【動物行き先は?】無許可開発など問題化し閉園する北海道の動物園…その支店が富士宮市「富士花鳥園」に(静岡)
北海道での無許可開発などが問題となり、閉園を決めた動物園「ノースサファリサッポロ」。動物の行き先が課題となる中、静岡・富士宮市に支店を設置したことがわかりました。その場所は、テーマパーク「富士花鳥園」です。
1993年、富士宮市の朝霧高原に開園した「富士花鳥園」園内には、色とりどりの花や、約30種類のフクロウ・ミミズクやペンギンなどを見ることができるテーマパークとして人気を博しましたが、コロナ禍の苦労が続いたことなどを理由に2025年1月から無期限の休園となっています。
園は休園を発表した際、「一旦ここで中締めとなり新しい形を模索する」と説明し、今後が注目されていましたが…。東京商工リサーチによりますと、1月24日に北海道の動物園「ノースサファリサッポロ」の運営会社サクセス観光に譲渡されていたのです。運営会社の登記簿を見ると、富士花鳥園の住所は支店として登録されていました。
(カメラマン)
「園内には動物とふれあう観光客の姿が見えます」
「ノースサファリ」は、札幌市南区の山あいにある民間の動物園。宅地や商業施設の開発が制限される市街化調整区域にあります。運営会社の「サクセス観光」は、必要な許可を得ずに建物を建て、都市計画法に違反した状態で20年近く営業を続けてきました。
(札幌市開発指導課 坪田 修一 課長)
「許可を得ないで建てていること自体が、建物が存在していること自体が違反」
札幌市によりますと、オープンする前の年の2004年に違法建築を確認。その後、2回にわたって指導しましたが。
(サクセス観光 星野 和生代表)
「ここでは、自然の中で至近距離で、動物の本当の姿を見てもらうのがコンセプト」
運営会社は市の指導に応じず、動物園をオープン。「日本一危険な動物園」と呼ばれ人気を集めてきました。それから約20年、無許可の建物は156棟まで増えています。
(サクセス観光 星野 和生 代表)
「営業許可を取って営業していれば、それほど問題ないのかなという認識が甘かったのが原因です」「うちは、ほんと申し訳ないなという気持ちと、市の要請に従ってやっていきますと。法令違反にないようにということを目指すだけなので」
運営会社の代表は反省を口にしましたが、その後も、法令違反が次から次へと明らかになります。道路法で禁じられている国道沿いの国有地への看板設置。キャンプ場の施設を河川敷に無断で建設。さらに、園内のグランピング施設が水道法に違反している疑いもあることが分かりました。なぜ、問題が相次ぐのか、これまでの札幌市の対応に批判の声もあります。
札幌市は、2004年から2024年までに、口頭や文書で17回も指導しました。しかし、動物園の規模は拡大する一方。なぜ、行政指導よりも強い措置を講じなかったのでしょうか。
(札幌市 秋元 克広 市長)
「基本的には、相手に是正の意向があるということで協議してきた」「そういった中で時間がかかってしまったが、途中で規模を拡大していく状況が見えた段階で、対応する余地があったのではないか」
さらに、市は、違法建築を把握していたにもかかわらず、動物園の営業に必要な届け出を受理。旅館業の営業許可や飲食店営業の許可も出しています。それぞれ市の別の部署が対応していました。これは、旅館業法に関する市と運営会社のやりとりが記された文書です。
サクセス観光 星野和生代表「早く許可を出せ」「行政手続法に基づいて遅延なく答える責務がおたくにはある」
グランピング施設の営業許可を急ぐ運営会社の代表が、市の担当者に詰め寄り、最後には許可されました。
(札幌市 秋元 克広 市長)
「何らかの違法の状況がありつつ、それらが(市役所内で)共有されることなく事業拡大をしてきたというところについては、しっかり反省をしなければならない」
そして2月18日。
(札幌市開発指導課 坪田 修一 課長)
「きょう、ノースサファリサッポ ロを運営しているサクセス観光 から撤去に関する計画書が提出 された」
撤去計画書には、2029年12月に作業完了と記載されていましたが、動物の取り扱いに関する具体的な記述は一切ありませんでした。市が建物の撤去を命じる「除却命令」を出せば、事実上の閉園となり、150種類以上の動物たちの譲渡が課題となります。しかし、受け入れ先を見つけるのは容易ではありません。「旭山動物園」の元園長で円山動物園の参与を務める小菅正夫さんは、動物の譲渡には高いハードルがあるといいます。
(円山動物園参与 小菅 正夫さん)
「動物を飼うに足る施設が、今、空いている施設があるかどうかがまず問題」「空いている獣舎はそれほどない」
また、細菌やウイルスが持ち込まれないように、動物の検疫もしなければならず、受け入れる側の負担も大きいといいます。
(円山動物園参与 小菅 正夫さん)
「少なくとも、円山動物園は絶対に受けられません。恐らく北海道の4つの動物園は、どこも受けられないと思います」「快適な場所を用意してほしい」「それは生き物を飼った責任だから、そこまでやらなきゃダメでしょうね」
受け入れ先が注目される中判明した「富士花鳥園」の「ノースサファリ」運営会社への譲渡。12日、記者が訪れてみると…。園内に入る門は閉ざれているものの、敷地内の駐車場には数台の車が駐車されていました。
「ノースサファリ」の動物たちの受け入れ先となるのか、スタッフと思われる人に聞いてみると、「特にコメントすることはない」と話し、それ以上の取材はできませんでした。また、施設の増改築の申請窓口である富士宮市都市計画課は、「現段階で富士花鳥園からの相談は把握はしていない」と話しました。
違反が続発し閉園に至った「ノースサファリサッポロ」支店となった「富士花鳥園」が動物の行き先になるのか、いまだ先行きは不透明です。