担うのが、かつて官営八幡製鐵所があった北九州市の日本製鉄 九州製鉄所です。
普段は入ることができない製鉄所の内部には、どんな光景が広がっているのでしょうか。
建物や煙突が立ち並ぶ製鉄所の敷地は、福岡PayPayドーム、158個分の広さがあります。今も、約1万4000人が鉄づくりに携わっています。
山のように積まれているのは、鉄の原料となる鉄鉱石です。この鉄鉱石を溶かすのが、製鉄所の心臓部とも言える『高炉』です。その高さは、約100メートルあります。
通常は限られた作業員しか入れない高炉内に入る許可がおりました。
■八幡製銑工場 高炉課・原口雄志さん(35)
「きょうは特別に中に入っていただこうと思います。」
渡されたのは、耐火服です。思ったよりは重いアルミニウムでできた耐火服を着ることで、短い時間であれば660℃までは耐えられると言います。
耐火服を着て、立ち入り禁止の先の高炉内に入りました。カメラマンがすぐに感じたのは、異常な暑さです。床を温度計で測ってみると、190℃を超えていました。
この暑さの中で、鉄鋼マンたちが、3時間に1回行う重要な作業があります。
■原口さん
「あそこにある開孔機で高炉に穴を開けて、1500℃の『溶銑(ようせん)』を取り出します。」
作業員は、開孔機という大きなドリルで高炉に穴を開けます。高炉から流れ出てきたのは、真っ赤な溶銑です。
温度は1500℃で、耐火服ですら一瞬で溶かしてしまう高温です。この溶銑から鉄の材料となる銑鉄(せんてつ)を取り出します。
高炉に開けられた穴の近くは、作業員が近づくことができる範囲で最も暑いと言われています。
ここで作業員が行うのが、1500℃の溶銑を出すために開けた穴の掃除です。
カメラマンもこの場所に近づくと、耐火服を着ていても肌がジリジリと焼けるような暑さを感じました。
作業員は、流れ出た溶銑の品質を管理するため、温度の確認や成分検査なども行います。高温でドロドロした溶銑は高炉内を滝のように流れ、特殊なタンクに入っていきます。
■原口さん
「ここからトーピードカーで次の製鋼工程に送られます。」
溶銑は、トーピードカーと呼ばれる高熱に耐えられるタンク付きの貨車で、次の工程に運ばれます。敷地内にある線路を合わせると、東京のJR山手線の3周分の長さがあるそうです。
さらに、複数の工程を経て、不純物を取り除きながら板状に成型された鉄は、熱延工場と呼ばれる場所に移動してきます。
約500メートルの間を往復し、繰り返し圧力をかけていくことで、厚さ25センチ・長さ11メートルの鉄は、厚さ1.2ミリ・長さ2000メートルまで延ばされます。
そして、豊かな生活を支える鉄製品の原材料として出荷されます。
■原口さん
「大変ですけれど、きつい反面、やりがいがすごくある職場で、楽しく仕事ができていると思っています。品質・技術力ともに世界一の製鉄所となれるように、みんなで力を合わせて頑張っていきます。」
最新の技術と世界有数の設備、そして高いスキルの鉄鋼マンたちによって付加価値の高い製品を世に送り出している日本製鉄 九州製鉄所の現場は、想像を超える暑さに耐えながら小さなミスも許されない、まさに命がけの現場でした。