【NNNドキュメント】"間接的な殺人…" 加害少年たちが向き合う”特殊詐欺”の重み NNNセレクション
去年の被害総額が370億円を超えた特殊詐欺。少年院に収容された少年は"闇バイト"に応募し"受け子役"を担っていたという。一方、子や孫を装う電話にだまされた被害者は、自らを責め続け、中には死を選んだ人も…。親心につけ込む特殊詐欺の"その後"は。
◇◇◇
特殊詐欺に手を染めた少年たちが、少年院の中で語ったのはー。
特殊詐欺に関与したダイキさん(仮名)
「高額報酬バイトって書いてあったんですけど。最初にやった方というのは、結構全身が震えているおばあさまだったんですけど、自分は警官のふりをしていくというやつだったんですけど、ひと通り作業(受け渡し)が終わったあとに、感謝の言葉を言われるんですよ。『ありがとうね、ありがとうございました』みたいな」
家族を装う"まやかしの子"は、被害者と、その家族を引き裂いていました。「息子から『バカだなあ』とののしられた。主人に申し訳ない。死んでおわびします」「孫のために役に立つなら」と150万円を失う。自責の念。詐欺にあった1週間後に自死。
篠原住職
「被害者が悪いわけじゃないのに『なぜ自殺するの?』っていう。そこまで追い込んでいく事件なんだと」
「長寿院」の篠原住職は、こうした事実を少年院や拘置所の加害者たちに伝えています。
篠原住職
「少年院であるとか拘置所でお話させていただくときに『本当にこれは結果が、結末がこうなっているよ』と、『これね間接的な殺人と言ってもいいかもしれないよ』というちょっときついことを言って帰ってくるんですよ」
◇◇◇
長岡市にある少年院「新潟少年学院」。収容されているのは、窃盗や傷害、そして特殊詐欺などの罪を犯した関東甲信越の16歳以上の少年。サッカーの強豪校に特待生として入学したユウヤさん。これまでに2回「受け子」として特殊詐欺事件に関わりました。
特殊詐欺に関与したユウヤさん(仮名)
「自分、居酒屋で友達とお酒飲んでいて、隣の席に座っていた人たちに絡まれて、そのまま連れていかれてって感じで。誘われたのがたまたま詐欺だったという感じなんですけど、正直」
新潟少年学院で、全国に先駆けてスタートした『特殊詐欺 再非行防止指導』。 教官と少年たちによるグループワークなどが行われ、自分の罪と向き合います。
ユウヤさん(仮名)
「周りからそれなりに評価を受けてたのに受けられなくなった時に自分の存在価値とか分からなくなって。なんか別にもう他人からの存在価値がないなら、もはや悪い方向にいってしまったほうが自分としては気持ちいいかなって」
詐欺グループから報酬をもらっていなかったというユウヤさん。それどころか、詐欺に必要な交通費などに自分の貯金を使っていたのです。
◇◇◇
安易に手を染めた彼らの行動。別の特殊詐欺事件で被害にあった新潟市のヨシエさん。その電話は去年10月にかかってきました。
「母さん、オレ。今大変な失敗して、いろいろ入ったカバンを忘れて…」
ヨシエさん(仮名)
「いくらでもいいって。母さんの出せる範囲でいいよって言ったんですね。それで、私は70万円ばかり定期(預金)があるから、それを『解約してやるわ』って言ったけど、年金も少し上乗せしたら喜ぶかなと思って、それでまた年金20万上乗せしてやったんです」
息子が喜ぶと思い、近くの郵便局で現金90万円を下ろしました。息子から頼まれて来たという若い男に現金を渡してしまったのです。
ヨシエさん(仮名)
「嫁さんからは『お母さん、人はかかっても絶対かからないだろうと思ったのに、お母さんかかったんですか』って呆れられました」
ヨシエさんは、詐欺にあう半年前に、がんが全身に広がっているという診断を受けました。病と闘う中での詐欺被害でした。
ヨシエさん(仮名)
「葬儀代のためにと思って貯めてたんですけども。自分の身は自分でと思ったもんですから。子どもの悲しむ顔は見たくないから。このくらいで子どもがほっとしてくれるならいいかな、なんて思ってしたんだけど結果的にはそういうことじゃなくて…。詐欺だったもんですからね。私たち取られた者にしたら、もうほんとに一生、一生自分のこと責めながら生きますよね」
◇◇◇
篠原住職が一人きりで葬儀を行っていた84歳の被害女性。
篠原住職
「この方はおひとりでひっそりと亡くなったんですね。親族・縁者と断絶するような」
事件に巻き込まれたはずの女性は、家族と同じ墓に入ることはできませんでした。
2023年7月23日放送 NNNドキュメント'23『まやかしの子~特殊詐欺事件の孤独』をダイジェスト版にしました。
