9か月ぶりに再開した輪島の漆芸研修所 地元・岩手で技術を磨き再開を待ち続けた研修生の思い
岩手県・大船渡市出身の今野風花さん。漆を使った芸術品を制作する『漆芸家』を目指し、岩手県花巻市内の作業場で修行に励んでいました。
今野風花さん
「本当に研修所の中にいたらできないようなことばかりやらせていただいたので、すごくいい経験になったなと」
元日に発生した能登半島地震。実家に帰省していたため被災は免れましたが、研修所は断水の影響などで休講を余儀なくされました。
地震の発生から3か月。漆製品の製作・販売を手がける岩手県盛岡市の工房などの支援を受け、花巻市内の県営住宅に作業場を設け技術を磨いてきました。
今野さん
「研修所とはまた違う仕事をすることになっていくと思うんですけど、これからの作品制作にプラスに生かせるようにしていけたら」
そんな中、研修所からうれしい知らせが届きました。10月からの授業再開です。
今野さん
「今年いっぱいはちょっと動けないかなとは感じてたんですけど、今年中に石川に戻れることになってうれしく思ってます」
再開を前に、今野さんが取り組んだものがあります。陸前高田市にある県指定の有形文化財「旧吉田家住宅主屋」の復旧作業です。かつての「吉田家住宅」は仙台藩の所領である気仙郡を治めていた吉田家が1802年に建設。2006年に土蔵など4棟が文化財に指定されました。
しかし、東日本大震災の津波で全壊し今は4棟のうち、『主屋』1棟の復旧が進められてます。
今野さんが担当したのは、集会所にあたる『大所』の引き戸、10枚の漆塗りです。新聞で今野さんを知った市の教育委員会が依頼しました。
今野さん
「緊張感ありますね。運ぶのにもすごい気を遣いますし…」
ムラが出ないように素早く丁寧に。室温や湿度にも気を配ります。東日本大震災の時は小学5年生。高校を卒業してからは岩手を離れていた今野さん。それだけに、この作業には思い入れがありました。
今野さん
「大船渡とか高田とか気仙の復興に携わるっていうことはないだろうなってずっと思っていたので、地元の復興の事業の一部に関われたことは光栄なことだと思いますね。私の人生の中でも結構、濃い経験ができた期間だったので、本当に感謝してもしきれないかなと」
そして5日。
県立輪島漆芸技術研修所・小森邦博 所長
「講師の皆様方のご協力いただきながら、授業再開ということになりました」
奥能登豪雨の影響で授業再開は予定より少し遅れたものの、今野さんは無事、輪島での再スタートをきりました。
今野さん
「きょうは久しぶりに授業も受けられるし、みんなにも会えるしで、結構楽しみにして来ました。自分から先生に質問したりとかして、もっともっと知識を深めて、技術もつけていければと思います」
再開までの9か月間に地元・岩手で得た貴重な学びを糧に、今野さんは再び輪島から漆芸家への道を歩み始めました。