【特集】震災がなければ振袖を…「娘がハタチになった姿を描いてほしい」画家が叶えた家族写真
震災によって6歳の若さで亡くなった宮城県石巻市の西城春音さん。
残された家族は、成人の日を迎えるはずだった娘の姿を1人の画家に託した。
宮城県内各地でハタチを祝う式典が行われた1月12日。
石巻市の家族のもとに1枚の絵が届けられた。
鮮やかな緑色の振袖を身にまとった凛々しい姿は、当時6歳の若さで亡くなった西城さん家族の次女・春音さんのハタチの姿だ。
2011年、春音さんが乗っていた幼稚園バスは津波にのまれ、その後、炎に包まれた。
昔の動画
「(好きな食べ物は?)サクランボ~イチゴ~♪(好きな遊びは?)ブランコ!」
いつも笑顔を絶やさず家族のムードメーカーだった。
春音ちゃん誕生日会
「ハッピーバースデー♪ おめでとう!」
震災が無ければ、ことしの成人を祝う会に出席するはずだった春音さん。
毎年欠かさず、家族は春音さんの誕生日をお祝いしてきた。
「乾杯!お誕生日おめでとう」
去年11月。
西城家を訪れたのは愛知県で活動する画家の小林憲明さんだった。
お母さん
「結構派手ですよね。私も着て、楓音も着て…」
この家に代々、受け継がれたきた大切な振袖。
おととし、ハタチを迎えた姉の楓音さんも身にまとった振袖だ。
「被災した家族の心の復興に繋がれば」
東日本大震災だけでなく、能登半島地震で悲しみを背負った家族とも向き合ってきた小林さん。
6歳までの写真と家族の話を元に、春音さんのハタチの姿を描いていく。
そして、成人の日を前にした12日。
「おー!」
春音さんの晴れ姿は一瞬にして家族を笑顔にさせた。
お母さん
「おでこと唇がすごい春音の特徴を捉えている」
お父さん
「大人の春音になってる」
凛とした姿で立つハタチの春音さん。
両手をストンとおろし晴れ着姿でも自然体な春音さんだ。
お父さん
「見られないと思って震災後…。 こういうかたちで見られて、小林さんには無理なお願いばかりしたけどすごく嬉しく思います」
楓音さん
「大人にはなったけど、子どもっぽさっていうか無邪気なところも残りつつの成人式を迎えたんじゃないかなって想像がつきます」
娘の門出の時。
母親の江津子さんはこの日を1つの区切りにしようと思っていた。
お母さん
「子離れというか区切り、節目。天国に行ってしまったけど、生きていれば二十歳になるからひとつの私の節目としてそういうふうに思ってる」
久しぶりに家族6人がそろった記念写真。
春音さんの笑顔がこれからも家族を1つにするチカラとなっていく。