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土佐文旦発祥の地『土佐市宮ノ内地区』のブンタンを守る!男性の奮闘に密着【高知】

2025年2月28日 19:08
土佐文旦発祥の地『土佐市宮ノ内地区』のブンタンを守る!男性の奮闘に密着【高知】
高知県を代表する今が旬の果物の一つ、土佐文旦。その発祥の地、土佐市宮ノ内地区では、人口減少・高齢化などで生産者の数が年々減ってきています。
そんな中、土佐文旦の価値をもう一度見直し、地域を盛り上げていこうと奮闘する男性の姿を追いました。

2月26日水曜日の昼過ぎ、高知市の帯屋町商店街にずらっと並んだ机で仁淀川町産のお茶や打ち刃物など、各事業者が自慢の品を売り込んでいました。その話を興味深そうに聞いているのは外国人観光客。

これは、クルーズ船寄港で街中を散策する観光客にもっと高知県内の特産品をPRする機会を作ろうと高知市が企画したもので、県内の13市町村から33事業者が小間を出しました。

その中のひとり土佐市の矢野順也さん(45)です。試食販売していたのはブンタンのハチミツやオリーブオイルなど。

土佐文旦発祥の地・土佐市宮ノ内地区。矢野さんはこの地で昭和初期からブンタンを生産する農園の三代目です。
約1.2ヘクタールの山の斜面に5000本以上のブンタンの木が植えられています。

12月から1月にかけてが収穫期のブンタン。いまは追熟のために野囲いをして保存し順に出荷している一方、畑では二代目でもある父親の建生さん(77)とともに早くも次のシーズンに向け剪定作業をしています。

1年間手塩にかけて育てる大切なブンタンですが、時代の流れとともに取り巻く環境に厳しさを感じていました。

宮ノ内地区のブンタンの生産者はピーク時には約40軒ありましたが高齢化や人口減少の波には抗えず、現在24軒にまで減っています。
危機感を覚えた矢野さんは2018年に農園を法人化。それが矢野金光農園です。初代園主の祖父・金道さんの名前と祖母・光子さんの名前をもらいました。

そして始めたのがブンタンの1玉売りです。袋や箱でまとめ売りされることの多いブンタンの印象とは違い、専用の箱にひとつ丁寧に梱包されています。

できるだけ農薬を減らし長年受け継いできた生産者の知恵と経験で味の良さにこだわって作り出したブンタンは、1玉2324円と決して安くはありませんが、それだけの価値があると自信をもっています。

さらに、いま力を入れているのがブンタンの加工品です。商業施設ドラゴン広場の調理実習室を借りて、母の澄枝さん・姉の加奈さんと一緒に瓶詰めしていたのはブンタンのオリーブオイルです。

ブンタンの皮を蒸留して抽出したエッセンシャルオイルを、イタリア産のエキストラバージンオリーブオイルにブレンドしたものです。

その他にもブンタンオイルを混ぜたハチミツや1瓶に約7個分のブンタン果汁を濃縮させたシロップなどをオンラインで販売しています。

2月25日、矢野さんの姿が高知龍馬空港にありました。
今までオンラインのみで販売していた商品を空港で常設販売しないかと依頼があったのです。
この日は販売開始を目前に控え最終確認。手に持っているのは設置予定の什器のミニチュアです。特別な思いを込めた商品を並べるための特別な什器も用意します。

矢野金光農園のブンタン商品は、3月中に高知龍馬空港の土産物店の一角で販売が始まる予定です。

今は自身の畑で収穫したブンタンのみを使っていますが、いずれは地域全体の浮揚につなげたいと考えています。確かな品質のものを作り続けながら、時代とともに販売方法をしなやかに変化していく。

土佐文旦発祥の地の誇りを胸に矢野さんの模索は続きます。
最終更新日:2025年2月28日 19:08
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