誰もが使いやすい形・機能「インクルーシブデザイン」 障害や年齢は関係なく…
事業者が障害のある人の求めに応じてともに困りごとを解決する「配慮」を行うことが義務づけられておよそ1年。障害や年齢などに関わらず、誰もが使いやすいデザイン作りが進んでいます。
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人だかりの中、 車いすの男性に手渡された封筒には…。
車いすの男性「公園でオブジェの真下に入れるか確認する」
書かれていたのは、謎の「ミッション」。
ソニー・太陽 官野光一さん「(Q:交差点とかで気になることはありますか?)やっぱり車いすって視線が低いので、車の人に気づいてもらうのがちょっと遅かったり」
質問しているのは、実はソニーの新入社員。指定された「ミッション」を障害者と一緒に行う「新人研修」なのです。
ここでミッションの一つ、「オブジェの真下に入れるか」を確認。
車いすの男性「(Q:この台は?)これはちょっと無理ですね」
車いすの男性「(Q:こういう上の部分届きますか?)これくらいまでなら届くんですよ」
障害者にとっての「段差」や「高さ」など、普段気づかない“行動の壁”に“気づくこと”が研修の目的です。
この「気づき」をソニーではすでに、製品開発に取り入れています。
♪『ピピピピ・・・』
これはカメラが水平になると音で知らせてくれる「スマホ」。
視覚障害者向けの機能ですが、誰でも写真を撮るときに水平がわかりやすくなります。
こうした『誰もが使いやすい形や機能をもたせる』ことを「インクルーシブデザイン」といいます。
この研修が行われたのはソニーグループ子会社の「ソニー・太陽」。
作っているのは、製造に技術が必要なプロ向けのマイクなど。
この会社の社員のおよそ6割は何らかの障害があります。
皆さん、自分の障害に合わせて、道具をカスタマイズ。作業の効率をあげて、生産性を高めています。
ソニーでは今年からすべての製品やサービスに開発段階からインクルーシブデザインを取り入れる方針で、新入社員たちは、この研修で得た「気づき」をそれぞれの仕事に落とし込んでいくのです。
車椅子の人に同行したソニーの新入社員「(障害者は)自分ができないから、その選択肢はとらないんじゃなくて、できるように努力をする。その努力をどうやったら補助できるか」
弱視の人に同行したソニーの新入社員「曲がり角の先とかは、目が見えている自分でも見えないので、そういうところを見えるようにする、感じられるようにするデバイスとか、技術とか開発できたらおもしろいんじゃないか」
インクルーシブデザインは様々な分野に広がっています。
HONESTIES・西出喜代彦CEO「実はこれ全部、裏表がない服になってるんです」
それは「家庭のこんなシーン」から生まれたといいます。
西出CEO「うちの子供はすごい服を汚すので、1日に何回も着替えさせて、脱がすとき裏返しに、バンザイで脱がすので、一個一個元に戻すのめちゃくちゃ面倒くさいなと」
裏表どちらからでも縫い目や手触りが変わらず、洗濯表示はタグの下に隠せる仕組みです。
この仕様は「着替えが困難」な障害者や、介護の現場、誰もが使いやすいものでした。
西出CEO「僕らが着間違いをしない服を作ってお届けすることで、衣服のバリアフリーをするんだと」
障害や年齢、生活の中の困りごとなど、様々な“壁”を低くする「インクルーシブデザイン」。私たちの生活の中に、少しずつ、浸透し始めています。