「ブラバン遠征」に「修学旅行」学校をも襲う「物価高」子どもの・親の・先生の“苦悩” 北海道
部活動の遠征や修学旅行など、物価高騰の波は学校…教育現場をも飲み込んでいます。
ブラスバンドの強豪校の悩み、修学旅行を運営する学校の苦渋…
物価高にあえぐ実情を取材しました。
息のあった演奏を披露するのは、札幌の「新琴似北ブラスバンド」です。
メンバーは小学2年生から6年生までの44人。
2年連続で茨城県で開かれる東日本大会に出場します。
部長で6年生の多田優海さん。
後輩に教えながら練習を引っ張ります。
(部長 多田優海さん)「これまで練習してきた成果を発揮できるように、今までで一番いい演奏をしたいと思っています」
(コンサートマスター 中上由紀乃さん)「みんなで合わせてできるように、ほかの後輩たちを教えたりだとか、自分も難しいところとかを練習したりとかしています」
大会まで1か月を切り、練習は佳境を迎えていました。
演奏を見守るのは子どもたちの保護者です。
ある悩みを抱えていました。
(保護者)「いまのところ遠征費が1人10万円。2023年と変わらないんです。(去年)山梨に行った時は2泊3日ですけど、今回は1泊2日でも旅行会社からあがってきた金額自体は大差なくて」
2023年に初めて東日本大会に出場し、金賞を受賞した「新琴似北」。
2024年は日程を1日短縮しましたが、金額は変わらず、遠征費は実質の値上げです。
中でも大きな負担となっているのが…
(記者)「目の前で見ると大きいですね」
(保護者会会長 相原純代さん)「大きいです。幅が広くてトラックでないと運べない。全部持って海を越えて行かなければいけないので、そこが大変なところですね。(去年より)20万円多くかかってきたので、ちょっとびっくりしている」
ブラスバンドに欠かせない楽器の運送費が大幅にアップし、その負担が保護者に重くのしかかります。
ブラスバンドの楽器を運ぶ、石狩市の運送会社です。
(日栄運輸 佐藤貴美枝監査役)「これは4トントラックです。棚がうちの特徴で、どうしても楽器は積み重ねて積むわけにはいかないので、上が空いているので、こういうのどうだろうかと(棚を)考えて作り始めて、だいたいのところは積み残すことなく進めます」
この運送会社では2023年も子どもたちの楽器を山梨県の会場に届けましたが、値上げはやむを得ない状況だといいます。
(日栄運輸 佐藤貴美枝監査役)「当然燃料も違うし、去年と1リットルあたり10円くらい上がった。一番大きいのがドライバーにかかる人件費です」
人件費が1割ほどアップしたほか、フェリー代など主だった経費はすべて上がっているといいます。
(日栄運輸 佐藤貴美枝監査役)「すべてが連鎖する。何かだけが値上がりしているのではなくて、絶対的に少し変わっている」
物価高の影響に直面する小学生のブラスバンド。
子どもたち自身が楽器の手入れをするなど費用を抑える工夫はしていますが、ブラスバンドの活動に札幌市の補助がないのが現状です。
(指導者 三上充さん)「(大会の)開催にあたっての参加料などが価格転嫁で上がっているので、支払額は確かに昔より増えていると実感する」
札幌の中学校も物価高の波にさらされています。
その最たるものが、修学旅行です。
(札幌市立屯田中央中学校 吉本晋校長)「宿泊費・交通費が値上がりしていて、費用をできるだけ抑えられないかと苦労している。例年、学校の前からバスで送迎していたが、今年は各自が現地集合で間に合う時間だったので、バスを使うのをやめた」
2024年5月、3年生が2泊3日で秋田県へ行きました。
バス代を節約し、費用は2023年とほぼ同じ5万8200円。
学校ではほかにも費用の削減を図っています。
(札幌市立屯田中央中学校 吉本晋校長)「ことしは生徒手帳を廃止して、我々で身分証明書を作って発行したり、できる限り(家庭への負担を)抑えたいと、現場は悩むが、抑えることも限界がある…」
1冊およそ300円の生徒手帳を廃止し、家庭の負担を減らす努力をしています。
一方、修学旅行を受け入れる宿泊施設も苦悩しているといいます。
(全旅連 亀岡勇紀専務理事)「修学旅行は2年前に価格を契約するので、物価が上がっても値段を上げることは難しい状況。利益だけを考えると、修学旅行の受け入れを断った方がいいという声も全国から届いている」
「新琴似北ブラスバンド」です。
東日本大会を前に壮行演奏会を開催し、子どもたちが日頃の練習の成果を披露しました。
保護者会では遠征費の負担を減らそうといま、クラウドファンディングで支援を呼びかけています。
(保護者会会長 相原純代さん)「クラウドファンディングでお願いして支援していただいたり、地域の皆さんにお願いして協賛金・支援金をいただいている。子どもたちが頑張っている活動を支援したいという思いがある」
物価高騰の影響が広がるなか、子どもの活動を支える場も試行錯誤が続いています。