【特集】新しいホールオルガニストが就任 伝えたい…パイプオルガンの魅力
1987年、日本で14番目に設置されたパイプオルガンが、松本市の音楽文化ホールにあります。
今年4月に、新しいホールオルガニストが就任、オルガンの魅力を地域に伝えています。
トッカータとフーガニ短調
ホールに響き渡るパイプオルガンの豊かな音色。
オルガニスト山田由希子さん。今年4月、松本市音楽文化ホールの「ホールオルガニスト」に就任しました。
「手がすっごく大きいです私。それが強みなんです」
「ホールオルガニスト」とは、コンサートでの演奏だけでなくレッスンの講師やメンテナンスに至るまで、管理業務全般を担うオルガン奏者です。
東京に暮らす山田さんは、月に2回程度、松本に通い、地元在住のオルガニスト、小林淳子さんと2人で、パイプオルガンを守っています。
ホールのシンボルとして37年間愛されているパイプオルガンは高さ10メートル以上の迫力。
パイプは長さ1センチから6メートルほどのものまで実に3121本あります。
パイプに風を送ることで音が出ますが、パイプ一本から出る音色は一つだけです。
山田さん
「プリンシパルって基本のってことなので、オルガンの基本的な音が出ます。8ってのがパイプの長さ、フィートなんですよ。この8フィートの長さのパイプ、その音域がピアノと全く同じ」
中には、ほかの楽器に似た音を出すパイプも…。
山田さん
「この前にでているスパニッシュトランペットっていうこの音出して見ますね。派手な感じ。ここから突き出しているような音。これは特徴的な感じ。これ一個入れるとすごく華やかになる。ガンバだけ弾くと、組み合わせると・・・ちょっと妖艶なね」
オルガン1台で、オーケストラのような多彩な音色を奏でられるのが魅力です。
山田さん
「持ち運びができる楽器ではないので、大オルガンに限っていうと箱全体を含めて楽器だと思っているんです、私たちは」
山田さんは前任者からの強い希望で去年からオルガン事業に携わり、今回の就任に繋がりました
館長補佐 安江さん
「昨年からのオルガン事業の一部に携わっていただく中で、大変評判がよかったんですね。当ホールで演奏されたときも大評判でしたし、国内外での経験があってそういった経験をオルガン事業に存分に生かしていただける方ではないかなと思いまして、就任をお願いしました」
5月。
就任記念のソロコンサート。
演奏したのは、「このホールのオルガンに合う」と、山田さんが選んだ12曲でした。
バッハを中心に、ヨーロッパで生まれた曲の数々。
両手足を駆使して、全身で演奏します。
山田さんステージ挨拶
「本当のこといますと、ホールとホテルと駅の往復ばかりで散策できていなくて、魅力などわからないところばかりなんですけど/これから松本の色んな場所が私の音楽の糧になって、演奏を助けてくれるんじゃないかと思っています/どうかこれからよろしくお願いいたします」
舞台袖山田さんとスタッフ
「ありがとう。みなちゃんいなかったらできない。ありがとうね、本当に」「疲れたでしょ」
「あそこ(途中)でカントリーマアムの栄養補給がなかったら弾けなかった」
観客
「とてもダイナミックで、迫力があって、感動です」
「自分の中からお話していて、人柄と音の響きが合わさってて素敵だなと思って、ファンになっちゃいました」
東京芸術大学でオルガンを学んだ山田さんは、大学院修了後の8年間、オランダやドイツに留学、世界各地で経験を積みました。
ヨーロッパでは、教会で古くから使われているオルガンは身近な存在です。
山田さん
「その町のオルガンが、どれだけ歴史的な価値があってどれだけ素晴らしいか、小さいお子さんからお年寄りまで知ってるんですよ。しかもそれをものすごく誇りに思ってる。町の人たちが。当然日本はそういう歴史はないんですけど、 逆に歴史のなさは音楽的にオルガンというものが楽器の一環ピアノやバイオリン、パイプオルガンという楽器の一つとして根付いていくチャンスなのではないかという風にプラスに考えるようにしていて・・・」
パイプオルガンが地域で身近な存在になることを願う、山田さん。
この日はホールでレッスンです。
山田先生と受講生
「ここはどういうイメージですか?」
「ここは柔らかい音・・・」
「明確に作って見ましょうか」
「フルートに合わせるようにすると綺麗ですね」
レッスンは、オルガンを楽しんでもらおうと、毎年、ホールが受講者を募って行っています。
山田先生と受講生
「いい!このくらい動いた方がかっこいい」
「全然違う曲になった」
多くの人にオルガンに触れてもらい、魅力を感じてほしいと話す山田さん。
受講生インタビュー
「曲が、レッスンを受けていると生き生きとしてきます。弾くことがどんどん楽しくなってきます。人間じゃない。千手観音みたいにたくさんの鍵盤を引きこなしてらっしゃって、素晴らしいです。違う土地からいらして、文化をかき回す方というか。山田先生にぐるぐるってかき回していただきたいです」
来年1月には、ジャズ・サクソフォーンとのデュオ公演も予定。
オルガンがさらに地域に溶け込んでいくよう、演奏などを通じて魅力を伝え続けます。
山田さん
「このオルガンでどういったものを聞きたいとか、こういう音楽が流れてくれたら楽しいだろうなって希望をいただけるのであれば、その機会を伺ってやってみたいな。できるだけ市民の皆さんに音楽で還元できるようなことができれば。空気の圧とか、演奏者の熱気とかもそうですけど、ぜひ生で聞ける機会があれば足を運んでいただければなと思います」