都内で唯一の「女子少年院」……17歳の学びと“20年後の誓い” 普段は閉ざされた「育てなおし」の施設 葵わかなが取材
18日に卒業式が行われたのは、東京・狛江市にある愛光女子学園。罪を犯した少女たちが過ごす、都内唯一の女子少年院です。普段は閉ざされた施設ですが、特別に案内してもらえることになりました。
法務省によると全国に43か所ある少年院のうち、女子だけを収容しているのは9か所。あらゆる扉に鍵がかかったこの施設で、14~17歳の少女約20人が、自らの罪と向き合っているといいます。
案内してくれたのは、宮川円さん。葵さんと校舎内を歩きます。
宮川さん
「この廊下を抜けると教室棟があって、子どもたちが昼間授業を受けている場所です」
葵さん
「授業は1日どのくらいあるんですか?」
宮川さん
「1日5時間あって、普通の学校みたいな感じです」
教室では「これ、漢字あっていますか?」という質問が上がりました。熱心に課題に取り組む少女たち。
その1人、まなさん(仮名・17)はここに来て約8か月がたつといいます。
葵さん
「どういうきっかけでこの女子少年院に来ることになったのですか?」
まなさん
「私は恐喝未遂・強要・傷害・暴行でここに来ることになりました」
葵さん
「今の自分からみて、当時の自分はどういう状況でしたか?」
まなさん
「自分が悪い事をしている自覚がどんどん薄れてきていた。私が中1のときに母親が亡くなってしまって、家にいることが寂しいと思い始めて、それから夜寝られなくて。夜中に外にいる子は大体悪い子だったから」
涙ながらに話した、まなさん。少年院に入って人との関わり方を学び、当時の自分を反省しているといいます。
まなさん
「被害者のことを私今までそんなに考えたことなくて。被害者目線の話を聞けるのが、私はすごく勉強になる。自分だけじゃなく、相手も大事にするコミュニケーションの取り方を学べる」
施設には食事をするホールや美容室まで。刑務所と比較して、少年院で重きが置かれているのは教育です。
パソコン検定に向けて取り組んでいる子どもたちがいました。集中力を養うため、編み物の授業も。レース編みをしている様子に、「結構細かい作業ですね」と葵さんは言いました。
「成人したらできること」についての授業では、「18歳になると投票ができる」「スマホの契約ができる」など、少女たちは積極的に発言していました。
授業を受けていた少女(16)に葵さんが「みんなの意見を聞く機会があって変わったなと思うことはありますか?」と聞くと、少女は「自分は一つの考え方にとらわれたりするんですけど、いろんな選択肢も見つけることができた」と答えました。
少女たちがここで過ごす期間は、平均で約1年だといいます。
葵さん
「想像より学校に近い印象でした」
宮川さん
「“育てなおし”という言葉を私たちはよく使うんですけれども、しつけ・教育など子どもとしてできたはずの経験や時間を、ここでもう1回やりなおして、それでまた巣立っていく」
まなさんもいずれは、社会に戻ります。
葵さん
「この先、将来のことはどう考えていますか?」
まなさん
「生き物とかペット関係の仕事につこうかなって考えています」
葵さん
「動物が好きなんですか?」
まなさん
「動物大好きです」
黒板には、20年後の自分に向けての誓いを書いたボードが飾られていました。
葵さん
「『20年前のことをよく思い出して』って書いてありますね」
まなさん
「1が、家族のことを1番に考えて何よりも大切にする。2が、周りの人や相手の気持ちを考える。3が、海みたいに広い心を持つ。この3個だけは絶対守りたい」
藤井貴彦キャスター
「取材をしていろいろ感じたところがあると思いますが、印象に残ったことは何ですか?」
葵さん
「まなさんに、以前の自分のような子がいたら何を伝えたいか聞いたところ、『周りの人を信じてみて話した方がいい』と言ってくれたのが印象に残りました」
「“育てなおし”という言葉もありましたが、少年院は、人は一人では生きていけないということを、身をもって学びなおすことができる施設だと思いました」
「その中で、自分自身や他人と向き合った彼女たちが少年院を出た時に、彼女たちを受け入れられる社会があるといいなと強く感じました」
(3月18日『news zero』より)