富山のフランス料理の老舗が半世紀の歴史に幕を下ろす
富山における本格フランス料理の草分け的存在とされる富山市の料理店が4日、半世紀に及ぶ店の歴史に幕を下ろします。多くの客に愛される料理を提供してきたシェフの思いとは。
午前10時。厨房では、ディナーに向けた準備が進められていました。
小西謙造さん「今の時期、発酵が早すぎるんです。もう追いかけっこですよ」
富山市の街なかにある「レストラン小西」のオーナーシェフ小西謙造さん(77)。フルコースで提供する料理やデザート、さらには数種類のパンまでひとりで作っています。
材料の仕込みや店の準備を手伝うのは妻の慶子さん。およそ半世紀、ともにこの店で過ごしてきました。
小西さん「最近ちょっと富山流に“だやいな”っていうのはありますよね。でもおかげさまで親に感謝ですかね、健康に産んでもらったもんで、どこも悪くないです私は」
父親が富山市で開いた飲食店で、幼いころから西洋料理に親しんでいたという小西さん。東京の大学に進学しながらフランス料理の修行をしました。大学卒業後はすぐふるさとに戻り、借金をして自分の店を開きました。
小西さん「若さっていうのはね、恐ろしいもの知らずですね。経営も何も分からなくて。昔は本当にコンプレックスの塊でしたから。どうしてできないのかっていうことばかり」
地方に本格的なフランス料理を出す店が無かった時代。小西さんは毎年フランスへ渡り、数々のレストランを巡りながら独学で基礎を身に着けました。その確かな腕前は、客だけでなく料理人の間でも知られるようになりました。
小室徳幸さん「(料理人の)かがみみたいな存在だったですよね」
富山市でフレンチの店を構えるシェフの小室徳幸さんです。小西さんのもとで修業し、巣立った料理人のひとりです。
料理人たちはフランス語で“仲間達”を意味する“コパン”の会のメンバーとして、小西さんとともに富山の食文化の発展に尽力してきました。
小室さん「富山でフランス料理の土壌を作ってくれたというのはすごく大きい。寂しいなという気持ちもありますけどもね。古き良きおいしい時代の料理を(自分たちが)しっかり伝えていかなきゃいけないのかな」
多くの客に愛されたレストラン。惜しむ声が上がりますが、小西さんは、閉店の理由についてこう話します。
小西さん「お客様の口に入る、それこそ命に関わる仕事だから、いい加減な仕事ができないな。そろそろ潮時だろうと」
質問:これまで大切にしてきたことは何ですか
小西さん「料理を召し上がっていただいて、笑顔になっていただくことかな。 それしかないでしょう。お客様が育てて下さった。間違いないですね」