MotoGP バニャイアが9位でタイトル獲得 スズキはラストランでリンスが優勝
最終戦バレンシアGPのMotoGPクラスは、フランチェスコ・バニャイア選手が念願のタイトルを獲得。そして、今年を最後にグランプリから撤退するスズキのアレックス・リンス選手が優勝するなど、話題の多いレースでした。
23点の大量リードで最終戦を迎えたバニャイア選手は、予選8番手から9位でフィニッシュしてチャンピオンを決めました。総合2位のファビオ・クアルタラロ選手が逆転するためには優勝することが最低条件となり、バニャイア選手が15位以下じゃないと逆転はないという状況でした。
世の中に絶対というのはないし、実際、雨になった第2戦インドネシアGPでバニャイア選手は15位になっています。そして、転倒することがないとは言い切れません。普通に考えれば、今季7勝を挙げているバニャイア選手が、この大事なレースでトップ10にも入れないというのはなかなか考えにくく、終わって見れば、大きな波乱もなく順当に決まったという感じでした。
しかし、さすがに大きなプレッシャーの中での27周は長かったと思うし、人生最高の一日にバニャイア選手は涙を浮かべていました。ドゥカティとしては07年のケーシー・ストーナー選手以来15年ぶり。コンストラクターズ、チームタイトルに続き、ドゥカティとしては2回目の3冠制覇となり、ドゥカティ陣営も大喜びでした。
そして、もうひとつの話題は、このレースを最後に、1960年から続いたグランプリ参戦の歴史に終止符を打つスズキのアレックス・リンス選手が、その最後のレースで見事、優勝したことですね。
リンス選手は「スズキ最後のレースをこれ以上ないという形で締めくくることができた。今日の優勝を誇りに思う」と喜びを爆発させていましたが、いやはや、すごいことをやってのけたなあと思いました。
思えば、開幕前日にスズキの佐原伸一プロジェクトリーダーにラストランについて話しを聞いたときに「今大会はバニャイアとクアルタラロのチャンピオン決定戦。個人的にはクアルタラロにチャンピオンになって欲しいけど、彼はとにかく勝たなくちゃだめなんですよね。でも、我々も勝ちをねらっていくわけだから、すごく複雑な気持ち」と語っていましたが、まさに、その通りの結果になってしまいました。
最終戦最後のレースと表彰式が終わると、メインストレートでは、3クラスのチャンピオンマシンとライダーの記念撮影が行われます。準備が整うまで我々カメラマンは、コース上でしばらく待たされることになるのですが、パドックからは、最終戦を終えたチームや選手、そして観客たちが醸し出すいろんな音が聞こえてきました。
その中でもっともにぎやかだったのは、ラストランを終えたスズキのスタッフたちがピイピイと鳴らす笛の音でした。そうそう、20年にジョアン・ミル選手がここでチャンピオンを決めたときも、ピイピイという笛の音がいつまでもなりやまなかったなあと思っていたのでした。