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思い出いっぱいの学び舎 150年の歴史に感謝を込めて 福江島の小学校閉校式《長崎》

2024年3月15日 7:00
思い出いっぱいの学び舎 150年の歴史に感謝を込めて 福江島の小学校閉校式《長崎》

五島市ではこの春、児童生徒数の減少のため「大浜小学校」「奥浦中学校」
「崎山小学校」「崎山中学校」の4つの学校が閉校します。

今回は、最も長い150年の歴史を持つ「崎山小学校」を取材しました。

五島市福江島の南東部に位置する 崎山地区。

海と山に囲まれた自然豊かな地域に、約1500人が暮らします。

私は、この地域の子どもたちが通う崎山小学校を訪ねました。

▼この春、小学校も中学校もなくなる崎山地区

(冷川小粹アナウンサー)
「こんにちは。皆さんは何年生ですか?」

(児童)
「5年生です」

大きな教室で前と後ろに分かれて、2つの学年が、一緒に授業を受けています。全校児童は34人。

人数が少ない分、家族のような団結力を感じました。

(児童)
「I`m nervous.(緊張してる)Because sunday is 閉校記念式典(日曜日は閉校記念式典があるから)」

子どもたちと話すと、この崎山をみんな大好きだということが伝わってきました。

(冷川小粹アナウンサー)
「崎山の好きなところは?」

(5年生)
「人数が少ないから、昼休みに遊ぶ時とかいつも、全校で遊びみたいな感じで楽しい」

(5年生)
「自然に囲まれていて落ち着く場所」

(5年生)
「(地域の人に)あいさつしたら、“こんにちは” とかじゃなくて、“おかえり” って言ってくれる」

近くにある崎山中学校も、この春閉校し、4月からはそれぞれ福江小学校、中学校と統合します。

▼150年の歴史 語り継ぐ卒業生たち

(冷川小粹アナウンサー)
「なかなか年季の入ったアルバムですね」

(崎山小学校 中山 末永 校長)
「そうですね、うちの学校に残っている一番古いアルバム」

崎山小学校は、150年の歴史を誇ります。

(冷川小粹アナウンサー)
「この辺りは(児童が)ものすごく多いですね」

(崎山小学校 中山 末永 校長)
「もしかしたらこのぐらいの頃が、一番多い時だったのかもしれない」

かつて、700人以上の児童が在籍した時代もあったといいます。

(崎山小学校 中山 末永 校長)
「地域にそれだけ子どもがいるのは、にぎやかな地域だったんだろう。想像できないような世界だった」

アルバムで気になったのが、ところどころ登場するこの七福神姿の子どもたちです。

(崎山小学校 中山 末永 校長)
「よくわからないんです」

約80年前に卒業した牟田ナルさんに、この謎の七福神について話しを聞くことができました。

御年92歳です。

(卒業生 牟田ナルさん)
「学芸会がある時にこんなことをしていた。学校の式場に持ってきて飾る」

(冷川小粹アナウンサー)
「学芸会の時は歌を歌ってたりしたんですか」

(卒業生 牟田ナルさん)
「うん 歌は歌ってた」

山に囲まれたこの地区に伝わる子守唄を教えてもらいました。

<子守唄>
♬ 崎山名所は、箕岳、臼岳、門前、それに火ノ岳

▼思い出がいっぱい 学び舎に感謝

学校の教員だった牟田さん。

崎山小への赴任はありませんでしたが定年後、非常勤講師として、30年間崎山にわたり、崎山小の子どもたちを見守りました。

(卒業生 牟田ナルさん)
「(知らないと)困ることを教えていたり、授業をした。怒らなかった。思ったことを話すように、あいさつ以外のことを話すように言った」

そしてナルさん、そっとつぶやきました。

「寂しかよ、崎山小がなくなるのは。悔しいね」

閉校式を2日後に控えたこの日。

地域の人たちが会場の設営のため、集まりました。

懐かそうに写真を撮るのは、卒業生の松本麻美さん。

現在、ポップスユニット「Tree」のボーカルとして、東京で音楽活動を行っています。

(卒業生 松本麻美さん)
「私は放送部だったので、ここをよく使っていた。伴奏のピアノを弾いたりしていた」

子どものころ、ここでアーティストになる夢を抱いた松本さん。

閉校式では、ふるさとへの思いを込めた歌で母校への感謝を伝えます。

(卒業生 松本麻美さん)
「本当に寂しいけれど、最後の最後に気持ちを込めて歌いたい」

▼受け継がれる「さっきゃま魂」

少子高齢化で人口減少が進む「五島列島」。

このふるさとで代々、家業を受け継ぐ人もいます。

繁殖牛を育てる野口大輔さん、38歳。

長男の兼大くん12歳、二男の海稀くんは10歳、長女の和愛さんは7歳です。

朝から夜まで働く両親の背中を見て育ちました。

農畜産業が多いこの地区では、汗を流して働くその精神を「さっきゃま魂」というそうです。

(二男 海稀くん(10))
「(手伝いは)楽しい。牛がたくさんえさを食べてくれるから」

(妻 和美さん(38))
「(子どもの手伝いは)助かります。うれしい。山も海も見えて、すごく気持ちがいい。人柄も優しくて、そんなところで子どもを育てたいと思って、崎山にきた」

野口さん自身も、父・兼幸さんの背中を見て育ったと話します。

(父 兼幸さん(63))
「僕から移譲したんじゃなくて、自分から手を挙げて『牛やるぞ!頑張るぞ!』って。息子にはまだまだ先が長いので、頑張ってほしい」

(野口大輔さん(38))
「今の子どもたちがあと10年20年後先に、崎山に住んで住みやすい町になってくれれば」

▼150年間ありがとう

いよいよ式当日、卒業生たちが続々と集まってきました。

(卒業生)
「懐かしいなー」

「山下です、松下です」

92歳の牟田さんも、教え子たちとの再会を喜びます。

(アナウンス)
「一同、礼」

(野口兼大さん(6年生))
「親子レクリエーションは、お父さんやお母さんたちが一生懸命計画してくれたので、楽しくできました」

(6年生全員)
「崎山小学校、150年間ありがとう」

<校歌>
♬ われらが里の山々は その名も高きホマーテよ まろき姿の美しく 我らが里を 守るなり

「2、1、どうぞ」

式のあとは、記念碑の除幕式。別れの時が近づいてきました。

最後は、卒業生の松本さんの歌で締めくくります。

<蒼き故郷>
♬ この美しき 故郷の大地よ 白浜に落つる 紅色の椿の花 温かな絆が私を育てた 

地域とともに歩んだ150年。

学び舎での思い出は、宝物として、一人一人の心に刻まれます。

~ いつまでも 輝き続けるあなたの 笑顔で ~

    長崎国際テレビのニュース