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【特集】普段放っておかれるもの使い<植物の栄養=堆肥>作る研究 『東日本大震災』で失われた沿岸部の風景を取り戻したい…(東北大学農学部)

2024年7月27日 14:00
【特集】普段放っておかれるもの使い<植物の栄養=堆肥>作る研究 『東日本大震災』で失われた沿岸部の風景を取り戻したい…(東北大学農学部)
普段は放っておかれるあるものを使って、『植物の栄養=堆肥』を作ろうという取り組みをお伝えする。
そこには、『東日本大震災』で失われた沿岸部の風景を取り戻したいという願いが、込められていた。

朝8時。両手いっぱいに荷物を持ち、実験用の圃場を訪れたのは、東北大学農学部の4年生・河本紗都美さん。

河本紗都美さん
「今日は小松菜を育てるための土作りをします。今持ってきた堆肥を混ぜ込む作業をします」

河本さんが情熱を注いでいること…

それは、ある〝やっかいもの〟を使った堆肥づくりだ。

河本紗都美さん
「海岸防災林のマツの落ち葉だけを使って、作っています。水と米ぬかで堆肥化していても、これだけ葉っぱの形が残るんです。堆肥になる前のマツはすごく硬くて、それと比べるとすごくもろくて柔らかい」

原料は、松の木から針のように伸びたみどり色の葉っぱの部分。

広葉樹の葉っぱと比べて分解が進みにくく、堆肥にされる例はあまりないそうだ。

河本紗都美さん
「これは有機石灰です。カキの殻とかマツ葉の堆肥が㏗(水素イオン濃度)が低くなっていて、酸性に偏っているので、それを中性寄りに戻すために」

どうすればマツの葉を堆肥化できるかー。
同じ農学部の後輩・山口璃空さん(2年)と、1年かけて試行錯誤を繰り返してきた。

河本紗都美さん
「(Qナイスコンビネーションですね)ずっと2人でやっているので、いい加減息が合ってきます」

山口璃空さん
「最初に話を聞いた時も、凄い先輩いるなと思って、行動力がすごいなと思って」

河本紗都美さん
「今日は、いつも活動している亘理の海岸林に行きます、2人でレンタカーで」

きっかけは、東日本大震災

島根県出身の河本さん。
『東日本大震災』をきっかけに、東北への関心が生まれたと言う。

河本紗都美さん
「当時、自分は小学2・3年生。教科書で都道府県名覚えるだけだった東北が、本当に人の営みがある場所なんだなって…」

2年前、未来の防災林を守るためのプロジェクトに、学生メンバーとして参加した河本さん。

これがきっかけで、海岸防災林に興味を持つようになり、この日は亘理町で海岸林の再生に取り組むNPO法人のイベントに参加した。

やっかいな存在「マツの葉」を有効活用するには…

NPO法人の代表で、河本さんの実験にも協力する東聖史さん。

NPO法人わたりグリーンベルトプロジェクト・東聖史代表理事
「マツの葉っぱがたくさん落ちてますけど、昔はこれが沿岸部の集落の人たちにとっては重要な資源だった。ただ高度経済成長期で、化石燃料とか化学肥料とかが入ってくるようになったので、マツ葉の需要がなくなってしまった。きめ細やかな手入れがその頃からなされなくなった」

経済成長とともに、放っておかれるようになったマツの葉。
そのままにすると、土壌の栄養分を吸収するため、木の成長を妨げる要因ともなるやっかいな存在だ。

NPO法人わたりグリーンベルトプロジェクト・東聖史代表理事
「そこで、このマツの葉を何とか有効活用したいということで、立ち上がった学生がここにおります、河本さん」

海風を弱めたり津波被害を軽減するなど、人々の命や財産を守る海岸防災林。

河本紗都美さん
「海岸防災林がよく育つためには落ちたマツを除去しないといけない。その除去が進むためには落ちたマツに価値を見出さないといけない」

「情熱を感じて、感動した」

河本さんが、マツの堆肥化に取り組む理由だ。

河本紗都美さん
「去年は、一年間ずっと放置して、黒っぽくなって体積が少なくなった状態で成分分析して、一般的な堆肥といわれる基準ぐらいになりました」

参加者
「普通は燃やすだけに使う。有効に利用するという活動は素晴らしいと思う」
「新しい形で堆肥として研究している学生さんたちの未来に向けての情熱を感じて、感動した」

最終的なゴールは人とマツのwin-winな関係

NPO法人わたりグリーンベルトプロジェクト・東聖史代表理事
「とにかく楽しみですね。学生さんが、今の海岸林の現状に関心を持って活動してくれていることがまずとても嬉しいので、これからの時代にあった新しい人と海岸林の関わりが再構築されていけばいい」

河本さんたちは、今年中に土壌改善や肥料としての働きなど堆肥としての効果を科学的に検証することを目指している。

河本紗都美さん
「この堆肥を作って、堆肥を使いたいからマツバを人が取っていって、マツにとっても嬉しいwin-winな関係を仕組みとして残せるのが最終的なゴール」

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