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【解説】「103万円の壁」税の議論スタート どんな着地に?

2024年11月25日 20:01
【解説】「103万円の壁」税の議論スタート どんな着地に?

わたしたちの生活に大きく関わる、税の議論。自民党の税制調査会の議論が、25日からスタートしました。日本テレビ政治部官邸キャップ・平本典昭記者が、以下の3つの疑問について解説します。

1.税の議論…今年は「未知の世界」
2.「103万円の壁」なぜ地方反発?
3.妥協するのは…与党?国民民主?

■税の議論…今年は「未知の世界」

鈴江奈々キャスター
「まず、1つ目の疑問です。今年は税の議論が『未知の世界』というのは、どういう意味なのでしょうか?」

日本テレビ政治部官邸キャップ・平本典昭記者
「ある自民党のベテラン議員は『政治で最も重要な役割は、国民から集めた貴重な税金をどう配分していくかを決めること』だと言っていますが、それを決めるのが『税制調査会』、略して『税調』での議論となります」

「今年が『未知の世界』というのは、衆議院選挙の結果を受け少数与党になり、与党、特に自民党だけでは税調の議論を決められないからです。これまでも自民党の中でも『税調のインナー』と呼ばれる数人で、基本的には骨格を決めていました」

「しかし、今回は自民党のインナーでも、自民党だけでも決められず、特に野党の国民民主党の意見を取り入れないと、来年の税の方針を盛り込んだ税制改正大綱、さらには来年度予算案の編成もできない状況になっています。ある野党幹部は今回『これまで密室で決めていた税の使い道をオープンの場で決める、未知の世界になる』と話しているんです」

鈴江キャスター
「税の中でも今年は、何の税が注目されているのでしょうか」

平本記者
「3つあります。1つ目は、連日お伝えしている『103万円の壁』の見直しによる所得税。2つ目は、国民民主党が主張しているガソリン税の問題。3つ目は、岸田政権の時に決めた防衛増税を開始する時期の決定です。この財源は法人税、所得税、たばこ税の増税で賄うものなので、こういった税に注目していきたいと思います」

■「103万円の壁」なぜ地方反発?

鈴江キャスター
「2つ目の疑問は、注目される『103万円の壁』についてです。地方から税収が減ると反発がありました。財源については国が考えてくれないと困る、という知事からの声もありましたが、どう対応していくのでしょうか?」

平本記者
「石破政権は『地方創生』を看板政策に掲げていますから、地方の声は無視できません。ある政府関係者は『野党の反発より、地方の反発の声は政権にとっても痛手だ』とも話しています」

「国民民主党の案では基本的に、所得税にあわせて住民税の『非課税の枠』も拡大することになっています。国民民主党の主張通りにすれば、地方の税収は『4兆円ほど減る』といいます。そうしたことからいま、政府与党内で対応策としてあがっているのが『所得税』と『住民税』を分離させる、という案です」

「ある財務省幹部は『住民税を除外することで地方の減収を緩和できる』と説明しています。ただ、さきほど出た自民党の税調のインナーの1人は『税調でまだ議論もしていない。うまくいくかどうかもわからない』と指摘しています」

「税調の議論を象徴する言葉があり、この日も取材先から言われたのが『まだ日が高い』という言葉です。例年、税調の議論は最後の最後で決着します。例年でいえば12月の中旬頃。今年は、さらに遅くなる可能性もすでに指摘されていて、どうなるかは『まだまだ、先』と言えそうです」

■妥協するのは…与党?国民民主?

鈴江キャスター
「そして3つ目の疑問ですが、こうした議論が進むと、どこかで落としどころをつくることになりますが、妥協するとしたら与党側なのか、国民民主党側なのか、どうなのでしょうか?」

平本記者
「双方、妥協しない姿勢を崩していませんが、国民民主党側も選挙結果を受けて、簡単には引き下がれない状況です。ただ、ある国民民主党幹部は『103万円の壁を撤廃する結果が大事。地方にも迷惑をかけない形での決着方法はいくらでもある』とも言っています」

「25日からの議論で、自民党側は選挙結果を受けて国民民主党の意見をどこまで取り入れるかがポイントです。国民民主党側は103万円の壁撤廃を実現するために、現実的にどこまで与党と歩み寄れるかが問われます」

「『未知の世界』の交渉をぜひ、わたしたちにも見える形で、わかりやすい議論を行ってもらいたいと思います」

最終更新日:2024年11月25日 20:01