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特殊詐欺に手を染めた少年たちが、少年院の中で語ったのはー。
特殊詐欺に関与したダイキさん(仮名)
「高額報酬バイトって書いてあったんですけど。最初にやった方というのは、結構全身が震えているおばあさまだったんですけど、自分は警官のふりをしていくというやつだったんですけど、ひと通り作業(受け渡し)が終わったあとに、感謝の言葉を言われるんですよ。『ありがとうね、ありがとうございました』みたいな」
家族を装う"まやかしの子"は、被害者と、その家族を引き裂いていました。「息子から『バカだなあ』とののしられた。主人に申し訳ない。死んでおわびします」「孫のために役に立つなら」と150万円を失う。自責の念。詐欺にあった1週間後に自死。
篠原住職
「被害者が悪いわけじゃないのに『なぜ自殺するの?』っていう。そこまで追い込んでいく事件なんだと」
「長寿院」の篠原住職は、こうした事実を少年院や拘置所の加害者たちに伝えています。
篠原住職
「少年院であるとか拘置所でお話させていただくときに『本当にこれは結果が、結末がこうなっているよ』と、『これね間接的な殺人と言ってもいいかもしれないよ』というちょっときついことを言って帰ってくるんですよ」
◇◇◇
長岡市にある少年院「新潟少年学院」。収容されているのは、窃盗や傷害、そして特殊詐欺などの罪を犯した関東甲信越の16歳以上の少年。サッカーの強豪校に特待生として入学したユウヤさん。これまでに2回「受け子」として特殊詐欺事件に関わりました。
特殊詐欺に関与したユウヤさん(仮名)
「自分、居酒屋で友達とお酒飲んでいて、隣の席に座っていた人たちに絡まれて、そのまま連れていかれてって感じで。誘われたのがたまたま詐欺だったという感じなんですけど、正直」
新潟少年学院で、全国に先駆けてスタートした『特殊詐欺 再非行防止指導』。 教官と少年たちによるグループワークなどが行われ、自分の罪と向き合います。
ユウヤさん(仮名)
「周りからそれなりに評価を受けてたのに受けられなくなった時に自分の存在価値とか分からなくなって。なんか別にもう他人からの存在価値がないなら、もはや悪い方向にいってしまったほうが自分としては気持ちいいかなって」
詐欺グループから報酬をもらっていなかったというユウヤさん。それどころか、詐欺に必要な交通費などに自分の貯金を使っていたのです。
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安易に手を染めた彼らの行動。別の特殊詐欺事件で被害にあった新潟市のヨシエさん。その電話は去年10月にかかってきました。
「母さん、オレ。今大変な失敗して、いろいろ入ったカバンを忘れて…」
ヨシエさん(仮名)
「いくらでもいいって。母さんの出せる範囲でいいよって言ったんですね。それで、私は70万円ばかり定期(預金)があるから、それを『解約してやるわ』って言ったけど、年金も少し上乗せしたら喜ぶかなと思って、それでまた年金20万上乗せしてやったんです」
息子が喜ぶと思い、近くの郵便局で現金90万円を下ろしました。息子から頼まれて来たという若い男に現金を渡してしまったのです。
ヨシエさん(仮名)
「嫁さんからは『お母さん、人はかかっても絶対かからないだろうと思ったのに、お母さんかかったんですか』って呆れられました」
ヨシエさんは、詐欺にあう半年前に、がんが全身に広がっているという診断を受けました。病と闘う中での詐欺被害でした。
ヨシエさん(仮名)
「葬儀代のためにと思って貯めてたんですけども。自分の身は自分でと思ったもんですから。子どもの悲しむ顔は見たくないから。このくらいで子どもがほっとしてくれるならいいかな、なんて思ってしたんだけど結果的にはそういうことじゃなくて…。詐欺だったもんですからね。私たち取られた者にしたら、もうほんとに一生、一生自分のこと責めながら生きますよね」
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篠原住職が一人きりで葬儀を行っていた84歳の被害女性。
篠原住職
「この方はおひとりでひっそりと亡くなったんですね。親族・縁者と断絶するような」
事件に巻き込まれたはずの女性は、家族と同じ墓に入ることはできませんでした。
2023年7月23日放送 NNNドキュメント'23『まやかしの子~特殊詐欺事件の孤独』をダイジェスト版にしました。