勉強でも運動でも、目標の数字があると「それに向かって頑張ることができた」という経験、みなさんにもあるのではないでしょうか。

秋田市にある野球塾では「数値化で成長の見える化」をモットーに指導にあたっています。

数値がどのように生かされているのか、取材しました。

秋田市の土崎地区、秋田港のそばにある、倉庫。

野球塾・ナベベースボールアカデミーの練習場です。

取材した日は、軟式ボールを使う学校の部活動に入らず、硬式ボールに早くから触れたいと集まった中学生が、打撃練習に臨んでいました。

そのすぐ横では、1球打つごとに、数値が記録されていきます。

この野球塾では、選手たちのプレーを計測し、データをとっていく「数値化」を大切にしているんです。

打撃部門の計測は、センサーがついた機器をバットに取り付け、選手はいつも通りにバットを振るだけ。

・スイングの速さや時間
・バットがボールに当たる角度
・バットと手の角度
などが一瞬で計測され、数値化された自分のスイングを科学的に見つめていきます。

この「数値化」が「成長の見える化」につながると考えているのが、アカデミーを立ち上げた秋田市出身の渡辺龍馬さん、36歳です。

渡辺さん
「データを取っていく中で、一番伝えたいのは、自分の自己分析。苦手なコースと得意なコースがはっきり出るから。となったときに、その苦手なコースに対してどう取り組んでいくの？得意コースが分かったうえで、2ストライクまで、そこのコースを待たなきゃいけないんだなとか」

大学卒業後、一度は県内企業に就職したものの、その後改めて野球選手としての挑戦を続けた渡辺さん。

欽ちゃん球団こと茨城ゴールデンゴールズや、アメリカ・ポーランドでもプレー。

さらに、ポーランドでは、クラブチームや国の代表チームで監督まで務めた、異色の経歴の持ち主です。

海外で特に進んでいるという、データを取り、数字で分析する指導方法に触れたことが、いまにつながっています。

渡辺さん
「現役時代にコーチ・監督に『頑張れ、もっと頑張れ』って言われたんですけど、何をどう頑張ればいいか、ちょっと分からなかったというか。でもそこが数値化することによって、『やっぱりこれぐらいの差が開いているんだ』とか、ここのレベルに行くためにはもっとこの数値を上げなきゃいけないな、とか、何をどれだけ頑張ればいいかというところが見える化、と言いますか、見えてきたというところが、私自身、現役時代にあったので」

定期的に計測した選手たちの数値は、練習場のあちらこちらに掲示されていて、本人だけでなく、仲間にも「見える化」しています。

渡辺さん
「競争だったりとか絶対この選手に負けたくないぞ、じゃあもっとここを上げていかないといけないな、というところの見える化というところが、一番、選手の育成をしていく中で、数値化していくことで、競争を生めているのかなと思います」

このナベベースボールアカデミーで大きな飛躍を遂げた選手がいます。

秋田市の中学3年生・桑村颯太選手です。

去年の夏、16歳以下日本代表に選出され、アメリカで行われた国際大会では、ベスト4進出を経験しました。

数値化によって、しっかりと自分自身と向き合えるようになったといいます。

桑村 選手
「数値を測ることで、課題を見つけやすいと思っていて、例えば、いまもやった通り、コース別で打ったりしていて、自分の弱点が分かるというか、実際に自分はアウトコースになると打球速度もスイングスピードも遅くなっていて、そこが分かってから、そこの課題をアプローチするような練習をして、実際に試合でアウトコースの球、長打を打てるようになったり。課題を見つけやすいというのはいいところ」

中学3年生にして、すでに身長は189センチ。

打球の速度153キロは、すでに高校トップクラスという打撃力が持ち味です。

高校では、県外の強豪校に進学し、将来のプロ野球入りを目指します。

桑村 選手
「ゆくゆくは日本を代表するような選手になっていきたいです」
廣田裕司アナウンサー
「どんな数字を残したいですか？」
桑村 選手
「そうですね、ホームラン50本、1年間で打てるような選手になりたいです」

渡辺さん
「一人でも多く、秋田から羽ばたくような選手を育成したい、その選手が活躍することによって、秋田の野球がもっと盛り上がればいいなと思っています」

選手たちは、数値化で見えた自分の現在地から、新たな未来を切り開いていきます。