【上関・中間貯蔵施設】伐採着手せず現地調査は振り出しに・・・立地可能性調査容認から3ヶ月
山口県上関町が使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設に向けた調査を容認したのが8月18日・・・あれから約3ヶ月、中国電力は、開始期限が11月19日までだったボーリング調査にむけた伐採の着手を見送り、現地調査に向けた動きは振出しに戻りました。この3か月の動きとは?
中国電力は、中間貯蔵施設の建設に向けた立地可能性調査の一つとしてボーリング調査を計画しています。
ボーリング調査を実施するためには樹木の伐採が必要です。中国電力は、所有地のうち、0.69ヘクタールの伐採を計画、8月21日に伐採届を上関町に提出し、9月20日から伐採が可能となっていました。
伐採開始の期限は、11月19日まででしたが、中国電力は着手しませんでした。理由について中国電力は「安全に作業を行うため資材の準備などを進めている状況であるため」と説明しています。
【使用済み核燃料中間貯蔵施設建設とは】
使用済み核燃料の中間貯蔵施設とはどんなものでしょうか?原子力発電所で発電すると使用済みの核燃料が排出されます。この使用済み核燃料を再処理工場に運ぶ前に一時的に保管しておくのが中間貯蔵施設です。国内の例で言うと青森県むつ市にも同様の中間貯蔵施設があり、もし上関にできると、原発敷地外の貯蔵施設は国内で2例目となります。今回、中国電力は「単独での建設・運営は難しいと判断した」として関西電力と共同で開発を進めるとしています。
【上関町で予定される立地可能性調査】
上関町での立地可能性調査について、中国電力は、3つの調査を実施するとしています。
①気象関係や過去の巨大地震の有無について文献からデータを集める「文献調査」
②地層や地質を観察し地層の分布や地層構造を把握する「地表地質踏査」
③地中から地質サンプルをとり地層の分布や地質構造などを調べる「ボーリング調査」
中国電力は、文献調査は8月18日にすでに開始していて、地表地質踏査は、ボーリング調査と並行、もしくは開始後に行うとしています。
立地可能性調査に着手すると、知事が同意するまでの間、国から年間で最大1.4億円の交付金を受けることができ、上関町は今回、約7400万円分を申請、12月補正予算案に盛り込んでいます。
【当初は急ピッチで進んでいた計画が・・・】
今回、現地調査に向けた動きは振り出しに戻りましたが、調査容認にむけた動きは急ピッチで進みました。中国電力が、上関町に申し入れたのが8月2日。そして西哲夫町長が臨時町議会で調査容認を表明したのが8月18日。その間に全員協議会(8日)が行われたり地元経済界に対する説明会(9日)が開かれたり、さまざまな動きがみられました。
中国電力は、8月2日時点では現地調査への準備期間は「最低1か月」と説明していて、10月頃にはボーリング調査もはじまるものと思われていましたが、調査どころか、調査に向けた伐採も始まりませんでした。
【周辺自治体からは懸念・・・県は苦言・・・】
浮上した中間貯蔵施設建設計画に、周辺自治体からは「事前の配慮があってもよかった」など懸念を示す声が聞かれました。
また中国電力の中川社長の発言に、村岡知事が「遺憾」の意を表す一幕もありました。村岡知事との面会後、報道陣の取材に答えた中川社長は面会内容を次のように説明しました。
(中国電力 中川賢剛社長)
「知事からは丁寧な対応を行うように、それから周辺の市町の理解を、説明を行うことでしっかり『理解を得るよう』にというご指示をいただきましたので、そのご指示に従って丁寧な説明を続けて参りたい」
しかし、村岡知事はその翌日の定例会見で・・
(村岡知事)
「説明については十分行っていただきたいということは申し上げましたが、『理解を得るようにしてくれ』とは、申し上げておりません。あたかも、県が進める(推進)側の立場で考えているととられかねない。ミスリードだと思いますんでここは私の基本的な姿勢に大きく関わってくるところですので、明確にしておきたい。遺憾であると思っています」
こうした状況の中、中国電力は、11月28日から、これまでの経緯と中間貯蔵施設について説明するため柳井市、平生町、周防大島町、田布施町の市長、町長を訪問すると発表しています。中国電力では、村岡知事から説明を求められたことなどを受けた訪問だと説明しています。
【上関町民は現状をどう思う?】
現在の状況について、計画に推進、反対、それぞれの立場の人たちはどのように思っているのでしょうか?
(上関町商工会 濵田憲昭会長)
「経済効果をもたらすものと思って皆さんと一緒に。頑張って行こうじゃないかというような3か月間でした」
上関町商工会の浜田憲昭会長。中間貯蔵施設建設に町の希望を見いだす一人です。調査容認後、中国電力が主催する東海第二原発の使用済み核燃料貯蔵施設の視察にも行きました。計画が前に進むことを心待ちにしています。
(濵田憲昭会長)
「早く調査を進めていただきたい。町の方に色んな人も入ってくるだろうし色んな物事も動いてくる事だろうと思います。こういうビッグチャンスが当町にある、チャンスが生まれてきた以上このチャンスを逃すことなく前に進めていっていただきたい」
(上関原発を建てさせない祝島島民の会 清水敏保代表)
「この3か月間は中間貯蔵施設を持ってくる話があるということで、周知するのと危険なものですから反対していきましょうと話していた」
上関町祝島の反原発団体=上関原発を建てさせない祝島島民の会代表の清水敏保さん。今回の中間貯蔵施設についても反対の立場です。今は中間貯蔵施設はどういうものか、勉強している状況だといい、まずは町民に説明をするべきだと話します。
(清水敏保代表)
「事前調査とはいってもまたなし崩しみたいな形でやっていく可能性があるので、ちゃんと住民に説明してから進めるべきだと思っています。40年前の原発の時のように対立をしないような形で私たちも気を付けてやっていきたい」
取材の中で双方、口をそろえるのが「上関の問題だけではない」ということです。
商工会の会長である濵田さんは周辺の町の商工会にも経済的な説明をし、協力を求めていると話しています。また、反対する清水さんは、町外の人達にも、計画の白紙撤回を求め署名を呼びかけているということです。
【今後予想される動きは?】
今回、伐採に着手しなかったことで現地調査への動きは振り出しに戻り、中国電力は、伐採届を再び提出する必要があります。
届け出の再提出の時期について中国電力は「準備作業の状況を踏まえながら検討している」としていますが、伐採届の提出後、伐採が可能になるのは30日後で、少なくとも年内にボーリング調査を開始するのは難しい情勢です。
ボーリング調査は半年程度かかるとされ、調査を終え、上関が、実際に「適地」かどうかの結論は、来年の後半以降となる見込みです。
また11月28日からは、中国電力による周辺市町への説明もはじまります。
原発を使い続けると必ず排出される使用済み核燃料は、現在、日本中の原発にたまり続けている状況です。上関町、山口県だけの話ではない今回の計画。これからどうなっていくのか?注目が集まります。