「5億年前に枝分かれした酵母」大学の実験で新発見 "時をかける球磨焼酎"誕生
熊本大学が育てた、従来の酒造りに使う酵母とはまったく違う酵母を使った新しい球磨焼酎が完成しました。
■東島大デスク
「頂いてみます。すごく華やかで、すっと入ってくるんですけど、じっくり味わうとコメの香りもしっかりして、でも華やかという今まであまり飲んだことのないタイプの球磨焼酎です」
これがまったく新しい球磨焼酎「ときのかおり」です。
商品名の「ときのかおり」には深い意味があります。
実はこの焼酎に使われた酵母は、今から5億年前に枝分かれした別種の酵母なんです。
研究の指揮を執った熊本大学の谷時雄特任教授です。
酒好きを自認する谷さん。失敗した研究の試験管に入っていた酵母のにおいをかいで「これは旨い酒になるのでは」と思ったそうです。
■熊本大学・谷 時雄 特任教授
「実験は失敗なんで廃棄するためにフタをとったところ、ほわんと日本酒の香りが吟醸香といいますけれども、吟醸香が部屋中に立ちのぼりまして実験用の培地ですから飲めませんけれども『飲みたいな』というとてもいい香りがしたんです」
谷さんが扱っていた"分裂酵母"という酵母は、5億年前に枝分かれしたあとアフリカの地酒以外では酒造りに使われることはありませんでした。
焼酎が大好きな研究者のひらめきが、まったく新しい球磨焼酎の誕生につながりました。
そのバトンを受けたのは創業200年を誇る球磨焼酎の蔵元、深野酒造です。温度管理を慎重にしながら商品化に成功しました。
完成した焼酎は2種類。アルコール度数は25度と42度と大きく違いますが、どちらも華やかな香りのあとから球磨焼酎らしい深みのある米の味が追いかけてきます。すでにイギリスへの出荷も決まっているということです。
■深野酒造・深野誠一代表取締役
「3月にロンドンからバーテンダーがいらっしゃってテイスティング(味見)してもらったら気に入られて、ぜひロンドンの自分のバーで使いたいというお話を頂いて話を進めているところです。カクテルとしてもそうですがそのままロックで飲むのも素晴らしい焼酎と評価していただきました」
この熊本大学の酵母を使った酒造りは、現在、麦焼酎や日本酒でも開発が進められているということです。
熊本大学が開発した酵母を使った球磨焼酎は3月28日から発売されていて、価格は25度のものが2200円、42度の原酒が3520円で、売り上げの一部は熊本大学の研究活動に役立てられます。県内の酒店のほか、空港や駅、観光施設で発売されています。