「月山の粉雪」 鶴岡市の耕作放棄地を小麦畑に再生 収穫後も「麦わら」を活用
鶴岡市で農家が耕作放棄地を小麦畑に再生させました。再生した土地で地域の農業と経済を持続的に高めようとする取り組みを取材しました。
今年6月、月山の麓、鶴岡市羽黒町の月山高原畑作団地で小麦の収穫が行われました。
2019年の秋に地元の農家が種をまき始め、ことし4年目の収穫を迎えました。
月山高原農地委員会 斉藤一志副会長「40ヘクタールほどできているので少なくとも80トンから100トンくらいの収量を見込んでいる」
栽培しているのは雪や寒さに強い小麦の品種「ゆきちから」です。秋にまかれた種は雪深いこの場所で雪の重さを耐え忍び、春に実ります。
小麦を栽培している月山高原農地委員会を創設したひとり齋藤力会長です。
小麦栽培をはじめたきっかけは農家の高齢化と土壌の水はけの悪さによる耕作放棄地が広がり続けることを防ぐためでした。
月山高原農地委員会 斎藤力会長「当初は畑団地として非常にきれいだったものが徐々に荒れていって半分以上、それ以上かもしれないが草ぼうぼうの畑になってしまった。仲間と相談しながら大面積ができる。そして一気に耕作放棄地を解消するために何がいいかということで」
委員会は当時、この土地で耕作する人に今後も農業を続ける意志があるかを調査しました。その結果に基づいてシミュレーションしたところ、5年後の2024年には総面積およそ90ヘクタールのうち実に3分の1が耕作放棄地になることが分かったのです。
月山高原農地委員会事務局 岡部勝彦局長「耕作放棄地となる条件は高齢化もあるが、農地ほ場の生産性が著しく悪くなっていることが根本にある。生産者が増えてもそれを解消しない限りは結果的に耕作放棄地は解消しない」
耕作放棄地が広がるとクマやイノシシなどの侵入や害虫が発生する要因となります。土地を蘇らせて農業を継続できる環境を整えるため自分たちの力で土地の改良や基盤整備工事を行いました。そして、5年かけて高原におよそ40ヘクタールの小麦畑を広げることができたのです。畑は春には青々と色づき、初夏には黄金色に輝きます。
さらに収穫後の夏には毎年、委員会が種をまいている100万本のヒマワリが咲き誇ります。季節によって様々な景色を楽しめる高原は去年、県経済同友会の「やまがた景観賞奨励賞」を受賞しました。自分たちが作った景色を守るためにいま力を入れているのが小麦の販路拡大です。
月山高原農地委員会事務局 岡部勝彦局長「まだまだ耕作放棄地になりそうな土地はあるので継続して農地を再生できるような形、そのためには消費は大切なので促進しながら継続できる農地を進めていきたい」
去年から小麦粉を「月山の粉雪」というブランド名で販売を始めました。
石臼で挽くのが特徴のこの小麦粉はパンづくりに相性が良く、市内外の飲食店で使われています。
エルサン 宮田 淳シェフパティシエ「月山の粉雪は全粒粉だが嫌な雑味というか雑穀臭くなさすぎないところがすごくいいなと思い使った。香りもいいし、生地を寝かせることで甘みがでるのが特徴」
鶴岡市の結婚式場グランドエル・サンでは7月からレストランで「月山の粉雪」を使ったパンを販売し、披露宴でも提供しています。
小麦の活用はほかにも。月山高原農地委員会はことし小麦粉からそうめんを作り、販売を始めたほか、小麦の収穫後に残る麦わらの活用方法を模索しています。
業者とのやり取り「稲わらとの違いもあるんでしょうね」「全然違います。バリバリしている」
庄内町で家畜のエサなどでわらを扱っている企業と舟形町でマッシュルームを栽培している企業に試験的に麦わらの提供を始めました。
合同会社 わらっと小野 貴弘代表】「舟形マッシュルームから一般的に稲わらではなく麦わらの方がいいというオーダーがあり一部、ウシやヒツジが食べるかの試験も重ねて上手くいけば両輪で有効活用していこうかと考えている」
これまでただ土に返していた麦わらを家畜のえさやマッシュルームを栽培する菌床として活用できるかを試し地域の農業と経済の持続性を高めることを目指しています。
舟形マッシュルーム 長澤大輔社長】「舟形マッシュルームでは主原料になっている麦わらを年間4000トンくらい使っているがほとんどが競馬のトレーニングセンターだったり海外産の割合が多くてこれから長期的に見たときに県産の原料を使うことで陸送距離が縮まることでよりCO2の削減とか事業の持続性を高めることが出来るのではないかということで取り組んだ事業」
耕作放棄地から再生した土地にはいくつもの可能性が広がっています。
月山高原農地委員会 斎藤力会長「まだまだ手つかずの農地があるわけですし販売の方にも力を入れながら面積の拡大、当初、失敗したことを学んでずっと綺麗な畑にしたいと思うしぜひ見に来てもらえたらうれしい」
月山高原畑作団地での挑戦はこれからも続きます。