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新井カープ 下馬評を覆す躍進 指揮官と参謀に迫る「5つの真相」【4】

2024年1月15日 7:15
新井カープ 下馬評を覆す躍進 指揮官と参謀に迫る「5つの真相」【4】

4つ目の真相は、激闘のクライマックスシリーズ。

シーズンを2位で終え、クライマックスシリーズ・ファーストステージをマツダスタジアムで戦ったカープ。DeNAとの初戦の先発を託されたのは、チームトップ11勝の床田。毎回のようにランナーを背負うも、粘りのピッチングで5回まで無失点に抑える。しかし6回。リーグ首位打者の宮崎に2ランホームランを打たれ、先制を許す。それでも1点差に迫り、迎えた8回。リーグ最多勝のDeNA先発・東から、先頭のデビッドソンが四球で出塁。ここでベンチが動く。代走の切札、羽月を起用。さらにピッチャーの打順で代打・矢野を打席へ。矢野はきっちり送りバントを決め、1死2塁と同点のチャンス。打席には1番菊池。その初球だった。2塁ランナー・羽月が三盗。驚くべき攻めの采配でチャンスを広げる。菊池は2球目を見送って1ボール1ストライク。迎えた3球目。完全に相手の意表をつくスクイズ。同点に追いつく執念の采配をここぞの場面で見せた。

このスクイズについて菊池は。

2023年シーズン 1番印象に残った「スクイズ」

■菊池涼介選手
3塁に行った時点で、スクイズあるんだろうなって僕は思っててサインが出たんでね。「ですよね」っていう普通の感覚でしたね。シーズンであれば、たぶんあそこでは違ったサインが出てたかもわかりませんし、やっぱりクライマックスシリーズは1点勝負っていうことを考えれば、絶対あるなっていう風に思ってたし、妥当だと思ってます。今年のシーズンを振り返って、1番印象残ってるはあそこなので。スクイズっていうのは、この12 年間であったかなって思い返しながら。多かったのはセーフティスクイズとかだったり、そういうサインだったので、考え直したら初めてか2回目3回目、そんな感じかなって思い返していました。

この得点で勢いに乗ったカープは第1戦をサヨナラ勝利。さらに続く2戦目もチーム一丸の戦いを見せ、連勝でファーストステージを突破。ファイナルステージは破れたものの、ファンに感動を与える試合を見せた。

■新井監督
羽月のあの三盗のスタートがちょっと結構フライング気味で出たから、ベンチから見てて「おいおいおいおい…」ってな。「おいおいおいおい、あ~よかった」みたいな。あれでも勇気いるもんね。

■藤井コーチ
ピッチャーがホーム向いてるし、さっきの話じゃないけど羽月は「行ける」っていうじゃないんかな。監督には言ってたけど、あれ実は矢野が初球でバントしてるけど、バントのサイン出すけど、彼(羽月)には走れって言ってたよね。二盗から成功して送る可能性ももちろんあったのよね。
初球で走ってくれたのがね、すごい大きかったし、もう絶対1 点取らなかんっていう気持ちになったかな。

■新井監督
そうね。それで矢野が送って羽月が盗塁で、キクのスクイズってこう見事に噛み合ってるっていうか、まだレギュラーではない選手、キクもベテランの域に入ってるし、羽月はまだ若いしね。何かそういう嬉しさもあったよね。みんなでもぎ取った1点。ノーヒットでっていうね。だからすごく印象に残ってるね。

羽月の技術が魅せた「三盗」

■藤井コーチ
あれサインじゃないんですよね結局。三盗っていうサインではないので。彼が1年間ピッチャーの癖ないし、いろんなところで目を配って手に入れた技術ですよね。技術をあの場面で初球に行ってくれたっていう、采配というより羽月の技術だけですよねこれは。

■新井監督
羽月の成長よね。

そして同点に追いついた場面。近年、打球の行方を見てランナーがスタートを切るセーフティースクイズが多用される中、新井監督が選択したのはスクイズだった。

セーフティースクイズは好きじゃない

■新井監督
基本的に俺はセーフティースクイズは出さないよって言ってたもんね。それなぜかというと、セーフティースクイズってすごく選手にとって負担のかかるサインなんですよね。バッターは一塁側に転がさないといけない。三塁ランナーは一塁側に転がったのを見て、打球判断をしてスタートを切らないといけない。だからバッターと走者の選手にすごく負担がかかる。でも使う側からしたら、すごく使いたいサインよね。やむを得ない場合ではセーフティースクイズを出すけどでも、セーフティースクイズっていうサインは俺は好きじゃないからっていう風に伝えてたんで。
スクイズのサインって、外されたり失敗したりしたら全て自分の責任なんですよね。出してるベンチの責任。ただセーフティースクイズって、失敗したらなんとなく空気観的に「選手何やってんだ」みたいな感じになるよね。それも嫌だったんで。
俺もさ、うろ覚えなんだけど、もうカーってなってるから、バレないように「次ボールになったら行こうか、ボールになったら行くよ」ってそんな感じだったよな。それはこう横で「次ボールになったらスクイズ」とか言えんでしょ。だからこうなって(ボソボソと)「次ボールになったら行くぞ行くぞ」って。

■藤井コーチ
超裏話やな。

■新井監督
それはもう、スクイズのサイン出してから長かった~。あとは神頼みというか。「頼む、バットに当たるところに来てくれ」って。
(スクイズのサインを)なかなか出さんから、これちゃんとみんな伝わってるかなってのが心配でね。

■藤井コーチ
そうそう。そっちが心配だった。

■新井監督
キクは大丈夫だろうなと思ったでしょ

■藤井コーチ
いや、俺それが分からんかった。

■新井監督
キクはやっぱりあそこらへんはすごいから。もう周りがめっちゃ見えてるから。俺は「羽月、大丈夫かな」と思って。でもアカ(赤松コーチ)がいるから大丈夫かと思って。

■藤井コーチ
それで、キク見てたらサッてピッチャーに向いて入ったんよすぐに、もう間もなく。サイン終わってパッて入った。

■新井監督
そこらへんもうまいよな。うまいし、やっぱこう(構えが)なんかほんまに打ちそうな感じやったやん。もう変わらずゆったり動きながら。「ほ~、やるやんけ」と思いながら。ここからピッチャーが投げるまで、なんか3分ぐらいかかったような気がしたよ。

《 指揮官と参謀に迫る5つの真相。最後は新井カープ2年目に向けて 》

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