【特集】耐震リフォームに注目!「減築」で “防災&節約” !? 家屋の倒壊を防いで命を守る “最新リフォーム現場” を取材!(every.しずおか)
能登半島地震では多くの家屋が倒壊したことから、ますます関心が高まる“家屋の耐震問題”。そんな中、いま新たな耐震補強が注目されています。地震による家屋倒壊を防ぐ、耐震補強の今、注目のリフォーム現場を取材しました。
元日に発生した能登半島地震では、地震の大きな揺れで家屋が倒壊する被害が相次ぎ、それにより地震で亡くなった人の死因の多くが「圧死」でした。
これは、能登半島地震で大きな被害が出た地域の耐震化率が、輪島市で約45%、珠洲市で約51%と、全体の半数しか耐震化がされていなかったのも、被害を拡大させた要因の一つとみられます。
静岡県は以前から、地震に対する意識が高かったこともあり、耐震化率は89.3%と9割に迫りますが、能登半島地震をきっかけに、家屋倒壊の恐ろしさを目にし、改めて「家屋の耐震化」に関心が高まっています。
そんな中、いま建築業界で注目されているのが“耐震リフォーム”と呼ばれる、新しい方法による家屋の耐震補強です。
(平松建築 平松明展 社長)
「減築というのをやっています。上の建物の2階部分を全部取って平屋にする。上を取って軽くすることで耐震性も高めて、光熱費も下げる効果があったりもする。減築は今後、注目されてくると思う」
こちらの建物は、築37年の木造住宅。工事の過程で壁を取り払うと、中の骨組みがあらわになりました。ここで分かることとは…
(平松建築 平松明展 社長)
「筋交いの量が足りない。いまだと耐震パネルといって、表面にくぎで止めるタイプが多いんですけど、それに比べると壁がスカスカだという印象は受けるかもしれない」
1981年以前に使われていた「旧耐震基準」では、震度5強程度の地震を想定していましたが、1981年に施行された「新耐震基準」では、震度6強~7程度の揺れでも家屋が倒壊・崩壊しないことを基準としています。
これは、耐震の差を比較した実験の様子です。左側が「揺れに弱い」家屋で、右側が「揺れに強い」家屋の模型です。その違いは…
(県地震防災センター 深澤 良子 さん)
「弱い家は、筋交い(の数)が違います。強い家は筋交いがきちんとあり、左右対称に垂直壁が設置されている」
実際に模型を揺らしてみると…揺れに弱い模型は、1階部分が大きく揺れて倒壊してしまいました。
(県地震防災センター 深澤 良子 さん)
「1981年の6月に耐震基準が大きく変わった。耐震基準が変わる前に建てられた木造の家は、地震の大きな揺れに弱い可能性がある」
今回、耐震リフォームを行う家屋は「新耐震基準」で建てられていますが、それでも筋交いの量など耐震対策には大きな不安があるといいます。
この家屋で行われる耐震補強は、2階部分を取り壊し、建物を平屋にした上で骨組みの補強も行います。
家族が独立し、家主が一人で暮らすため、必要ない2階部分を取ってしまおうというのです。
(平松建築 平松明展 社長)
「建物が壊れる原因として“重さ”と“距離”の2つあります。たとえば(バールの)長さが2階建てとすると、力を入れて揺すろうとすると、手に力がかかって重たい。長さが半分になると動かすのが楽になります。その意味で2階の上の部分を全部取って短くして、さらに瓦を取って板金することで、かなり軽く強くしていく」
能登半島地震では、倒壊した2階建て家屋の多くで、1階がつぶれた家屋が目立ちました。そのため、重い2階部分を取ってしまい平屋にすることで、揺れに強くするのです。さらに、平屋にすることで、光熱費の節約などのメリットがあると言います。
(平松建築 平松明展 社長)
「建物を平屋にすることによって、利便性を高めることができる。利便性とは耐震性ですね、つぶれないようになる。省エネ性能が高くなる、使わない部分を暖めなくて済む。長持ちして地震にも強く、エネルギーもかからない暖かい家を造ろうと思うと、減築はすごく有効な手段になってくると思う」
静岡県の耐震化率は89.3%と、全国平均よりも2%程高くなっていますが、県では2025年度末までに、耐震化率を95%にすることを目標にしています。
(県地震防災センター 深澤 良子 さん)
「能登地震でも、家の下敷きになって亡くなられた方が多かったです。家族が長く過ごす家屋を丈夫に、揺れに強い状態にしていくことが必要になります」
(静岡第一テレビ every.しずおか 2024年2月27日放送)