特集「バス路線大幅減」どうする?地域の足 岩手
特集です。岩手県内のバス会社が、この春「減便」や「路線の廃止」など大規模なダイヤ改正に踏み切りました。背景にあるのは、「運転士不足」と「2024年問題」です。地域の足をいかに守っていくのか取材しました。
宇佐美准教授
「このままいくと地域の移動の足が全くなくなるっていうのは、十分に考えられる。かなり危機的状況だと思います」
バス利用者
「不便なんですよ、本当に」「(実家に帰る際)バスがもう無くなっていてちょっと困る」
全国各地で相次いでいる、路線バスの廃止や減便。背景にあるのは、「運転士不足」です。路線バスに代わる、地域独自のコミュニティーバス。
生徒「すごく感謝している」
自動運転バスの導入。さらに乗り合いタクシーなど、県内や全国で打開策を模索する取り組みが進められています。
記者リポート
「盛岡駅前のバスターミナルです。岩手県交通は、先月、ダイヤ改正を行い、盛岡地区では、平日は、全体の1割以上が減便となりました」
岩手県交通は、4月1日のダイヤ改正で県内全域の路線バスの運行本数を、平日で以前より294本、11.9%減らしました。盛岡地区でも平日は238本、13.5%の減便となりました。
県交通として過去最大規模という減便。(記録が残る2012年以降)最大の理由は、深刻な「運転士不足」です。背景にあるのは、低い賃金や長い労働時間といった待遇の問題。さらに4月から始まった運転手の時間外労働の規制強化、いわゆる「2024年問題」が拍車をかけています。
働き方改革の一環として、運転士の1日の拘束時間の上限が、これまでより1時間短くなりました。退社から翌日の出勤までのインターバルも長くなり、路線を維持するには、より多くの運転士が必要になりました。
岩手県交通 乗合自動車部 浦部和之部長
「沿岸地区は(運転士の)」充足が良いが、盛岡地区は、依然厳しいということで沿岸地区から盛岡地区に応援をしてなんとかダイヤを毎日回している」
県交通では大型2種免許の取得費用を全額負担する支援を行っていますが、十分な人員は確保できていません。
住民の足をどう守っていくのか。地域交通に詳しい岩手県立大学の宇佐美准教授は、路線バスに頼らない積極的な取組みが必要だと指摘します。
岩手県立大学総合政策学部 宇佐美誠史准教授
「まだ比較的大量に人を運べる地域は、事業者の路線バスでやっていくとか。そこには至らないけど、ある程度(利用したい)人がいそうなところには、自治体がコミュニティーバスを運営するとか。もっと利用者が少ないようなところには、地域の人たちで移動の足を確保していくとか。場所場所にあった交通をみんなで作っていくことが大事」
奥州市では、県交通の「水沢金ケ崎線」が3月で廃止となりました。そこで市では、廃止翌日の4月1日からコミュニティ-バスの活用をスタートさせました。
バスで金ケ崎高校へ通学 佐々木佳乃さん(3年)
「すごく安心した。いつか廃線になるだろうと不安だったけれど、すごく感謝している」
運行は市内の民間企業が行い、平日限定ですが、経路・運賃ともこれまで通り。赤字部分は市が補填します。運行期間は2年間を目途とし、その後、市が行っているほかのコミュニティバスの経路変更などで対応する予定です。
奥州市役所 公共交通対策室 高橋公美副主幹
「人口減少とか車社会になっているので、現状として利用者は減っているが、市民の皆さんが日常的に公共交通を利用することが、(路線を)守ることだという意識を持っていいただけるように市としては働きかけていきたい」
地域の足を守る取り組みは、全国で行われています。神奈川県横浜市では、去年11月からことし3月まで民間の会社に委託して「乗合タクシー」の実証実験を行いました。乗務員に降車したい停留所の番号を伝える仕組みで事前の予約は必要ありません。運賃も安く、路線バス感覚で利用でき、利用者からは好評でした。
また、石川県小松市では、新たな取り組みとして、3月に自動運転バスを導入。運転席の後ろの画面に映る3Dの地図上に、周囲の歩行者や他の車両の情報が表示され、センサーで周辺の状況を確認しながら走行します。15人が乗車可能で、当面は運転手が監視しながらの運行ですが、来年度以降に無人化を目指しているということです。
宇佐美准教授
「いかに自分たちの地域のことを見つめ直して、地域にふさわしい移動手段を地域で考えていくことが求められている」
実情に合わせた地域の足の確保は、住民の生活に直結するだけに早急な対応が必要です。
なお、県交通のバスの運転士は県内全体でおよそ400人いて平均年齢は「56.9歳」と高齢化が進んでいます。一方、バスの利用者はこの10年で3分の2に減っています。(昨年度のべおよそ1300万人)
また、宇佐美准教授によりますと、映像で紹介した自動運転バスは、運転士不足の解消と交通事故の減少に期待ができるということです。