国民スポーツ大会(旧国体)の見直しへ提言 大会開催のコストだけでなく「都道府県対抗」の仕組みについても言及 鳥取県など7県がオンライン会議で要望書をとりまとめ
47都道府県での持ち回り開催が開催地の過度な人的・財政的な負担につながっているとして、見直しの声が上がっている「国民スポーツ大会(旧国体)」について、6月7日、鳥取県が2029年度以降に開催予定となっている群馬県や島根県などと共に大会運営の改善を求める要望書をとりまとめました。
6月7日、オンラインで会議が開かれ、国民スポーツ大会(国スポ)の開催基準の弾力的な運用を求める要望書を採択しました。要望書には、
①今後3巡目に向けた検討で見直す内容は、これから開催される2巡目の自治体にでも、可能なものは地元の実情に応じて弾力的に選択できるよう配慮する
②開催時期や実施行基、施設基準などを実情に合わせ運用することで、過大な人的・財政的負担を軽減しつつコンパクトな大会となるよう配慮する
③未来につながる競技力向上を目指し、先行事例を収集し、新しいモデルを広める
これらの3点が盛り込まれました。
会議に参加したのは、群馬(2029年度開催予定)、島根(2030年度)、奈良(2031年度)、山梨(2032年度)、鳥取県(2033年度)、沖縄県(2034年度)、三重県(2035年度検討中)の7県です。三重県は2021年度に開催される予定で準備も進めていましたが、コロナ禍で中止となり、2巡目の最後の開催に向け調整を進めています。
国スポを巡っては、主催者などの求める開催基準を満たすための施設整備や大会運営が開催地の過度な負担につながっているとして、開催基準の見直しを求める声が上がっています。今回、共同で見直しを要望しようと音頭を取った鳥取県の平井伸治知事は「大会を廃止しようというのではなく、持続可能な形で時代に合った大会にしていきたい」と狙いを語りました。
1946年に始まった旧国民体育大会は、現在、国スポへと名前を変え2巡目に入っています。かつてはスポーツ選手の目標となる国内大会で、アスリート育成の意義も大きいイベントでしたが、国際大会への出場機会が増えた今、その意義は薄れています。一方で、競技施設の整備や大会前の準備も含めると、100億円を優に上回る予算が必要で、地方の負担は小さくありません。主催者の日本スポーツ協会もパリオリンピックの終了後に、見直しに向け本格的な議論を行う意向を示すなど、国スポの在り方を考え直そうとする機運が高まっています。
問題のとなっているのは、大会開催のコストだけではありません。競技結果に点数をつけ、都道府県の順位を決める「都道府県対抗」の仕組みも時代に合わないとして、見直しが求められています。開催地が優勝するため、任期付きの職員として雇用するハイレベルの選手、いわゆる「ジプシー選手」の存在もいびつな仕組みに拍車をかけていて、会議では奈良県の山下真知事が「ジプシー選手の雇用はしない」と明言する場面もありました。
コンパクトで効率的な開催を実現することで、国スポを持続可能なものに変えていこうとする7県の活動。鳥取県の平井知事は「2巡目の中でモデルとなる事例を作り、3巡目へとつなげたいきたい」と話しました。6月11日には7県が共同で、文部科学省と日本スポーツ協会に今回とりまとめた要望書を提出する予定です。