パリ五輪 ボクシング女子“性別論争” 性的マイノリティー専門メディアはどう見た?
パリオリンピックで性別をめぐり議論となった、ボクシング女子66キロ級のエイマヌン・ハリフ選手(アルジェリア)と、57キロ級の林郁テイ(女へんに亭)選手(台湾)の2人の選手がそろって金メダルを獲得しました。LGBTQアスリートについて伝えるアメリカの専門メディア「Outsports」の共同創設者ジム・ブジンスキさんに、ボクシング女子選手の性別をめぐる“議論”について聞きました。
■「彼女たちはLGBTQではない」
オリンピックの期間中、私たちはLGBTQ選手の活躍について伝えてきましたが、一方でLGBTQではないボクサー2人をめぐる論争もありました。世間ではトランスジェンダーと誤解されたようです。
2人はLGBTQには当たらないため、「Outsports」が作るLGBTQ選手リストには載せていません。それでも私たちが彼女たちを何度も取り上げたのは、「ジェンダーとは何か」といった問題全般に関わる話題だったからです。我々としては、「彼女たちはトランスジェンダーではない。この2人は、性自認が女性である、シスジェンダーの女性なのだ」と明言する必要があると思いました。
ハリフ選手はアルジェリア出身です。アルジェリアの社会では(LGBTQは)違法とされているので、アルジェリアがトランスジェンダーの選手を出場させるとは思えません。
――大きな話題になったことについては。
幸い、世間は彼女たちに連帯したように思います。LGBTQの専門メディアである私たちが、LGBTQ当事者ではない彼女たちについて多くの記事を出していることは奇妙なことですが、2人は「ジェンダーとは何か」という問題を提起しましたし、それは今後のオリンピックなどのスポーツ大会で大きな問題になると考えたので、取り上げました。
――多くの記事を出したのは、なぜか。
世間の関心が高い話題だからです。ボクサー本人たちも反応していましたし、IOCも議論に参加していました。これほど多くの人々が議論している問題について見過ごすことはできませんでした。
アメリカでは、トランスジェンダーの権利を快く思わない人々や政治家たちが彼女たちのことを非難しました。そもそも彼女たちはトランスジェンダーではないのに、です。
当初は誤解ゆえに非難されていた両選手も、結果的に多くの支持を集めることになってよかったと思っています。最終的に事態は沈静化し、世間の反応もネガティブなものからポジティブなものに変化したと思いますし、結果的に多くの人々を啓蒙することになった側面もあるのではないでしょうか。