住民たちの集団移転が予定されている戸沢村蔵岡地区で恒例の「紙風船まつり」が行われました。例年、思いや願いを紙風船に込めて夜空に飛ばしていましたが、ことしは大雨被害の影響でランタンを飛ばす形に変更し開催にこぎつけました。住民たちの祭りに込めた思いを取材しました。

再会した住民「どうもお久しぶり。歩いてきた。向かい風がすごい。帰りは楽」

2月22日、戸沢村蔵岡地区の公民館に10人の地区住民が集まりました。

「ここは全員仮設住宅で顔を合わせている。（仮設で会うのと蔵岡で会うのは違う？）全然違う。懐かしい」

住民たちは地区のイベントなどを主催する「蔵岡ふるさと塾」のメンバーです。開催まで1週間に迫った地区の恒例イベント「蔵岡紙風船まつり」の準備のために集まりました。

「蔵岡紙風船まつり」は住民たちが思いや願いを絵やメッセージにして書き込んだ巨大な紙風船を夜空に飛ばすイベントです。19年前の2006年に始まり、地区住民にとっても1年の楽しみとなっていました。

会議「みなさまおばんです。いよいよ来週に迫ってまいりました。今回は紙風船は上げるということはないのですけど第20回記念大会なので有志でこじんまりと上げましょうと」

蔵岡地区は去年7月、地区の69世帯すべてが大雨被害を受け、住民たちは仮設住宅などそれぞれの場所での生活を余儀なくされています。そのため、ことしはこれまで祭りの前に住民たちが連日公民館に集まって作っていた紙風船の制作ができなくなり、祭りの存続も危ぶまれました。

しかし、祭りにかける住民たちの強い思いでことしは規模を縮小する形で開催にこぎつけました。

蔵岡ふるさと塾横山雅生塾長「第20回の紙風船まつりは花火とスカイランタンだけになってしまいますけどこれを糧に復興に頑張っていきたい」

紙風船の代わりにスカイランタンを100基打ち上げることにしました。

芦原光喜さん「（来週楽しみですか？）んだね。童心に帰っちゃう。1週間に1回仮設住宅から蔵岡に戻ってきてるけどやっぱり戻ってきても仲間と会えないからね。仲間と会えることはいいことだね」

蔵岡ふるさと塾　鈴木博也さん「秋とか収穫祭とかいろいろあるけど、冬が何もないということで何かしたいということで紙風船まつりが始まった。継続していくのがうちらの使命。いくらでもつなげていければと思っている」

蔵岡ふるさと塾中嶋春実さん「（無事飛ばせるといいですね）楽しみだね。見に来てください」

1日、迎えた本番当日。蔵岡地区には澄んだ青空が広がっていました。

蔵岡ふるさと塾横山雅生塾長「なんとかなりそうです。風もそんなにないのできょうは絶好の花火・スカイランタン日和です。子どもたちも来ると思うのでなんとか成功させたい」

夕方になると、蔵岡地区から離れて避難生活を余儀なくされている住民たちも各地から集まり、久しぶりの再会を喜びました。

「安産おめでとうございます」「おめでとうよく来てくれたな」

そして、住民たちはそれぞれの願いを書き入れていきました。

村営住宅で暮らす柳田まゆみさん「ことしはより良い1年になりますように」「去年は災害もあったのでことしは子どもたちもすくすく育っていくように全部含めてより良い1年になるといいな」

長女・栞那さん「家族が健康で過ごせますように」「もうひとりの妹が生まれた」「家族が増えたからもっと手伝いとかがんばろうと思う」

仮設住宅で暮らす佐藤一春さん「集団移転の話が持ち上がっているなんとかこれを実現して安心して暮らせるようになりたいそういう願いを込めて書いた」

辺りも暗くなった午後6時。住民たちは冬の夜空が広がる会場に。

蔵岡ふるさと塾横山雅生塾長「花火とスカイランタン夜空を見上げて皆様が笑顔になれるようにがんばりたいと思います」

祭りは冬の花火とともに開幕。住民たちはスカイランタンに火を灯し、次々に夜空へと浮かべていきました。

「せえの」「きれいだよ、最高」「いった いった いった」「残り少ない人生幸せに生きられますように」「いけ いけ！」「よかった よかった」
「きれいだね やっぱり」「うん いいね」

柳田雅志さん「やっぱりいいものだからすごく来年もまたやりたい」
柳田まゆみさん「蔵岡のみんなでずっとこうやって仲良くやっていきたい」「来年はこの子も一緒に楽しく見れたらいいですね」
蔵岡ふるさと塾横山雅生塾長「大成功です」「こんなにきれいに上がるとは」「みんなの笑顔が見られて本当によかった」「来年はなんとか頑張って紙風船1基でも上げられたらいい」

集団移転へ向かう蔵岡地区。安全な暮らしを求める住民たちの願いが、蔵岡の冬の空を照らしました。