“日本一のそばガール”に密着 新そばの季節に奮闘!若い力で過疎のマチを盛り上げる 北海道
高校時代にそば打ち日本一に輝き、青春を過ごしたマチ・幌加内のために、全道を走り回る女性がいます。
そばの生産量日本一ながら過疎化に悩む第二のふるさとを、若い感性で盛り上げようという25歳の奮闘記。
活動のなかで見出したキーワードは「循環」です。
高校時代を過ごしたマチは「日本一のそばどころ」。
その幌加内町のために奮闘!
“日本一のそばガール”に密着!
石川朋佳さん25歳。
札幌市内の書店で開かれたイベントで、石川さんはひときわ明るく、調理から接客そしてトークショーまで!
幌加内のそばの魅力を伝えます。
(石川朋佳さん)「“ただのそば茶”“ただのそば”“ただの生産者”だと世の中埋もれる。何かあったら百円高くても幌加内のそばを食べてもらうためには、物語があれば違うかなという思いがあったので」
(道外から来た人)「ストーリーを聞いてからだとおいしさが増しますね」
(札幌市民)「幌加内の魅力を伝えるために走り回っているような方だと思ったので、応援したいなと思います」
石川さんの思いはただ一つ。
「日本一のそばの産地・幌加内町の魅力を伝えたい」
25歳の若い感性が注目したのは、そばそのもの…だけではありません。
そばの甘皮を焙煎してお茶を開発してみたりー
この服は、そば殻を使って染めあげたもの。
独特の風合いが人気ですが、開発のきっかけはー
(石川朋佳さん)「きっかけは、すごくお世話になっているそば農家さんが幌加内にいて、その方がもったいないからどうにかならないかって」
この人こそが石川さんの「師匠」。
幌加内町のそば農家・坂本勝之さん82歳です。
出会いは石川さんの高校時代です。
日本で唯一「そば打ちの授業」がある幌加内高校。
この映像は、石川さんが3年生の時に、そば打ちの全国大会で日本一に輝いたときのものです。
(石川朋佳さん)「食べてくれる人のことを思いながら打って、美味しいって言葉をもらえるのが一番うれしい」
坂本さんはそば打ちの授業の講師だったのです。
(坂本勝之さん)「幌加内はどんどん過疎になってきているが、資源がたくさん豊富にあると思っている。その資源をどのように活用できるか。これからの社会ってのは若い力・センスを得ながらやっていかないと生き抜いていけない時代になってきている」
石川さんが目をつけた「資源」。
それは年間2トン以上を廃棄するだけという「そば殻」です。
そのそば殻を煮出して生地を丁寧に染めるー
ただ廃棄していたそば殻が、貴重な染物の原料となるのです。
この日、師匠の坂本さんに見せたかった試作品があります。
(坂本勝之さん)「これは何?」
(石川朋佳さん)「そば殻で染めたエプロン。これから発売しようと思って」
(坂本勝之さん)「色がいい。幌加内のにおい」
(石川朋佳さん)「これでそば打ち、似合います!」
(坂本勝之さん)「こうやって取り組んでくれたことはものすごい自慢です。これが産業になるような流れになってほしい」
寝ても覚めても「そばから出る資源の活用」を模索する日々です。
(石川朋佳さん)「(捨ててしまう)そばを固めたもので、硬いんですよね。そばと小麦、二八(そば)の建材。家のタイルになるとか、いずれ建築の材料としても使えるかもしれない。そばハウスができるんじゃないかなと妄想中です」
そばの甘皮をつかったお茶の開発も、日々ブラッシュアップ。
(石川朋佳さん)「資源の循環は人の循環でもあり、お金の循環でもあるなって当たり前のことに最近気づいて」
高校時代の3年間だけ住んだ幌加内町。
過疎が進むマチのために25歳が走り回る、その原動力はなんなのかー
(石川朋佳さん)「中学校の修学旅行で農業体験に目覚めて、その農家と文通し続けた。いったん札幌近郊の普通科の高校に進学するんですけど、どうしても合わなくて。全道の寮の農業科の高校を探して、一番自分に合ってそうだと幌加内を選んだ」
(記者)「なんでそんなに幌加内のために頑張るんですか?」
(石川朋佳さん)「自分がつらかった時に支えてくれたマチっていうのが一番大きいですね。そこには坂本さんという人がいて、その3年間があったからこそ次に踏み出せたので。生まれも育ちも幌加内ではないですけど、このマチがあったから次の人生を歩める」
9月。幌加内町も待望の収穫のシーズンです。
秋の一大イベント「そば祭り」。
石川さんもこの日を楽しみにしていました。
(幌加内のそば打ち仲間)「私はね、素晴らしいことだと思う。幌加内を盛り上げているからね」
(石川朋佳さん)「ありがとうございます。絵に描いたようなことを言ってくださって」
(幌加内のそば打ち仲間)「本当にそう思うから」
石川さんの「師匠」坂本さんも、来場客にふるまう新そばの準備に大忙し。
そこにー
(石川朋佳さん)「(エプロン)持ってきました。これは坂本さんにプレゼントです」
(坂本勝之さん)「いやー、緊張するね」
そば殻で染めたエプロンをまとい、坂本さんがそばを打ちます。
(石川朋佳さん)「すごい綺麗です。手でやったと思えない」
幌加内の新そばに来場客は舌鼓!
石川さんの思いのこもったあのエプロンも、来場客の手に届きます。
(石川朋佳さん)「これを煮出して原料にして浸して、ひたすらもんで色をつける草木染めの製法です」
(そば殻染めを購入した人)「マチのために何かしようとか、無駄なものをどうにかしようとかっていうことを若い人が考えているということが、未来の北海道をつくるんだろうなと思っているので頑張ってほしい」
石川さんの視線は“そば日本一・幌加内”のずっと先の未来を見据えています。
(石川朋佳さん)「小さいそば殻で小さい原料となって、それが1個のエプロンになるのも循環じゃないですか。その小さな積み重ねをすることが今私にできることだなと思うので、それが派生して広がっていけばいいな、それが大きいお金を生むことにもつながってくるんじゃないのかな」
キーワードは「循環」。
資源だけではなく、人も経済も循環させる。
幌加内が日本一のそばの町であり続けるために、人呼んで“そばガール”の歩みは続いていきます。