一年中緑に輝く“伝統の国立のピッチ”
節目の100回大会の全国高校サッカー選手権大会。いよいよ成人の日の決勝で日本一が決まります。3937校が参加した今大会ですが、国立競技場での決勝のピッチに立つことが許されるのは2チームのみです。今回は、その国立の「芝」について、私、日本テレビアナウンサー田中毅が取材しました。
そもそも冬でも緑に輝く芝は今でこそ当たり前の光景ですが、以前はそうではありませんでした。昭和の時代、日本の「夏芝」は冬になると枯れてしまい、イレギュラーする茶色い芝の上でプレーをするのが当たり前だったそうです。
1981年に来日したイングランドのリバプールが試合前日に国立で練習をした時、コーチが「ところで、明日の試合会場はどこにあるんですか?」と冗談なのか本気なのか、スタッフに聞いてきたと言うエピソードもあります。
どうしても冬になると枯れてしまう日本の「夏芝」。しかし平成元年、芝が枯れた秋の国立に「冬芝」と言う種類の種をまき、「オーバーシーディング」と言う二毛作をすることによって初めて一年中、緑に輝くピッチを実現しました。なんでも日本と気候が似ている、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのグリーンを参考にしたそうです。以降、この国立から常緑のピッチが日本全国へと広がっていきました。
“美しい緑のピッチ”へのこだわりと伝統は、新しくなった国立競技場にも引き継がれています。芝の生育環境を整えるために「地温コントロールシステム」を導入。冬は地中で温水を循環させることにより、ピッチ表面までの温度を安定させます。さらにピッチには24個のスプリンクラーが埋め込まれ、散水も均一に行われるようになりました。
国立の芝を管理するグラウンドキーパーの方々に話を伺うと、決勝に向けた芝は夏芝をベースにしつつ、冬芝とのハイブリッド。長さは24ミリ。プレーの質の向上を目指して、長さだけではなく、芝の“密集具合”まで計算したそうです。巡目と逆目に芝を綺麗に刈り込んで遠近感と立体感を意識、見た目の美しさにもこだわりました。
「一年中、緑の芝を実現したのは国立競技場が最初。新しい国立になってからも、美しい芝の伝統は引き継いでいる。皆さんが憧れる場所であり続けたい」とグラウンドキーパーの皆さんは話します。
いよいよ行われる決勝戦。国立の芝の上で栄冠に輝くのは、熊本県の大津高校か、あるいは青森県の青森山田高校でしょうか。