パリ五輪LGBTQ公表アスリートは過去最多の198人 「ロス五輪は史上最も“ゲイ”な五輪になる」米専門メディア
■過去最多のLGBTQ公表アスリートが参加 米バスケ女子代表では“過半数”
──東京大会を超えて過去最多、要因は?
アスリートとして、よりカムアウトしやすくなったことの表れではないかと思っています。今大会では女子ソフトボールが競技から外れなければ、また当事者が複数いる女子サッカーのスウェーデン代表が出場を逃していなければ人数はさらに増えたでしょう。会期中にもリストへの掲載を希望する選手が相次いだため、当初は147人だったリストに51人を加えることになりました。
──公表しているアスリートは“男性”に比べ“女性”が圧倒的に多いようですが。
これはここ数回の五輪に一貫して見られる傾向です。LGBTQアスリートの“男女比”は、東京五輪でもリオ五輪でも変わらずおよそ1:8または1:9です。
一般的に、女性アスリートの方が男性アスリートよりもカムアウトしやすい状況があるようです。女性アスリートはカムアウトしてもさほど注目されないので、抵抗感が少ないのではと私は考えています。かたや、男性アスリートがカムアウトすれば、本人にとっては不本意なことに、多くのメディアに取り上げられてしまいます。カムアウトする男性アスリートが少ないゆえに、より注目されてしまうのです。
たとえば、アメリカの男子バスケットボールのプロリーグであるNBAの選手がカムアウトすれば、WNBA(女子バスケットボールのプロリーグ)の選手のカムアウトより多くの注目を集めるでしょう。LGBTQを公表しているWNBA選手は大勢いますからね。今大会では、バスケットボール女子のアメリカ代表の過半数がLGBTQだったことを見ても、女性選手にとってよりカムアウトしやすい状況であることがわかります。
女性アスリートはカムアウトしても、「男らしくない」「とんでもない」などと思われることはさほどありません。このように、女性より男性の方がカムアウトしづらい理由は社会的なものや文化的なものなどさまざまで、数多くあります。
この傾向は今後変わっていくことを願っています。今回の五輪に出場したLGBTQを公表する“男性”アスリートの数は過去最多でした。その点は評価したいと思います。
──性的マイノリティー選手の観点から今大会で注目したことは?
メダルを獲得した選手が史上最多となったことでしょうね。合計で65人のLGBTQ公表選手がメダルを獲得しました。毎日のようにLGBTQ選手たちが色とりどりのメダルを獲得する様子を見てとても楽しかったです。
■出身国では同性愛が違法とされる選手が難民選手団で銅メダルを獲得
──注目した当事者アスリートは誰ですか。
難民選手団で初めてメダルを獲得したボクシング女子のシンディ ウィナー・ジャンケウ ヌガンバ選手です。彼女は、同性愛が違法であるカメルーン出身です。彼女の銅メダル獲得には胸が高鳴りました。(注:ロイター通信によると、同選手はイギリス在住で難民と認定されるために同性愛者であることをカミングアウトした)
また、陸上1万メートル男子に出場し12位となった22歳のアメリカ代表ニコ・ヤング選手の活躍も楽しく見守りました。12位とはいえ、彼の記録は東京やそれ以前の五輪であれば金メダルを獲得していたはずです。彼は、人々のロールモデルになるべくカムアウトしたと明言しています。ゲイであってもアスリートやランナーになれると世間に知らしめたいのだと。志を抱いてカムアウトした彼の活躍を見守るのは非常に楽しかったです。
■2028年はロサンゼルス 「史上最も“gay”なオリンピックになる」
──次のロス五輪についての展望は?
LGBTQを公表して参加する選手の数は過去最多になるでしょう。ロサンゼルスは、私に言わせれば世界で有数のLGBTQフレンドリーな都市のひとつで、そのことについて問題視する人はほとんどいません。LGBTQ当事者の政治家や俳優、パフォーマーも多くいます。LGBTQのアスリートにとっては、自由と自分らしさを謳歌できる場所になると思います。ロス五輪は、歴史上最も“gay”(英語で「同性愛」と「楽しい」両方の意味がある)なオリンピックになると思いますね。