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【特集】「全日本農はだてのつどい」に密着 農作業始めの伝統行事 岩手・奥州市

2024年2月15日 18:48
【特集】「全日本農はだてのつどい」に密着 農作業始めの伝統行事 岩手・奥州市

 特集です。かつて正月の農作業の始めに行われた伝統行事「農はだて」。農耕文化を見つめ直そうと岩手県奥州市では「全日本農はだてのつどい」として、大人から子供まで参加する行事になっています。その1日に密着しました。

 2月10日、奥州市胆沢で開催された、『全日本 農はだてのつどい』。今年で、35回を数えます。

千田さん「"農はだて"とは、新年初めての農作業を始める日に行われた伝統行事ですが、1年の豊作と農作業の安全、これを祈って"農はだて"を再興し、伝統文化の素晴らしさを感じていただけるイベントとしております」

 かつて行われていた年中行事、"農はだて"。伝統を今に伝えるイベント、『農はだてのつどい』にカメラが密着しました。

午後4時。ステージの周りに、人々が 集まります。『農はだてのつどい』最初のイベント、「縄ないチャンピオン決定戦」が、始まります。参加するのは、地元の小学5年生と6年生。制限時間内でどこまで長く作れるか!が勝負のルールです。

個人戦で優勝したのは、6年生の小野寺 心春(おのでらこはる)さんです。

小野寺さん「学校で頑張って練習したので、できました。」

お父さんに、優勝の 報告です。

父「おめでとう。まさか優勝すると思ってなかったんで、ビックリしました。」

 個人戦 3位は、5年生の阿部 綺乃(あべきの)さん。おじいさんも、喜びを 隠せません。

祖父「力強く感じました。こんなこと やってるんだっていうかできるんだっていうのが、チョット見えて、すげぇ良かったですね。」

午後5時。会場が 夕闇に包まれる頃、「かがり火」が 点火されます。

幻想的な雰囲気の中、「郷土芸能」が 披露されます。

地元、「行山流 都鳥鹿踊(ぎょうざんりゅう とどり ししおどり)」の、勇壮な舞い。観客の中に、鹿踊を 熱心に見つめる、幼い兄弟の姿がありました。名残惜しそうに 鹿踊を見送る2人は、家で 鹿踊を 練習しているのだとか。

兄「鹿踊の… 踊りたいです。」

踊り終えた 鹿踊の皆さんを カメラに収めているのはアルゼンチン出身で パリ在住の写真家、「マティアス・コラル」さん。鹿踊を観るために、日本に やって来ました。

翻訳「今まで、ヨーロッパの伝統的な風習とかを記録しているので日本でも同じような伝統芸能を記録して、世界的な共通項を探りたい。(初めて鹿踊を観て)リズムや太鼓の音、全てのパフォーマンスに魅了された。明日は(一関市の)"舞川鹿子躍"を撮りに行く。」

 日本の伝統芸能に魅了された コラルさん。"農はだて"にも、伝統的な行事があります。稲に見立てた 稲わらを、特設の雪原に植える「庭田植(にわたうえ)」豊作を祈願して行う行事です。今年は暖冬の影響で 雪が少なく、規模を縮小しての 開催でした。

参加者「結構疲れますけども(笑)昔から豊作を祈ってやってた事なので、続けていけたらいいなと思いますけどね、伝統的な事ですから。」

ミズキの枝に、色とりどりの団子を飾る「みずき団子」。五穀豊穣を祈る、小正月行事も 行われました。『農はだてのつどい』に集まる皆さんの、楽しみの ひとつです。

祖母「慌てて来たんです。(笑)家から。"あ、今日 お祭りだ"って。コロナでできなかった時もあったので、このようにできるって事は、幸せな事ですね。」孫「ダンスとかあってね~ すごいね、楽しい。」

「みずき団子」が飾られて、会場内は 賑やかさを増してきました。

会場を、ぐるりと囲む 輪踊り。厄年連(やくどしれん)の皆さんによる「つがい踊り」です。25歳、33歳、42歳、49歳の 厄年連が、参加しました。

踊り手と 観客が 一体となった「つがい踊り」が終わったら、厄年連による「福餅(ふくもち)まき」が 始まります。

初参加となった 25歳厄年連の代表も、感謝の気持ちを込め、福餅をまきました。

亀井さん「小学生の頃から"縄ない"の大会に出たりとか、見に行ったりとかずっとしてたので、ここまで続いてくれてすごい良かったなとは思ってます。今後も、この胆沢の町を活性化できるような祭りになっていってくれたらいいなと思います。」

『農はだてのつどい』も、いよいよ フィナーレ。冬の夜空を彩る、花火。

 消えかけていた、農業にまつわる 伝統行事。豊作や 安全を祈る伝統文化は、胆沢の地に脈々と 受け継がれています。

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