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【特集】『ノーベル賞候補』東北大学前総長の大野英男さん <”電力を極限まで抑える新たな半導体”開発> デジタル技術の進化で莫大な電力消費見込まれる中

2024年10月7日 19:53
【特集】『ノーベル賞候補』東北大学前総長の大野英男さん <”電力を極限まで抑える新たな半導体”開発> デジタル技術の進化で莫大な電力消費見込まれる中

7日から『ノーベル賞』の発表が行われるが、宮城県内にもその候補に挙がる研究者がいる。東北大学前総長の大野英男さん。AIなどデジタル技術の進化で将来、莫大な電力消費が見込まれる中、電力を極限まで抑える新たな半導体を開発し、今 実用化が進んでいる。

『ノーベル賞』受賞を期待されるのは、東北大学前総長の大野英男さん。

電子機器に欠かせない半導体、その消費電力を大幅に抑えるスピントロニクスという全く新しい技術の実用化への道を切り開いた。

大野英男 東北大学前総長
「スピントロニクスは簡単に言うと、磁石の原理を使ってイチゼロを覚えよう。メモリーというのは電気を流し続けないと忘れてしまうので、流していないといけない、そうするとどんどん消費電力が増える」

磁石を表すスピンと、電気を表すエレクトロニクスを掛け合わせたスピントロニクス。

これまで半導体の主な材料はシリコンだったが、大野さんは外部から電力を加えなくてもエネルギーを発生させる磁石の性質に着目。

2009年、磁石を毛髪の10万分の1以下のナノレベルでの微細加工を施すことで、メモリーなどの半導体に応用できることを証明した。

大野英男 東北大学前総長
「(磁石という)何の変哲もない材料に、ぎりぎり薄くすることで高性能なメモリーになる性能が隠されていたことに誰も気づけなかった。世界中のグループがやっても性能が出ない、足踏みしていた」

では、スピントロニクスの原理を導入したスピン半導体で一体なにが変わるのかー。

これまで電子機器には待機電力は避けられないというのが常識だった。
しかし、磁石の原理を使ったスピン半導体ではコンピューターが演算をしている時だけ電力を消費し、待機電力をゼロにする全く新しい省エネ技術なのだ。

大野英男 東北大学前総長
「電気をつけっぱなしにしているのが今の半導体のやり方。つけていないと中のもの(データ)が無くなる、忘れる。使わない電気は消そう、それができなかった」

スピン半導体が注目を浴びる背景には、今 飛躍的に進化するデジタル技術が直面する"不都合な真実"があると言う。

大野英男 東北大学前総長
「みんなが必要とする生成AIが思いっきり伸びて、エネルギーを使うようになると最終的にまずい」

近年、飛躍的な進化を遂げる自動運転、AIなどの先端デジタル技術は、私たちの生活を豊かにし社会課題を解決することが期待されている。

コロナ禍に飛沫感染リスクを実証したのは、世界最高峰の演算能力を持つ日本のスーパーコンピューターだった。

膨大な情報を処理するために、今 世界各地で建設が進められているのがデータセンターだ。
しかし、膨大な電力を消費し、仙台のあるデーターセンターでは年間数千万の電気代がかかっていると言われる。

データセンターは、今後 増え続けるのは確実で、消費電力は2030年に6倍以上、2050年には857倍になる予測が示されている(2018年比)。
これは、新たに発電所を増築しても賄いきれる電力量ではない。

AI業界からも、スピン半導体への期待の声が聞かれている。

MAKOTO Primeの竹井智宏さん。
働き手不足が深刻な地方の中小企業向けに企画書や申請書などをAIが作成するソフト「カルクワークス」を開発。AIは飛躍的に進化していると指摘する。

MAKOTO Prime 竹井智宏さん
「接客からコミュニケーションも、AIが流暢に人間のようにしゃべって考えて対応することができるようになってきた」

竹井さんは、スピン半導体の実用化に期待している。

MAKOTO Primeの竹井智宏さん
「ものすごい消費電力が大きい。それに対して、決定打的にスピントロニクスの技術は期待が持てる」

大野英男 東北大学前総長
「発電所をいくつも作らないといけないという話。発電所を作れないところは競争力を失ってしまう。桁レベルで変わる。上手に使うと100分の1。使い方によっては十分ありうる」

一方、大野さんのノーベル賞受賞のカギを握る技術者がいる。
スピン半導体の実用化を担う東北大学の遠藤哲郎教授だ。
大手半導体メーカーで、フラッシュメモリの開発などで高い実績を上げてきた。

東北大学 遠藤哲郎教授
「2050年位まで情報化社会が進むと、地球上の電力の半分以上を半導体が消費することになる。電力を桁で下げられるのはスピントロニクスしかない。これは東北大学の意見だけではなく半導体業界全体の意見」

10数年前、大野さんのプロジェクトに招かれた遠藤教授。実用化を目指すきっかけに東日本大震災があった。

東北大学 遠藤哲郎教授
「原体験、あの東日本大震災の時にバッテリーの減りを気にしながらしか使えない。あんな思いはしたくない」

街中が停電。使用していないにも関わらず、携帯電話の充電がどんどん減っていき、家族らの安否が確認できない状況に、無力感を感じたと言う。

東北大学 遠藤哲郎教授
「(電話機として)なんの仕事もしていないのにエネルギーが使われる。こんな矛盾はない。エネルギーの無駄使いが、いかに無駄か」

その後、遠藤教授は国内外のメーカーなどと連携し実用化に取り組んできた。
そして、2018年頃からアメリカで先行して、スマートウォッチなど実用化が始まっている。

東北大学 遠藤哲郎教授
「将来的には半導体産業が社会の発展につながっていくのが魅力的」

東北大学の学生「AIを動かすのも半導体の部品なの半導体の部品がAIの発展を開放してきた。そのレースに自分が飛び込むところにワクワク」

東北大学 遠藤哲郎教授
「半導体が単なるハイテク分野だから面白いのではなく、半導体の技術を進めることがカーボンニュートラルやエネルギー政策に大きく自分が貢献できる分野だと認知されてきた」

大野前早朝と遠藤教授は、スピン半導体でカーボンニュートラルを実現する日が来ると信じている。

東北大学 遠藤哲郎教授
「今後、多くの領域で花開く基盤技術になっていく。カーボンニュートラルを支えるキーテクノロジーで日本が世界に貢献したことを見える化するためにも大野前総長にはぜひ『ノーベル賞』を取ってほしい」

大野英男 東北大学前総長
「(世界の企業から)様々なアプローチがあり、世界が新たな技術を欲していると日々実感している。エネルギーを作ることも大事だけどエネルギーを賢く使うことを可能にする半導体素子が出来つつあるという実感がある」

最終更新日:2024年10月8日 9:50
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